友と土と過ごす、居心地のいい時間 #加藤紀子のおいしい畑

新たなる“土”の扉! #加藤紀子のおいしい畑

「のりちゃん、やっぱり“土”だったね」
向かいに座って作業するお友達がこう一言。

長く「これらは買うもの」と信じ、国内外問わず出かけた旅先で、出会っては割れぬようぐるぐるに包んでもらって、抱えて帰ってきていた器の数々。
それが40代最後の年となった私にまさかの!

きっかけは、お料理教室やライブなど、趣味の場所で一緒になるお友達2人とお家ご飯をした夜。

畑で採れた野菜を使ったお料理が食べたいとリクエストをくれたので、グリル野菜のサラダやウドの酢味噌あえ、八頭(里芋の親分のような芋)を使ったコロッケを食べながら、「これはどこのお皿?」なんて、盛り付けている器の話になり。

「サンタフェのアンティーク屋さんで見つけたウズベキスタンだったかのお皿で、こっちは鹿児島のお友達、“ONE KILN”が作るシリーズ、これはサンフランシスコの“Heath Ceramics”でまとめて買ってきたやつ!」と、お皿までお酒のつまみにしながらおしゃべりしていると「実は私達、陶芸教室に通ってて。紀子さんも来たらいいのに!」と、一言。

その時の私は彼女たちが楽しんでいる趣味の豊かさに意識をとられ、誘ってくれた事をうまく理解していなかったのですが、次にランチで会っても、お茶の場所で会っても「紀子さん、好きだと思うんだけどな〜」何度も誘ってくれるので、先日、ならば!と“体験レッスン”に参加させてもらってきました。

先生に言われた通りに土を捏ねたら、「新しい妖怪ですか?」みたいな塊、ゴロリ。

「でしょでしょ、本当そうなんだって!これまで何度もテレビのロケで、ロクロも絵付けもガラス拭き体験もいろいろやらせてもらってきたけど、そうしたセンスがゼロなんだって!だからそれらが出来るプロの手仕事にリスペクト!と買わせてもらって、大切に使っているんだって!」

すぐさま心の中でこう叫んだけど、あれ、でもなんか…楽しい。

そして居心地、いい。

お向かいのお友達も、隣に並ぶお友達も、斜め向かいの初めましてさんも、各々がそれぞれに好きなものを自分のリズムで真剣に向き合いながら、おしゃべりしたり、先生に指示を仰いだり、誰もがとてもリラックス。ここは「みんなと一緒にいるけど、みんなと合わせなくていい」が広がる、とても心地よい空間。

先生の言うことをよく聞いて、誰かの迷惑にならないよう、静かに真剣に取り組むのがお教室、と信じていたけど、土に触れ、自分の内なるものを生み出し作り出すために、生徒と呼ばれる私達に与えられた自由の場…という事実に気がついてしまったら、「こうしなきゃ!こうでなきゃ!」な想いは消え、純粋に作ってみたいものが手の中に。

だから「紀子さん、好きだと思うんだけどな〜」だったんだ!

体験で作らせてもらったのがこちら。
「もっとおかしなの作ってくると思った!」
作り終えた器の写真を見た夫の第一声(私も激しく同意)!

これまで好きになったものはとことん学び尽くさないといけない、そんなふうに心のどこかで決めてしまっていて、「フレンチポップスが好きならフランス語も話せなくては!野菜作りを始めたなら、野菜の栄養素も知っておかなくては!ワインも飲むばかりではなく、多少の知識を得なくては!お豆腐愛に気付いたのなら、自分で作れるよう、なんなら大豆から育てよう!」
趣味ならばもっとゆるくてもいいはずなのに、手を抜く事をこれまで苦手としてきましたが、この陶芸に関しては、お友達や周りの皆さんのリラックスをお裾分けしてもらって、力の抜けた趣味になるといいなあ…なんて。

陶芸教室に通い始めたことをブログに書いたら、「笠間でもどうぞー!」と連絡をくれた、笠間で作陶している作家、keicondo君。

彼の作品とは以前、同じく笠間市内にあるギャラリー“門”で出会い、そこから見つけるたびに1枚づつ購入を。色、形、それぞれに表情が違って、手に取っては見惚れるものばかり。

(うどのおにぎり!って、おにぎりでもこの形ですからね。握ったり捏ねたりは不得手なのです)

同じく笠間の作家、船串篤司君作の器もお料理を立ててくれる素晴らしきものばかり。(同じくギャラリー“門”で見かけたらラッキー。人気ですぐに売り切れちゃうほどの人気作家さん)

(牛蒡入り牛丼の茶も、山椒の緑にも輪郭を持たせてくれる、こちらも凄技器)

(モリモリ野菜と油揚げのサラダ)

唐津で作陶されている健太郎窯さんへ伺った時、こんな趣味へとたどり着くことが分かっていたのなら、質問の角度、変わっていただろうな…。

土を耕し野菜を育てて10年、その野菜を盛るための器を、自分の手によって捏ねて回して焼き上げて…。すぐには思い通りの形にはならないのは、経験してきた野菜作りと同じだろうな…と、長い目でこの新たな趣味を楽しんでいこうと思います。

とはいえ、最初に出来上がった作品に盛るのは、8月の終わり頃だとなれば、好きすぎて育てることにした“落花生”の塩茹で、“ナスとピーマンの揚げ浸し”、“オクラとモロヘイヤのお浸し”…

「やっぱり“土”だったね、のりちゃん」
新たなる土の世界、 思い切り楽しんでみようと思います。

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