【滝沢カレンさんインタビュー】2021年料理レシピ本大賞受賞『カレンの台所』が生まれるまで

モデル、タレント、女優と多彩な活躍を見せる滝沢カレンさん。料理上手な一面もあり、Instagramでの料理投稿をきっかけに出版した料理本『カレンの台所』が、2021年の料理レシピ本大賞の料理部門で大賞を受賞したんです!

今回hitotemaでは、滝沢カレンさんにリモートインタビュー。受賞への想いとともに、料理をするようになったきっかけや、独特のワードセンスが生まれた理由などをくわしくお聞きしました。

――料理レシピ本大賞受賞、本当におめでとうございます!リモートで参加された授賞式では大号泣でしたが、あらためて受賞の感想を聞かせてください。

リード

ありがとうございます!自分の子どもみたいに大切な本なので、2021年で一番嬉しい出来事でした。出版社の方たちや書店員さんたち、『カレンの台所』に関わってくれたみなさんのおかげです。私の名前で出ている料理本ですけど、私ひとりだけの賞じゃない。私がInstagramで発信していた食材たちの物語をたくさんの人たちに伝わるよう旅立たせてくれたので、みんなで取った賞だと思ってます。

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料理を通じ、自然のままに生まれた言葉を記した料理本

――『カレンの台所』の出版は、どのようなきっかけでスタートしたんでしょうか?

私がInstagramで自炊の料理をたびたび投稿していたことから、サンクチュアリ出版編集部の大川さんが連絡をくださって。もともと大川さんは「自宅に塩とめんつゆしかない」っていうほど全然料理をしない人だったらしいんですけど、私の投稿を見て料理してくれて。「すごく楽しかったしおいしくできた」って言ってくれたんです。

インスタライブ
カレンさんはインスタライブでも手際よく料理を披露。
普段から作り慣れている様子が伝わります。

大川さんが私と一緒に、食材たちの物語の中に入ってくれたような気がして嬉しくて。だから「料理本を作ろう」とスタートしたというよりは「大川さんのためにできることをしよう」って思ったのが始まりですね。

――本では30品の料理が掲載されていますが、本づくりはどのように進められたんですか?

「カレンさんのやりやすいように取り組んでください」と言ってくださったので、料理や撮影のために1週間もらいました。その間は料理に集中したかったので、マネージャーさんに「モデルやテレビの仕事を一切入れないでほしい」とお願いして。

カレンさん宣材

スタジオで毎日5~6品作り、その直後に食材を入れる順番や調味料の出番のタイミングなど、自然に湧き出てきた言葉を全部スマホで書いていきました。大変でしたけどどうしてもその日のうちに残しておきたくて。別の日に同じ料理を作っても、まったく同じ物語にはならないんです。

唐揚げ
(画像提供)サンクチュアリ出版

そのあと編集の方が分かりやすく文章に色を付けてくれたり、よしもとななさんがかわいいイラストを描いてくれたり。私の考えた物語が少しずつ形になっていくのにワクワクしましたね。

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幼い頃の空想から生まれた、食材たちの物語

――「冷たい何も知らない鶏肉」「お醤油を全員に気づかれるくらいの量」といった表現はカレンさんならではですよね。工夫した点やこだわったところはどんなところですか?

たくさんあるんですけど、まずは巻末に『カレンの台所』としてCAST&STAFFのクレジットを載せたところです。食材を登場人物、調味料をスタッフに見立てて、映画のエンドロールのように。

エンドロール

私、小さい頃から頭の中で空想することが好きで、洋服にも花にも話しかけていたんです。それが大人になっても抜けなくて。料理を始めたら、食材にも感情があるように思えてきたんですね。

しゅうまい
『カレンの台所』より「しゅうまい」。
しゅうまいの皮は“千までいかない細切り”になっています。
(画像提供)サンクチュアリ出版

この本は台所を舞台に、自由に動いている食材たちや調味料たちが作り出す物語をまとめたもの。テレビなどでは「私が書きました」と言っていますが、私自身は本の中に登場しません。だから本の帯にある顔写真も、絶対にカメラ目線にはしたくなかったんです。

しゅうまいイラスト
よしもとななさんが手掛けたかわいらしいイラストが全レシピに付いています。
こちらは上記の「しゅうまい」。
(画像提供)サンクチュアリ出版

――なるほど。では本の中ではカレンさんは裏方のような存在なんですね。

書影
(画像提供)サンクチュアリ出版

そうです!それが分かってもらえると嬉しいです。遊び相手がいなくて毎日空想していた子ども時代がこんな素敵な本につながるなんて、本当に思いもかけないですね。

あとは、最初と最後に記す「はじめに」「あとがき」も大事にしました。レシピ本というより読み物として楽しんでもらいたかったので、台所に置いて読みながら料理を作る……というよりは、頭の片隅にぼんやり食材たちの活躍が残っているような状態で料理してもらえたらいいなと思っています。

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初めての料理はレトルトソースのスパゲティ。溶かしたバターで唐揚げを作った失敗も

――カレンさんが料理を始めたのはいつ頃からですか?

17歳くらい、ママと二人で暮らすようになった頃です。それまで実家ではおばあちゃんがごはん担当だったんですけど、その日は私がお腹が空いていて夜ごはんまで我慢できなくて。自分でスパゲティをゆでてレトルトソースをかけたのが始まりです。でも、ゆでるための水の量も麺を入れるタイミングも分からず、手探り状態(笑)。不安もあったけど、お湯がぶくぶくと沸き出る様子が何だか私に話しかけているように思えて、待つ間もすごく楽しかったんです。完成したスパゲティはおいしいし、「料理ができた=私ってかっこいい!」と。この成功体験があって、少しずつ難易度を上げて作るようになりました。でもそこからは失敗の連続で。

―――どんな失敗をされたんですか?

色々ありますけど、思い出深いのは揚げ物ですね。「少し料理に慣れてきたので唐揚げ作ってみよう」と、無謀ながらあえて何も見ずに挑戦したんです。その時は鶏肉とバターしかなかったんですが、バターも同じ油だし揚げられるだろうと、鍋にそのままひとつ入れて溶かしたんです。その後に鶏肉を入れたら表面が茶色くなってきたので「唐揚げらしくなってきたぞ」と。完成した唐揚げは、外はアツアツなのに中は冷たい生のまま。バターでギトギトで掃除も大変(笑)。

「なんでこんなことになったんだろう、悔しい!」って。負けず嫌いの気持ちがふつふつ出てきて、それから数ヶ月はずっと唐揚げだけを作っていましたね。うまくできるようになったら次はハンバーグ。これも、外は焦げているのに中は生焼け。また数ヶ月ああでもない、こうでもないって作り続けて少しずつ覚えていきました。

唐揚げ文章
『カレンの台所』から、「鶏の唐揚げ」のレシピ。
実際にこの通り作っていくと本当においしくできあがってしまうのが不思議。
(画像提供)サンクチュアリ出版

――すごいですね!そうやって覚えた料理を、ご家族の方にふるまうこともあったんでしょうか。

おばあちゃんが亡くなってしまったので、食べてもらうことは叶わなかったんですが、ママにはクリスマスにラザニアを作ったりして。「えーっ、作ってくれたの!すごい!」って、とても喜んでくれましたね!
ママは料理はまったくせず、仕事で毎日夜遅く帰ってきていたので、私が料理していたことも知らなかったと思います。

ラザニア
『カレンの台所』より「ラザニア」
(画像提供)サンクチュアリ出版

――そう聞くと、料理の自主練みたいですね。

自主練というより戦いです(笑)。17歳~21歳くらいの間ですが、あれは時間があったから没頭できたこと。今同じことをやろうと思っても難しいですね。おばあちゃんが亡くなったのは私が料理に没頭し始めた頃だったのですが、色々料理を教えてもらいたかったなと思っています。

そうそう!唐揚げといえば、私が初めてInstagramに料理を投稿したのが唐揚げなんです。そこから本の出版につながったので何がどうなるか分からない。今では唐揚げはもう戦友ですね(笑)。

唐揚げイラスト
(画像提供)サンクチュアリ出版

「料理は楽しい」の気持ちを大切に、台所と程よい距離を取る

――『カレンの台所』には「大さじ1」や「乱切り」というような料理用語が一切出てこないのが斬新だなと思ったのですが、普段から分量をはかって料理したりすることはないんですか?

料理を始めた数年間はレシピ本を読んで分量をはかって……としていた時期がありました。でもある時から、その日の気分に任せて作る楽しさを知ってしまったんです。

中華丼
「中華丼」のレシピは「今回はお皿に群がる窮屈な料理になりました。
まったく間取り知らずの私です」という一文から始まります 。
(画像提供)サンクチュアリ出版

――何かきっかけがあったんですか?

レシピ本を見て頑張って作っても「ちょっと好みと違うな」と思うことがあって、料理に楽しさや面白さを感じられなくなっていたことがあったんです。そこで思い切って自分の思う通りにするようにしました。

自分で作ると体調や気持ちで味が変わりますよね。今日はおいしくできた!と思っても、次の日にはさまよったような味になる。台所から離れていると勘が鈍ってうまく動けなかったり作れなくなったりするし、逆に毎日作っていると上手になる。そういう変化を大切にしていくと「料理って楽しいな」とまた思うようになって。

もちろん世の中には素敵なレシピ本がたくさんありますし、読みながらきちんとはかって作るのが好きな人も多いと思います。でも私は自分の味が好きで。思う通りに作った結果、失敗もありますけどそれは自分のせいですしね。そう考えるようになったらすごくラクになったんです。

料理派楽しく

――そんなことがあったんですね。ほかに料理を作る上で大切にしていることはありますか?

私は平日の夜は毎日料理を作っているんですが、時々「チートデー」として台所に立たない日を作っています。義務感になると「料理が楽しい」という気持ちがしぼんできてしまうので、チートデーは出前を取ったり、自分では作れないようなプロの料理をレストランに食べに行ったり。

――外食して、おいしかった料理を家で作ることもあるんですか?

自分で作るのは、誰もが知っているような家庭料理ばかりですね。外食の再現もしないし、初めて聞くような海外の料理も作らない。私にとって、家で作る料理と外食はまったく別もの。作り慣れない料理って、自分が飛行機に乗って海外に行くくらい疲れちゃうんですよね(笑)。『カレンの台所』に掲載した30品もずっと作り続けてきたものばかり。日本で温泉に入ったみたいにホッとできる料理なんです。

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台所は家の心臓部。食材たちの声を聞く大切な場所

――本のタイトルは『カレンの台所』ですが、カレンさんにとって台所ってどんな存在ですか?

私にとって台所は家の心臓部で一番大切な場所。設備にはこだわっていませんが、使い勝手の良い空間に整えています。

でも、寝室やお風呂とは違って、リラックスする場所ではないんですよね。冷蔵庫に食材がたくさん入っている時はゲストが大勢いるようでにぎやかだし、早く使ってあげなきゃいけない食材がある時はピシッと気が張ります。その日の状態で毎回違う顔を見せてくれる。面白い存在です。

台所は心臓部

――面白いですね!そういう食材の物語が、本の中にもしっかり表現されていますよね。最後に、これからやってみたいことや、考えていることはありますか?

たくさんあるんですけど、ひとつは「いつか食材や調味料を主役にした世界を、絵本にできたらいいな」という夢があります。その世界を通して食材に近づいたり、慈しんだり。子どもはもちろん、料理が苦手な大人たちにも面白さや楽しさが伝わって、苦手な印象が変わったらいいなと思うんですよね。

今回のよしもとななさんが描いてくださった本のイラストも、私大好きなんですよ!すごく生き生きとしていてかわいいので、きっと食材たちも喜んでくれていると思います。

私は絵を描くことはできないので本当に夢ですけど……。誰かが作ってくれるなら喜んで協力します!(笑)

『カレンの台所』、気になる方はレビューもチェックしてみて!

小さい頃のお話から、これからやってみたい夢まで、たくさんお話ししてくれた滝沢カレンさん。料理好きな気持ちが本当によく伝わってくるインタビューでした。

『カレンの台所』はどんな本なんだろう?と気になった人は、こちらをチェックしてみてくださいね!編集部メンバーが、詳しい内容と実際に作ったレポートをまとめています!

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「カレンの台所」(滝沢カレン) #読んで楽しいレシピ本

『カレンの台所』書籍情報

出版社 ‏ : ‎ サンクチュアリ出版
発売日 ‏ : ‎ 2020/4/7
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 144ページ

サンクチュアリ出版:https://www.sanctuarybooks.jp/book-details/book1158.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4801400752/
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/16231393/

滝沢カレンさん プロフィール

1992年、東京都生まれ。2008年にモデルデビューし、現在はMCや女優としても幅広く活躍。Instagramに投稿していた料理写真と、添えられた独特の表現が徐々に話題になり、2020年4月に『カレンの台所』(サンクチュアリ出版)を上梓。2021年、全国の書店員や食の専門家が選出する「料理レシピ本大賞in Japan」にて、応募総数150点から料理部門の大賞を受賞した。
公式Instagram:https://www.instagram.com/takizawakarenofficial/

【当記事につきまして】
サンクチュアリ出版様よりご案内を受けてライター田窪綾さんが企画し、記事を作成しました。

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