ブルーチーズ(青カビチーズ)とは、カビを繁殖させて熟成させるチーズのうち、「青カビタイプ」のチーズのこと。カビと聞いてギョッとする人もいるかもしれませんが、もちろん毒性のない、チーズを美味しくするカビです。
臭いチーズとして紹介されることも多いブルーチーズ。しかし、クセになる味わいに魅せられ、「チーズの中でも特にブルーチーズが好き」というチーズ好きも多く、筆者もその一人です。今や種類も味わいも豊富なブルーチーズの銘柄を約7分でご紹介します。
目次
世界三大ブルーチーズとは?特にクセの強いブルーチーズは?
日本で一番有名なブルーチーズはイタリアの「ゴルゴンゾーラ」でしょう。フランスの「ロックフォール」、イギリスの「スティルトン」と共に「世界三大ブルーチーズ」と言われます。

写真左から、パセリ状にカビが広がるゴルゴンゾーラ(ピカンテ)、黄色味が強い生地に静脈状のカビが綺麗なスティルトン、羊乳の特徴である青白い生地がロックフォールです。
ゴルゴンゾーラには「ピカンテ」と「ドルチェ」の2種類があります。“辛口”という意味のピカンテは1,000年以上の歴史を持つ伝統的なチーズで、力強い味わい。“特にクセの強いブルーチーズ”のひとつと言えます。一方「ドルチェ」は“甘口”を指し、マイルドな味わいとクリーミーな食感が特長で、初めてブルーチーズを食べる人にもおすすめです。
スティルトンは青かびの塩味や刺激をミルクのコクと甘味が包み込み、濃厚で品のいいブルーチーズ。ポートワインやシェリーとの組み合わせが有名ですが、スコッチや紅茶との相性もいい、イギリスを代表するブルーチーズの傑作と言えます。
エリザベス女王の好物としても知られています。
ロックフォールは羊乳独特の旨味、甘味、青カビの塩味とピリピリ感が際立ち、”特にクセの強いブルーチーズ”の代表格。個人的には好きなブルーチーズ・ナンバー1です。
時にチーズは「臭い食べ物」として注目を浴びることがあります。店頭にいると 「一番臭いチーズどれですか?」「罰ゲームに使えるチーズください」 なんてお客様も、けっこういるのです。 でも個性的な香り(ここでは「匂い」ではなく[…]
“幻のチーズ”、カブラレス

他にもクセの強いブルーチーズはあります。そのひとつがスペインの「カブラレス」。原料乳は牛乳が主体で季節によって山羊乳や羊乳を混ぜます(春から夏は3種混乳製)。
青カビは人工的に接種せず、自然の洞窟の中で青カビの成長をゆっくり待ちます。ごつごつとした見た目、濃厚で複雑な味わい、独特な風味とピリピリ感が刺激的でクセが強い。手作りで生産量も少なく“幻のチーズ”と言われ、自然との繋がりを感じさせるブルーチーズです。
初心者向けブルーチーズ
初めてブルーチーズを食べるという人には、クセの強すぎないものがおすすめ。
いくつかご紹介していきましょう。

初心者向けのブルーチーズとしてまず挙げられるのは、白カビに覆われたカマンベールチーズのような見た目のブルーチーズ。クリーミーで青カビのピリピリ感は控えめでとっても食べやすいのが特長です。
写真左はドイツの「カンボゾーラ」。その名はフランスを代表する白カビチーズ「カマンベール」と「ゴルゴンゾーラ」を掛け合わせた名前です。その他、お手頃価格ではフランスの「ジェラールブルー」(中央)や「ブレスブルー」(右)等もあります。

フランスの「サンタギュール」もおすすめです。青カビの塩味とミルクのまろやかさのバランスがいいチーズ。
カップ入りの「クレーム・ド・サンタギュール」はパンやクラッカーに塗りやすいスプレッドタイプ。大型スーパー等多くのお店で取り扱っているのでブルーチーズデビューに取り入れやすいチーズです。

前出のイタリアの「ゴルゴンゾーラドルチェ」(右)やフランスの「フルムダンベール」(左)もおすすめ。見た目からも青カビがまろやかなのが分かると思います。優しい味わいながら、初心者だけでなく、ブルーチーズ好きをも満足させる本格的ブルーチーズです。
おしゃれブルーチーズ
ブルーチーズには熟成段階でワインに浸したり、フルーツを飾ったり、アレンジされた珍しいものが多くあります。イタリア産のものがほとんどです。

「バザイオ」は羊乳製ブルーチーズを、パッシート(陰干しした葡萄からつくる甘口の白ワイン)用の葡萄の搾りかすと搾り汁に漬け込んで熟成します。羊乳の濃厚な味わいと青カビのピリピリ感を、パッシートや果実の甘味がまろやかにしています。
他に甘口の赤ワインに漬けてベリーを飾った「オロロッソ」や「ブルー61」等々、どれも華やかでおしゃれなだけじゃなく、フルーティーでとっても美味しいんです。
日本人の感性が光るブルーチーズ

2010年の日本のチーズ工房は約150ヶ所、それが2017年には300ヶ所以上に増えました。人気もクオリティもぐんぐん上がってきています。そのうち、ブルーチーズを作る工房は2020年時点で22ヶ所です。*注
筆者のおすすめは、アトリエ・ド・フロマージュ(長野県)の「ブルーチーズ」。初めて食べた時は、その美味しさに感動しました。ミルクのコク、甘味、旨味、青カビの塩味、とにかくバランスがいいのです。口当たりも良く、本当におすすめ!
2015年フランスで行われたコンテストで、この「ブルーチーズ」と高秀牧場(千葉県)の「草原の青空」がブルーチーズ部門の最高賞を獲得。チーズ伝統国を圧倒しW受賞する快挙を成し遂げ、国際舞台では「日本人はブルーチーズ作りが得意」と評判になっているそうです。
ニセコチーズ工房(北海道)の「空」も国内外の数々のコンテスト受賞歴があり、日本を代表するブルーチーズです。
*注:各地で活躍するチーズ工房及び国内で製造されているチーズの種類(農水省)
https://www.maff.go.jp/kanto/seisan/tikusan/koremade/attach/pdf/200130-3.pdf
日本人も、もっとブルーチーズを!
たった30年前、日本のチーズ売り場では、ブルーチーズに対して「カビが生えている」というクレームが絶えなかったそうです。しかし、美味しいものに敏感な日本人の舌はブルーチーズを受け入れ、今や日本人の器用で丁寧な技と細やかな感性は美味しいブルーチーズを生み出すまでになり、世界を驚かせています。来るべき時代が来たのです(笑)。
もしあなたがブルーチーズの美味しさにまだ目覚めていないなら、もったいない、ぜひ試してみてください!食べにくいと感じたら、蜂蜜やジャムを添えてみたり、ドライフルーツ入りのパンを合わせてみたり、サラダやピザに散らしてみたりしても美味しいですよ。
チーズは、常温に戻すのをお忘れなく。
画像協力:
ナチュラルチーズ専門店フェルミエ
https://fermier.co.jp/
フードパビリオン サポーレ
https://www.sapore-nagoya.com/
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