2020年秋、大きな話題になっているのが「塩糖水」。
その名の通り、塩+砂糖+水で作る液体で、それに漬けるだけで魔法のように食材がしっとり美味しくなり、しかも長持ちすると……⁉
考案者は料理研究家の上田淳子さん。2019年1月に雑誌「暮しの手帖」で紹介されて徐々に広がり、2020年9月にNHK「あさイチ」で取り上げられたことで一気に知名度を上げました。
今回は2020年9月に発売された上田さんの著書「おいしくなって保存もきく!塩糖水漬けレシピ」(世界文化社)を参考に、塩糖水の魅力に迫ります。
目次
話題の塩糖水とは?
塩糖水、読み方は「えんとうすい」。燻製や食肉加工品を作る際に肉を漬ける「ソミュール液」をヒントに生まれた調味液です。
塩糖水の作り方

塩糖水の作り方はとても簡単!
今回は許可を得て、レシピ掲載の配合をご紹介しますね。
(肉や魚 250~300gに対して)
- 塩(粗塩) 小さじ2/3(3g)
- 砂糖 大さじ1/2(5g)
- 水 100ml
塩糖水を使うメリット

塩糖水に漬けることによる効果は、3つ。
- 保水性が高まる
- 均等に中心まで味がしみこむ
- 表面の汚れや菌を落とせる
「保水性が高まる」ことで、パサつかず、冷めてもしっとり美味しく、冷蔵状態で長持ちし、シンプルなベースの味が「均等に中心までしみこむ」ことで、醤油やバターなどを少し加えるだけで料理の味が簡単に決まり、「表面の汚れや菌を落とせる」ことで雑菌の繁殖を防ぎ、臭みが取れるのです。

下味を付けつつ、しっとりふっくら仕上げる調味料としては塩麹が有名ですが、塩麹より手軽で、使えるレシピの幅が広そうなのも魅力ですね(塩麹は発酵食品ですから塩糖水にはない効果もあり、どちらがいいという話ではありませんが)。
塩糖水に向く食材

塩糖水は保水性を上げるのが最大のポイントですので、もともと保水性の低い食材が適しています。鶏もも肉よりも鶏むね肉、豚バラ肉よりも豚もも肉、魚ならタラやカジキ……という感じ。
今回は基本に従い、鶏むね肉、鶏ささみ、鶏手羽中、豚ももかたまり、豚もも切り落とし、カジキを用意して漬けてみました。
塩糖水の実力はいかに…?
まずは、その実力を確かめたいところ。4時間ほど漬けた鶏ささみを焼いてみます。

生の状態の鶏ささみは、漬ける前よりふっくらツヤツヤしているように見えました。

そして、鶏ささみをカットし、薄くサラダ油をひいたフライパンでしっかり加熱。
そのまま食べてみたのですが、食感はしっとり、塩味と甘みがほんのりあって、期待以上の美味しさ!子どもたちにも大好評で、フライパンからお皿に移す間もなくつまみ食いでなくなってしまいました。お弁当にも良さそう!

こちらは一晩漬けた鶏手羽中。バーベキューに持参して焼いてみたところ、ほろほろで絶品。タレいらずでした。
レシピ本まで必要?!

使い勝手抜群の塩糖水ですが、レシピ本を使ってみるにあたって心配なことがありました。
というのも、塩糖水はクセのなさが特徴。例えば塩麹なら「この調理法が美味しい!」「このレシピと相性がいい!」という情報が役立ちますが、塩糖水漬けの肉や魚は、基本的にどんな料理でも合うはずなんです。
塩糖水の配合と塩糖水向きの食材まで公開されているのに、レシピ本って必要なの……?

でも、塩糖水の効果を実感してからあらためて読んでみて、レシピ本の意味を理解。やわらかい食感になることで、鶏むね肉や豚もも肉の用途が一気に広がるんです。そこで、レシピ本に掲載されているバリエーション豊かなレシピが役に立つというわけです。

例えばこれは、「鶏ときのこのとろろグラタン」。チキングラタンなんて鶏もも肉が美味しいに決まってる!という常識を覆す、鶏むね肉のしっとり感とうま味は塩糖水ならでは。

しかも、思わず試してみたくなるアレンジが多い!
みょうが入りのサラダチキンのジンジャーオニオンマリネソースなんて、薬味好きは作らずにいられませんよね。

わりと少食の夫が、ひとりで鶏むね肉1枚を完食してしまいました。

鶏ささみは天ぷらにもしたのですが、とり天の美味しさはもちろんのこと、衣の扱いやすさと仕上がりに感動……!レシピの公表は控えますが、この衣だけでも、レシピ本の価値はあったと思います。
豚肉も魚も。野菜もOK!
うっかり鶏肉ばかり紹介してしまいましたが、ほかの食材のレシピも豊富ですよ。
豚肉

豚のハムだって、2種類載っています。

今回はオーブンで焼きハムにして、表面をバーナーでちょっと炙ってみました。しっとり美味しかったです。が、かたまりの豚もも肉なので、鶏ささみや鶏手羽中ほどの劇的な変化は感じられず。

でも、豚もも切り落としとピーマンの炒めものは、柔らかくて飽きのこない味で最高でした。しっかり中まで塩糖水が浸透する形状のお肉のほうが、より効果が高いようです。
※このお料理はレシピ本にはありません。
魚

おすすめの魚は、鯛、鮭、タラ、サワラ、ブリ、カジキ…と紹介されているのを見て、「パサつきやすいカジキはともかく、ほかは普通に調理しても充分美味しいのでは!?」と思ってしまいましたが、説明を読んでこちらも納得。
塩糖水によってうま味が引き出されたり、よりシンプルな味付けでお料理が完成したりするため、塩糖水漬け前提でのレシピが役立つのです。

と言いつつ、まずはやっぱりカジキを。冷凍ではない生カジキだったのでもともとしっとりめでしたが、塩糖水を含んでふっくらしています。

レシピにあったトマト煮にしました。カジキなのに、パサつきはなし。ほろりと崩れる身はしっとりしていて、パスタを茹でたい衝動にかられました。冷凍のカジキでどこまで美味しいか、試してみたい!
野菜など
基本的には肉と魚ですが、野菜や卵、さらには豆腐やチーズといった食材を漬けることもできます。昆布やかつおと一緒に野菜を漬ければ、浅漬けみたいになりますね。

味付けも!変わり塩糖水

そして最後、レシピ本ならではのお役立ち情報が「変わり塩糖水」。塩糖水をハーブやレモンで風味付けしたり、塩を醤油やナンプラーに替えたりするアレンジ。レシピの幅は狭くなりますが、しっかり味がつくので「そのまま使える食材」としてはより便利になりますね!
エスニックフード好きなのでナンプラーアレンジが気になり、こちらはオリジナルで2品作ってみました。こちらも許可を得て、「ナンプラー糖水」の配合をご紹介!
<材料>
- ナンプラー 大さじ1
- 砂糖 大さじ1/2(5g)
- 水 100ml

こちらは、ナンプラー糖水の唐揚げ。食感よりも味付けしたいのがメインだったので、鶏もも肉を使いました。塩糖水の水分を切って片栗粉をまぶしただけですが、ジューシーでほどよい塩気。冷めても美味しかったです。

ゆで玉子を塩糖水に漬けるレシピは紹介されていましたが、ナンプラー糖水も美味!ごま油をかけてこしょうを挽いただけですが、おかずにもおつまみにも◎。パクチーがあれば添えたいところでした。
塩糖水ライフ、始めよう
記事のために数品作ってみるつもりが、便利で美味しかったのでついついたくさん試作してしまいました。素材をグレードアップさせる味わいや食感も魅力ですが、漬けておくだけで日持ちするという点もいいですよね(冷蔵庫で肉は4~5日、魚は2~3日が目安)。

そして、最後になりましたが、このレシピ本のおすすめポイント。ほとんどのレシピページに、塩糖水の分量が書かれているんです。同じことを何回も書かないのが普通だと思うのですが、毎回記載ページを探さなくて済むのはとてもありがたい。さりげないことながら、読者への配慮に感激しました。
特売で買いすぎた肉や魚を冷凍庫に詰め込んで忘れてしまいがち、という人。
メニューはその日の気分で決めたいけれど、食材はささっと調理できる状態にしておきたい!という人。
塩糖水は、そんな人に特におすすめですよ。
書籍情報

タイトル:おいしくなって保存もきく! 塩糖水漬けレシピ
著者:上田 淳子
出版社:世界文化社
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4418203117/
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/16404537/
【hitotema編集部注】
当記事は、広告記事ではありません。
レシピ本のご紹介をお願いしたところ、ご厚意でご恵贈いただきました。