カネカの「ピュアナチュールヨーグルト」がオーガニックに!北海道で自ら運営する有機牧場の取り組みとは

カネカの「ピュアナチュールヨーグルト」がオーガニックに!北海道で自ら運営する有機牧場の取り組みとは

日本一の生乳生産量を誇る酪農王国・北海道。でも酪農業界は長年、高齢化や後継者不足、牛の飼料高騰問題などで厳しい状況が続いています。

そこで立ち上がったのが、化学メーカーのカネカ。
なんと北海道にオーガニック専用牧場を設立し、のびのび育った牛たちの生乳でヨーグルトを作っているんです。
さらに今後もラインナップを増やしていくとのこと。

リード

化学メーカーなのになぜ牧場の運営を?
その背景には「酪農業界を応援し、盛り上げたい」という想いがありました。
牛・人・環境にやさしいという牧場の様子を訪問し、新商品である『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』の楽しみ方とともに取材してきました。

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東京ドーム20個分の敷地をスタッフ3人で運営、少ない人数でもOKな理由

今回伺ったのは北海道の東端部に位置し、酪農が盛んな町として知られる北海道野付郡別海(べつかい)町。ここに、カネカが地元酪農家と共に2021年に開設した有機専用牧場「別海ウェルネスファーム」があります。

看板
カネカが地元の酪農家と合弁会社として立ち上げた
「別海ウェルネスファーム」

東京ドーム20個分以上という広大な敷地で育つのは、仔牛も含め120頭の牛たち。飼料になるデントコーン畑を始め、放牧用の牧草地や仔牛用の牛舎、母牛の牛舎などを有しています。

感染防止対策
牧場内は感染防止のため、靴の上からカバーを付けます。
同じ理由で、牛に触れるのもNGです。

ここで育つ牛たちは昼夜問わずいつでも自由に牛舎から放牧場へ出ることができ、のびのびと過ごしています。

牧場
白黒のホルスタイン種が9割、茶色のジャージー種が1割のバランスだそう。

実はこの頭数、一般的な酪農家さんの中ではごくごく小規模。オーガニックの専用牧場を建てるためには、牛の飼料となるデントコーンなどの畑も土づくりから始めなければならないため、この広さの土地が必要なのだとか。

驚くのが、この敷地を主に3人のスタッフで回していること!いったいどのようにして運営しているのでしょうか。ここから詳しく見ていきましょう。

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放牧飼育×自由に動き回れる牛舎で、牛にやさしい

牛アップ
人懐っこい牛たち。
「ゴリッ、ゴリッ」と、草を根元からこそげるようにして食べる音も聞こえてきます。

牧草地では牛たちが草を食んでいたり寝そべっていたりと思い思いに過ごしていました。同じ牛でもやはり性格が異なり、外で草を食べるのが好きな牛、牛舎で飼料を食べるのが好きな牛がいるそう。撮影していると牛たちの方から寄ってきて、モデルさながら立ち止まってポーズを決めてくれます。

牛舎内
牛は脚を痛めやすいため、殺菌した牛の排泄物を活用した敷料を敷いています。

牛舎の中でも牛たちは自由に動き回れて、好きなように飼料が食べられます。飼料は有機栽培したデントコーンやチモシーなどの牧草を数か月かけて発酵させた自家製のもの。発酵させることで風味がアップするため、牛たちの食欲も上がるそうなんです。

牛舎の天井には大きなサーキュレーターが回り、屋根や床にはカネカ製の断熱材を使用。一定の温度に保たれた快適な空間です。
このように、自由に動き回れる牛舎のスタイルは「フリーストール」と呼ばれており、北海道内でも取り入れているのは約30%。放牧主体で行っている牧場はさらに少なく、10%程度なのだそう。
牛たちはストレスフリーであり、自由に食べて過ごしてくれるので、スタッフにとっても省力化のメリットがあるそうなんです。

出産が近い牛たち

こちらは出産が近い牛たちのエリア。先ほどの牛たちと同じ飼料だと味が濃すぎて難産になることもあるそうで、あっさり味のものを食べさせています。

飼料を撒く様子

こうした飼料を撒くのはミキサーワゴンと呼ばれる車を利用していますが、牛が食べやすいよう、定期的に近くに寄せる必要があります。実際に持ち上げてみると、水分を多く含んでいるためずっしり重い!酪農業の大変さが垣間見えた気がしました。

牛舎とは少し離れた場所で育っている仔牛

こちらは、牛舎とは少し離れた場所で育っている仔牛です。生後2日後から1~2か月までは「ハッチ」と呼ばれるケージで育てられます。
その後は社会性を身につけるため、近い月齢の牛たちを集めた牛舎で半年ほど過ごすそう。いわば「牛の幼稚園」ですね。いずれもつながず、専用の放牧場につながった柵内を自由に歩き回れます。

「幼稚園」の牛舎で過ごす牛たち

有機牧場であり、なおかつ放牧×フリーストールを取り入れた酪農形態は全国でも希少。カネカで乳製品事業開発に携わる天川さんは、「さまざまな理由で他の酪農家さんがまだできていないことを率先して行い、ノウハウを蓄積して、他の酪農家さんへも共有できるようになれたら」と話します。

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牛が自ら喜んで入る自動搾乳機⁉ 牛だけでなく人にもやさしい

自動搾乳機

牧場と言えば牛の乳搾り。一般的な牧場では1日に2~3回搾乳があり、それぞれ2~3時間かかります。酪農業の皆さんにとってはこの搾乳が一番の重労働のため、「別海ウェルネスファーム」ではそれを解決するべく自動搾乳機を導入しています。

自動搾乳機
乳房の洗浄が終わった後、ミルカーと呼ばれる搾り口もレーザーで感知し設置されます。

牛たちは乳を搾ってほしくなったら自動搾乳機に行きます。ここでしか食べられない飼料があるため、自分から望んで入りに来るそうなんです。機械が首元のセンサーを読み取って、その牛の搾乳状況を把握し、適切な量を搾ります。その間、人の手はほとんど介在しません。

牛の行列

自動搾乳機の前には、搾ってほしい牛で行列ができることも。また、特別な飼料が食べたくて何度も入りに来る牛もいるそうです。しかしデータで搾乳量が管理されているので、そういう場合は出口ゲートが開き、出ていく仕様になっているとのこと。よく考えられています(笑)。

逆に搾乳回数が少ない牛については、スタッフが搾乳機まで連れて行きます。牛は1日2回程度搾乳されないと乳房が張り、乳房炎になってしまうそう。放牧場へのゲートも、搾乳量が足りていない牛は外に出られないようになっています。その他、個体別の運動量のチェックなど健康状態を把握するのにも役立っているそうです。

ちなみに牛は、遺伝子の違いによって牛乳に含まれる「βカゼイン」のタイプが異なり、「A1タイプ」と「A2タイプ」に分かれます。「別海ウェルネスファーム」の牛たちはすべて遺伝子が「A2タイプ」であることを確認済み。まだ研究段階ではありますが、「A2タイプ」はより人の母乳に近く、お腹がゴロゴロしにくいと言われています。見た目も味も普通の牛乳と変わりませんが、健康志向の高まりを受けて海外でも注目を集めているタイプなのだそうです。

有機飼料の自家栽培&自社ソーラー発電で環境にもやさしい

敷地内にある飼料用のデントコーン畑
敷地内にある飼料用のデントコーン畑

牧場で出た牛の排泄物は敷地内で堆肥にして自社での有機栽培として活用し、牛の飼料にします。このように資源がグルグルとまわるサイクルなので“循環型”有機酪農と呼ばれています。

ゼロベースからの酪農なので知識やノウハウがなく、最初は除草にも苦労したそう。現在は北海道大学の先生や他の酪農家さんからのアドバイスを受けながら、よりよい飼料となるように試行錯誤を続けているといいます。

太陽光発電による再生エネルギーを利用

また、太陽光発電による再生エネルギーを利用しているのも「別海ウェルネスファーム」の特長のひとつ。ゼロエネファーム化に取り組んでおり、牧場で必要な電力をまかなうことを目指しています。

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酪農を「かっこいい」「面白そう」と思ってもらえる仕事に

山本さん
北海道・中標津の牧場で搾乳メインの仕事に携わったのち、
「別海ウェルネスファーム」へ転職した山本さん

実際に「別海ウェルネスファーム」で働く3名のスタッフは、畑の担当や牛のお世話担当など、大まかに仕事内容が分かれているといいます。今回は酪農4年目という30代の山本さんにお話を聞くことができました。

もともと刑務官をしていましたが、動物に関わる仕事がしたいと酪農に興味を持った山本さん。紹介で「別海ウェルネスファーム」の稼働開始時から携わり、現在は主に牛たちの世話を担当しています。自動搾乳機の導入など人にやさしい取り組みを行うこの牧場で、どのような働き方をしているのでしょうか。

山本さんコメント

山本さん「搾乳に時間や手間が取られないことで、牛の爪のケアや、具合の悪い牛を獣医に診せるなど細かな作業に手が回るようになりました。閑散期は比較的ゆったり過ごせますが、やはり3人では人手が足りない場面も多く大変なことも多いです。牛は人間中心に動いてはくれません。『牛に食べさせてもらっている』という考えで、とにかく牛が健康に過ごせるように日々仕事をしています」

カネカの担当者・天川さんは「酪農業界を盛り上げるには、若いなり手を増やすことも急務です。今はスタッフの熱意に頼ってしまっている部分も大きいですが、そこを変えていきたい。酪農ってかっこいい、面白そうと思ってもらえるようにしていきたいですね」と話します。

日本の酪農の未来を守りたい。ビジネス視点から社会の課題解決に取り組む

環境エネルギー危機・健康危機・食糧危機と、大きく3つの危機にソリューションを提供するカネカ。近年は新型コロナウイルス感染症のPCR検査キットを作っていたり、コンビニでもらえるストローの原材料「カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet」(微生物の働きで生分解され土に還る、100%植物由来の代替プラスチック素材)を開発していたりと、幅広い分野で私たちの暮らしにかかわっています。

仔牛

その目的はどれも「世の中の問題や課題を解決する」ため。社会貢献と同時にビジネスとしても成り立つよう展開しています。

そのカネカが今、注力しているのが酪農問題です。ここ数年は牛乳の供給過多による大量廃棄が話題にもなりますが、日本国内の酪農家は離農や後継者不足で年々減少傾向。若いなり手が少ないため、今後は生乳の生産もひっ迫する可能性があると、「別海ウェルネスファーム」の運営に乗り出しました。

目指すのは、生乳自体の価値を上げ、酪農家さんたちがきちんと生活できるようにすること。循環型の有機酪農から乳製品の製造販売まで、一貫した取り組みをカネカ自身が行うことで、生乳の付加価値を高めようとしています。

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別海ウェルネスファームの生乳で作る、『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』

カネカは2018年から乳製品事業に参入し、酪農大国であるベルギーの人気ブランド『ピュアナチュール』と技術提携をしています。100年以上前から変わらない現地の伝統製法をそのまま日本で再現し、発酵バターやヨーグルトなどを作ってきました。

このヨーグルトも本国ベルギーと同じ乳酸菌を3種類使用。温度帯を変えてゆっくり寝かせる二段階の長時間発酵により、生乳を生かした風味と、複数の乳酸菌による奥行きのある味わいが楽しめます。

一般的にはカップに充填した状態で発酵庫に入れるところを、ピュアナチュール製法ではタンクの中で長時間発酵させてから充填。工程が多いこともあり、お値段は少々高めです。

ヨーグルト表
カネカの有機乳製品第一弾
『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』330g(税別458円)
ヨーグルト裏
95%は有機生乳、残り5%は脱脂粉乳や生クリームが入っています。
年間通じて味わいを安定させるためで、有機食品としての規定はクリアしています。

そして2023年3月からは、晴れて有機JAS認証を取得した別海ウェルネスファームのオーガニック生乳を使用し、『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』に生まれ変わりました。

粘度のあるヨーグルト
『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』は
水切りヨーグルトのような粘度があります。

実際に食べてみると、水切りしていないのにもったりとしたテクスチャー。口当たりが非常になめらかで、さっぱりとした酸味と、やわらかな生乳の甘味を感じます。

カネカの担当者・天川さんは、「一般的なヨーグルトは複数の牧場の生乳を合わせて作るので風味が混ざり合って平準化されますが、『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』は別海ウェルネスファームの生乳のみを使っていますので、先ほど牛が食べていた草や手作りの飼料がそのまま風味に出るんですよね。お客様にもぜひ特有の味わいを楽しんでいただきたいと思っています」とコメントしました。

ヨーグルトマニア・向井智香さんによる『ピュアナチュール』のおいしい食べ方アレンジ

向井智香さん
今まで2,600種類以上のヨーグルトを食したという
ヨーグルトマニア・向井智香さん

取材の後半では、テレビや雑誌等でも活躍するヨーグルトマニア・向井智香さんによる『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』のおすすめの食べ方を3品ご紹介いただきました!

向井さんは「ヨーグルトは近年、どんな菌を使っているか、どんな機能があるか、鉄分やタンパク質の含有量などさまざまな特徴のある商品が出ていますが、『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』は原点である“乳”にこだわって作られているのが魅力のひとつです」と印象を語ります。その乳の風味を生かした以下のアレンジは、どれも手軽に作れそうなものばかりです。

1品目は「フローズンヨーグルト」。材料は『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』とオリゴ糖シロップのみ、混ぜて凍らせるだけの簡単アレンジです。

フローズンヨーグルト
ヨーグルト60gに対して、オリゴ糖シロップ7gが入っています。(1人分)

スプーンを入れた感触はシャーベットのようにサクッとしていますが、口に運ぶとなんともミルキーな味わい。さっぱりしつつも濃厚さがあります。

向井さんは「ヨーグルトから水分と乳脂肪分を除いた残りの成分を“無脂乳固形分”といいますが、一般的なプレーンヨーグルトの8%前後に対し、『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』は12%と高い値です。そのため凍らせても水っぽくならず、ミルク感の強い仕上がりになります。商品本来の質感や味わいを生かしたお手軽レシピです」とコメント。なるほど、夏にぴったりのアイススイーツが簡単にできそうです。

2品目はヨーグルトを主役にしたお食事系アレンジ「オニオンヨーグルトサンド」
水切りした『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』をたっぷり使い、スライスした新玉ねぎを使った食べ応えたっぷりのサンドイッチです。

オニオンヨーグルトサンド
ヨーグルト160gは半日以上かけて水切りし、塩1.5g弱と乾燥バジルを加えます。
トーストした食パンでヨーグルトとスライスした玉ねぎ30gを挟めば完成です。(1人分)

水切りした『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』はクリームチーズのような、もったりと濃厚な味わい。アクセントとして乾燥バジルを混ぜ込んでおり、後味が爽やかです。玉ねぎのシャキシャキとした食感がいいアクセントになります。

3品目は「かぼちゃとヨーグルトのスイーツデリサラダ」。蒸したかぼちゃに水切りした『ピュアナチュール オーガニックヨーグルト』を混ぜた、食事とデザートの中間のような甘いサラダです。

かぼちゃとヨーグルトのスイーツデリサラダ
ヨーグルト60gを水切りし、かぼちゃ70g、黒糖8g、塩ひとつまみ、
生のクルミ1粒を混ぜています。(1人分)

甘味は黒糖を使っているのがポイント。また、香ばしさのあるローストしたクルミではなく、あえて生のクルミを使うことで、かぼちゃによく合うやさしい甘味を引き出していました。子供から大人までおいしく食べられる味わいです。

「ヨーグルトは食後のデザートとされることが多いと思いますが、私はもっと積極的に食事の中に摂り入れたいと思っているので、食事のような、デザートのようなすごく曖昧なメニューを考えました」と向井さん。

ちなみに、ヨーグルトを水切りした後に出る水分「ホエイ」にはビタミンやミネラル、乳酸菌などが溶け出しています。「ぜひ捨てずに活用してください。蜂蜜と合わせて炭酸水で割ると爽やかなスカッシュに、炊飯に使うとお米が艶やかに炊き上がります。香りは飛ぶので気になりません」とも教えてくれました。

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まとめ

別海ウェルネスファーム

「商品の裏側にある酪農家さんの想いや情熱を少しでも消費者の方に知ってもらえたら」との想いで企画された、カネカ主催の「別海ウェルネスファーム」取材ツアー。今後は別海ウェルネスファームの拡大、同じ志を持つ酪農家さんと契約するなどして有機生乳の生産量を増やすと同時に、製品ラインナップを増やしていくそう。

オーガニック製品は現在野菜や納豆などが中心で、乳製品はほとんどないのだとか。それは有機酪農に取り組んでいる酪農家さんがほとんどないことに起因します。これからはオーガニックの乳製品が私たちの暮らしにもっと身近になり、ひいては酪農業の活性化につながっていくといいですね。

カネカ「ピュアナチュール」ブランドサイト
https://kaneka-purnatur.jp/index.html

【当取材記事につきまして】
カネカ様よりご招待を受けてhitotema編集部が企画し、ライター田窪綾さんが現地取材して記事を作成しました。

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