料理家の栗原心平さんによる、初のキッズ料理レシピ本『栗原心平のキッズキッチン』。子どもの好奇心をくすぐり、料理や段取りへの理解を手助けする工夫が満載の料理本です。
今回は実際に子どもと料理を作ったり、著者の栗原さんにお話を伺ったりしながら、キッズ料理の魅力に迫ります。
目次
『栗原心平のキッズキッチン』とは?
『栗原心平のキッズキッチン』(世界文化社)は、2022年12月18日に発売された、栗原さん初の子どもためのレシピ本。
料理家・栗原はるみさんの長男である心平さんの、子どもの頃からの料理経験と小学生の息子を持つ父としての想い、キッズクッキングスクールの運営を通して学んだメソッドが詰め込まれた1冊です。
基礎から応用まで、ひとりでつくれる64のメニューが掲載されており、小さな子どもでも読めるようにふりがな付き。食材だけでなく必要な道具も示されるなど、作りながら焦ったり戸惑ったりしないよう配慮されています。
一方、本書で紹介されているレシピは、必ずしも「子ども向け」と言えるメニューばかりではありません。生肉や生魚も扱いますし、ほうれん草のおひたしやいんげんのごまあえなど、子ども好みとは言えない料理も。
でもだからこそ、長く使える料理本になりそうだと感じました。小学生のときに買ってもらった『栗原心平のキッズキッチン』が、大人になって実家を出てもずっと本棚にある。そんな未来がイメージできる本です。
実験的要素や新しい発見が詰まった1冊
本書に目を通しておもしろいなと感じたのが、子どもの興味が広がっていくような工夫がなされていることです。
同じ素材で、違う料理ができる
例えばたまご料理には、ゆでたまご、目玉焼き、スクランブルエッグなど6つのメニューがあり、同じ食材でも調理の仕方で違う料理になることがわかります。
違う工程で、同じ料理ができる
ハンバーグやチャーハンなど、一部のメニューには「電子レンジ」と「フライパン」の2種類のレシピが用意されています。こちらは逆に、まったく違う工程でも同じ料理ができあがることがわかります。
ひとつのレシピで、いろんな料理ができる
サンドイッチやおむすびでは複数の具が紹介されており、レシピをひとつ覚えるだけで、さまざまな美味しさを楽しめるのだと学べます。
調味料も手作りできる
だし、ドレッシング、焼肉のタレなどは市販品を購入している家庭が多いはず。「実は作れる」というのは子どもにとっては楽しい発見ですし、その知識は将来の生活力にもつながります。
栗原心平さんに聞く、子どもと料理
今回は、栗原さんに直接インタビューさせていただく機会を得ました。
子どもが料理をすることの意味や、栗原さんの子ども時代の思い出のお話などを伺っていきましょう。
――栗原さんは子ども向けのオンラインクッキングスクールを主宰されていて、さらに今回は初めての子ども向け料理本とのことですが、子どもが料理をすることについてどうお考えですか?
栗原さん「料理を作ると、『おいしいね』『ありがとう』と親に褒めてもらえるきっかけになりますよね。料理や食事は、家族とのコミュニケーションの機会になります」
――栗原さんはお母さまが料理家でいらっしゃいます。家族の食卓は一般的にはプライベート空間ですが、栗原家はどんな感じでしたか?
栗原さん「家にスタッフの人たちが来て撮影をして、そのまま食事をしていくことは多かったです。にぎやかで楽しかったし、それが嫌だと感じたことはないですね。それから我が家では、食事が終わるまでみんな同じ場所にいるというルールがありました。父が晩酌をする横で、みんなで映画を見たりしていました」
――栗原家といえば『ごちそうさま』なので、最後まで一緒にいるルールには納得感があります。楽しいけれどなんでもアリではない、素敵な食卓だったんですね。
――本の紹介には、段取り力という言葉がありますね。YouTubeチャンネルにも、マルチタスクにフューチャーしたポテトサラダのレシピがありました。
栗原さん「料理には手順があり、さらにお湯を沸かしている間にこの調理をして…など、完成をイメージしながら並行で行う作業が多いので、プログラミング的な思考や作業の段取り力が鍛えられていくんです」
――言われてみれば頭の中で組み立てたり入れ替えたりして料理しています。意識しなくても、料理の習慣によって鍛えられるんですね。
――さて今回は子ども向けの本ですが、わかりやすさなど、特に意識されたことはありますか?
栗原さん「子どものために考えて、というのは、必要な道具を書いたり、ふりがなを振ったりしたくらいです。作る人が再現しやすいことを意識してレシピを書いていますが、それは子ども向けに限らず、いつでも同じですよ」
――たしかに、子ども向けのメニューばかりではないし、手順や説明も簡略化されていませんね。子ども向けというより、基本の料理本という感じです。
栗原さん「子ども好みのイベント的なメニューばかりではなく、おひたしのような料理を作れないと、継続するのが難しいんです。そもそも、子どもを子ども扱いするのがそもそも好きではないですしね」
――料理は毎日のことですもんね。『子どもを子ども扱いしていない』、料理に興味を持って本を手に取る子どもにとって、それはとても嬉しいことだと思います。
実際に子どもと作ってみた!
今回、小学3年生の子どもと挑戦したのは、チャーハン。
ひとりで料理をしたことはないものの、料理への興味関心は強く、卵を割ったり、生地を混ぜたりするくらいはできる料理力です。
電子レンジバージョンとフライパンバージョンで作り、手間の違いやできあがりの違いを比べてみることにしました。食材を刻むところと計量までは一緒にやり、あとは本人の手で作業ということに。
まずは、電子レンジ調理。
ボウルに入れて、混ぜて、レンジで加熱して、また混ぜて、レンジで加熱して…という工程。
最後はお茶碗などの型に入れてお皿に盛り付けます。
全体に黄色く、ふんわりした仕上がり。
続いては、フライパン調理のチャーハン作り。
カセットコンロでフライパンを加熱して、ショウガとニンニクを炒めて、卵を入れて、ごはんを入れて、具を混ぜて。「ご飯の量が同じなのに卵とショウガとニンニクとネギは倍だね、なんでかな?」などと会話しながら調理しました。
フライパンの扱いに慣れていないので手間取りましたが、無事にチャーハンが完成しました。かなりフォローが必要だったものの、なんとか自力で料理を仕上げることに成功!
「どっちが美味しかった?」
「レンジ100点!フライパンのほうは硬かったから、98点!」
「どっちが簡単だった?」
「レンジ!」
加熱しすぎの心配がいらないことは、子どもが焦らず料理するための大切な要素であること。レンジ調理は、手際の良さに関係なく安定した仕上がりになること。
大人としてそんな気づきもあり、興味深かったです。
後日、焼肉丼も作ってみました。
焼肉のタレの液体調味料の計量を間違えてしまったのですが、「タレっぽくなくなる」「でも美味しい」と、それもまたいい経験になりました。
まずはお手伝いから!
子どもを子ども扱いしないレシピ本とはいえ、いきなりひとりで料理を作れと言っているわけではありません。
プロローグとして、4つのお手伝いも紹介されています。
- 納豆をまぜて → 納豆豆腐
- ドレッシングをつくって → フレンチサラダ
- 大根をおろして → しらすおろし
- お米を洗って → ごはんを炊く
まずはキッチンに立ち、食材が料理に変化しているのを見てみること。
そこから始めてみませんか?
『栗原心平のキッズキッチン』
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4418223118
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/17335221/
栗原心平さんプロフィール
料理家 栗原はるみの長男。 一児の父。
(株)ゆとりの空間の代表取締役社長。会社の経営に携わる一方、幼い頃から得意だった料理の腕を活かし、自身も料理家としてテレビや雑誌などを中心に活躍。仕事で訪れる全国各地のおいしい料理やお酒をヒントに、ごはんのおかずやおつまみにもなるレシピを提案している。
2012年8月より、国分太一&栗原心平が日曜お昼にお送りする、ほのぼのとした時間が流れるおしゃべりな料理番組『男子ごはん』(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。
公式サイト:https://gochichan.com/
オンライン料理教室「ごちそうさまクッキングスクール」
YouTube「ごちそうさまチャンネル」
【当記事につきまして】
世界文化社よりご案内を受けてhitotema編集部が企画し、記事を作成しました。