お菓子作りに欠かせない卵。とても身近な食材なだけに普段あまり意識せずに使っていると思いますが、性質や扱い方のコツをきちんと知ることで、より美味しいお菓子が作れるようになります。
この記事では、製菓衛生師の資格を持つ筆者が卵の性質や必要性、よくある失敗と解決法などを解説しているので、お菓子作りをする前に読んでみてください。
目次
卵の3大特性がお菓子作りに役立つ!

お菓子作りで役立つ卵の性質は、大きく分けて3つあります。
気泡性

卵白に含まれるたんぱく質は表面張力を弱める働きがあり、かき混ぜることで空気を抱え込み泡立ちます。
そして、そこに熱を加えると抱え込んだ空気が膨張し浮き上がるため、ふんわりとしたスポンジケーキなどが焼き上がるのです。
乳化性

卵には乳化作用があり、本来混ざり合うことのない水と油を繋ぎ合わせ安定させます。
卵黄、卵白ともに乳化剤としての役割を果たしますが、特に卵黄に含まれるレシチンは乳化性が強い油脂。バターケーキやアイスクリームは、乳化性を活かして作られる代表的なお菓子です。
熱凝固性

卵に含まれるたんぱく質は、熱を加えることで固まる性質があり、これを卵の熱凝固性といいます。熱凝固性を生かして作られるお菓子の代表格は、プリン。
卵白と卵黄は異なるたんぱく質を含むため、凝固する温度に差があります。それぞれの凝固温度は以下の通りです。
凝固開始温度 | 完全凝固温度 | |
卵黄 | 65度前後 | 75度前後 |
卵白 | 60度前後 | 80度前後 |
普段お料理する温度より、かなり低いことがおわかりでしょうか。
詳しい説明は省きますが、例えばプリン液を一気に高温で加熱すると水分が必要以上に抜けてかたくなり、舌触りが悪くなります。
ちなみに、卵黄と卵白の凝固温度の違いを生かしたのが温泉卵。卵白が固まり始める→卵黄が固まり始める→卵黄が完全に固まる→卵白が完全に固まる、という順番で凝固するため、70度くらいを保って加熱すると「白身はとろとろ、卵黄は流動性がほとんどない凝固状態」という温泉卵ができるのです。
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