今までの回でオメガ3の重要性とその代表格であるえごま油、少しマニアックなサチャインチオイルをご紹介しました。
今回はえごま油と並ぶオメガ3オイルで有名なあまに油について掘り下げてみましょう。よくご質問を受ける、えごま(荏胡麻)油とあまに(亜麻仁)油はどっちがいいの?についてもお答えします。
目次
あまにのこと
ではまず油を搾る前の原料、あまにについてみてみましょう。
あまにの歴史と産地
「亜麻色の髪の乙女」という歌がありましたね?あまに(亜麻仁)は文字通り、アマ科亜麻の種(仁)のこと。あまには、フラックスシード(Flaxseed)やリンシード(Linseed)とも呼ばれます。また麻にはいろいろな種類があり、ちなみにヘンプシードは麻の実のことです。
あまには可憐な青紫や白い花をつける一年草で、その歴史は大変古く石器時代にはもう見つかっていたとか。古代エジプト時代ミイラに巻き付けた布、あれが亜麻の茎の繊維から織られた布、リネン=麻布です。あまに油は当時、食用や灯明、湿布薬や塗り薬として広く使われていたようです。原産は中近東やコーカサス地域周辺と言われています。
やがて西ヨーロッパに広まり、医学の父ヒポクラテスやシャルルマーニュ大帝もあまにを推奨、栽培を推進しました。今ではロシアやカナダ、ヨーロッパ、中国など世界中の多くの地域で大規模に栽培されています。
日本では北海道で明治時代に繊維原料として栽培が開始されましたが、化繊の台頭により一度衰退、平成に入って食用として復活した経緯があります。もうひとつ、あまに油の大きな用途で工業用があります。油絵の具やペンキ、塗料、ワックスの原料としても使われています。
あまにの栄養
残念ながら日本では、あまにを食べる習慣はあまり根付いていませんね。たまにパンや焼き菓子のトッピングに使われるゴマくらいの小さな粒です。
ですがあまには豊富なたんぱく質、カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラル、食物繊維や抗酸化力が高いアマニリグナン、そしてオメガ3オイルであるα-リノレン酸を含有するスーパーフードです。
特にポリフェノールの一種であるアマニリグナンは女性ホルモンと似た作用があり、更年期症状や骨粗鬆症の予防・緩和、肝機能や肥満の改善にも効果があるとのことなので、女性には特におすすめです。
ゴマ和えのようにすって野菜を和えたり、粉状のものをサラダやパスタ、スープに入れたりするのもいいですよ。食べると少しとろりと粘性があるのが面白いです。
あまに油とえごま油?
ところで、あまに油とえごま油はどちらの方がいいのでしょうか?
オメガ3含有量
まずオメガ3脂肪酸の量ですが、えごま油は56~68%前後。あまに油は45~61%前後。ほぼ同程度と考えていいでしょう。リノール酸、オレイン酸の数値も大幅な違いはありません。
味わいの違い
では味わいはどうでしょうか。えごま油もあまに油も、原料を焙煎せず生搾りされることが多いですが、ほんのり焙煎することもあります。
どちらもそんなに強い香りはありませんが、あまに油は後味に苦みがあるものが多く、メーカーにより「ほろ苦い」から「結構苦い」まで幅が感じられます。逆にそこにはまる方も。
また、さっぱりとしたえごま油に比べるとコクを感じると思います。
違いを表にまとめてみましたのでご参考にどうぞ。
前々回の「油ができるまで/「搾油」と「精製」のお話」で書いたように、同じ原料でも仕上がりの油は風味も色も味わいも違うことが多々あります。
えごまやあまには産地や品種の違いも、油に出る傾向があります。ただ、癖を抜く精製処理をしたものはどちらも変わりありません。私でも全く判断がつきませんよ。
どちらがおすすめ?
結局どちらを摂るべきか。ずばりオメガ3を摂るためなら、お好みの風味と味で選んでいいと思います。残念ながらあまにの有効成分であるアマニリグナンは、油には含まれません。ですので、油としてはどちらでも構いません。無理なく続けられるものがいいのです。
ただし原料そのものを食べる場合、えごまは花粉症や痒みなどアレルギー症状のある方に、あまには更年期症状やPMS(月経前症候群)が気になる方に特におすすめです。
もうひとつは料理との相性で選ぶこと。
あっさりした和食や素材の味を邪魔したくないものにはえごま油か精製あまに油。濃い味付けのものやハーブ、スパイスを使った料理には焙煎したえごま油やほろ苦いあまに油が合います。
またオレンジやレモンなどのフレーバードタイプや、あまに油とえごま油のブレンド、その他のオイルとのブレンドオイルもありますよ。
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