土に触れて未知触れる、自分との対話時間。 #加藤紀子のおいしい畑

土に触れて未知に触れる、自分との対話時間。 #加藤紀子のおいしい畑

やってみないと、焼いてみないと分からない世界。

前々回『新たなる”土”の扉』の中で、陶芸教室に通い始めたことを綴った、続きのお話。
器やお皿選びはこれまで、出かけた国内外の旅先であったり、好きな作家さんの作品を少しづつ揃えたりして、 その中に畑の野菜を調理して盛り付け、十分満たされた暮らしをしていたのですが、お教室に長く通っているお友達が声をかけてくれたこと、また「自分で育てた野菜を自分で作った器に盛り付けられたなら、なんて幸せなんだろう!」と夢見て、
私の器作りが始まりました。

頭の中にしかないものを作る…のは、こうした文章を書くことやお料理をしていく工程と同じで、ゴールに向かってまっすぐ進んでいけば良いのだけど、如何せん未知の世界。
何が作りたいか、どんな形に仕上げたいか、色はどうしたいのか…、先生の口から放たれる、初めて聞く単語の連続に悩む…というより、迷う…。
それでも「大人になってからの未経験や戸惑いって、こんなに楽しいだなんて〜!」ともなる感覚をも楽しみながら、捏ねて、撫でて、削って、人の作業眺めて、なんとか形にする事が出来た!と思ったら。

素焼き

なぜですか、3つともほぼ同じ形って紀子さん…。
「お浸しを盛ってみたい」「お漬物とかも」「少量の煮物を」
土を選び、捏ねるたびに、それぞれ別の用途をイメージしていたはずなのに、
どれもなんだか似ちゃってる…。
(それに比べてお向かいの方の自由で躍動的な作品、憧れー!)

「ならば色で変化を!」
様々な種類の釉薬が持つ、それぞれの特徴や色の出方、ツヤの有無など、このステージでも新たなる知らない言葉全てに、混乱と興奮をした後、ようやく最後の工程へ。

釉薬掛け1

「ああ……」
水たまりの中にある泥を触って遊んだ時の感覚のような、
バレンタインデー前夜に、溶かしたチョコを舐めてみたくて、ボウルに指先を入れた時のような、沼の底にある土を掴んだかのような(したことないけど)、冷たくて重くて、それでいてやっぱり初めての感触。

釉薬掛け2

あまりに不思議でオリジナルな触り心地にうっとりしていたらしく、
「のりちゃんのその顔、撮っとくよ!」
お友達が笑いながら、写真に収めてくれました。

ちなみに釉薬、「掛ける」という言葉を耳にしてきていたので、柄杓のようなものを使って塗ることを意味するのかと思っていたら、釉薬にドボンと浸す方法や、刷毛でポイントを付ける方法など、こちらもまた色々な手法があることを教わりました。

釉薬掛け3

厚みのムラが出るのではないか、床にだらりと垂らすのではないか、持っている箇所の釉薬はきちんと付いているのか…

釉薬掛け4

テーブルの端を利用してそうっと置いて…
しっかり乗せないと落として割っちゃいそう…
一つ一つの工程において、自分の中の得手不得手と対話する時間。
日常を過ごしていると、すでに経験していること、なんとなく想像が付いてしまう事がいっぱいで、未知に触れるとは、刺激にもなるから時に必要だなあ…なんて感じながら、作業黙々。

形のないものが形になった結果。

完成した器

「ホント?」
作った本人ながら、その出来栄え、仕上がりにやっぱり戸惑いが…。
流れると聞いて使ってみた釉薬は、完全に想像していた以上に流れているし、滑らかにしたはずの表面は、指跡満載に残っているし、作りながら終始「これで良いのか?」とドキドキしていた心が手に伝わったのか、器のフチ全体には小さな波のような揺れが…。

どの角度から見ても「欲しくなる器からは遠い…」と、思わざるを得ない率直な感想…はありながらも、でもなぜか、どの角度から見ても“私っぽさ”が出てるのだけは、さすがだなあ…と我ながら。
家に帰って早速、焼きナス、モロヘイヤとしらすの和え物を器に盛ってみると「昔から使ってたよね?」と思わされるほどに収まりが良いのも、面白い発見でした!

料理

年明けには50という年齢を迎える私にとって、陶芸を学ぶことは偶然にも「五十の手習!」ともなったわけですが、いつかは頭に描いたものが形に、そしてその完成品に全身が震える日が来る事を願って、未知なる道のりを楽しみたいと思います。
ニンニク保存用に陶器のボウル、お塩を入れるツボ、さらにはろくろ回しだって!
次なる器がどんな形で釜から焼き上がって出てくるのか、今日もまたお教室へと行ってきます!

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