おせちで辿る、家族とお正月の思い出。#加藤紀子のおいしい畑

おせちで辿る、家族とお正月の思い出。#加藤紀子のおいしい畑

『今年なのか…去年になるのか…』
どちらにも跨いでしまった上に、1月の中旬に書くのもどうかと思いますが…、お正月、おせちの話です。

子供の頃には大きな魅力を感じていなかった、おせち料理。
夕飯の片付け後、母が大きなフライパンで炒って作っていた田作り、「可愛い形になってるな〜」としか思っていなかった手綱こんにゃく、噛んだ途端、煮汁が飛び散りそうで「もう一枚!」と手が伸びなかった椎茸の含め煮、「手が汚れるから食べなくていいか〜」な海老のうま煮、「でも数の子と赤ナマコ酢は毎年お願いします」。
この時期だけの料理は、お茶にもご飯にもどうもしっくり来ない…と思いながら食べていたような。

それでもお正月が楽しかったのは、両親が営んでいた居酒屋の常連客さんが家にやってきて、父とおせちをつまみながらお酒を飲んで楽しそうな姿があったり、母は「まだ飲むの?」と笑いながら、少なくなったおせちの何かを足したり、兄と私は“ハチトラ”と呼ばれるカラオケシステムで、誰かからのリクエスト曲を歌う…
そんな時間やお年玉!があったから(ちなみに兄は西田敏行さんの「もしもピアノが弾けたなら」を、私は小林幸子さんの「おもいで酒」が十八番でした)。

そこから数年、仕事を始めると年末年始のお休みには気になる国へと旅行に出かけ、日本でのお正月を味わうことから離れていました。

そんな私がテレビ番組の出演がきっかけで、野菜を育てるようになり、季節の野菜料理を楽しむ事に目覚め、「自分で育てた野菜を使って、おせちが作れたら!」と思い立ち、おせちレシピが紹介されている本を読み漁り、おせちレッスンに出かけたりもして、我が家なりの「おせち作りの旅」が始まりました。

2014年のお正月。

2014

どこにも自信がなくて、すがるような思いで、母から教わった田作りや手綱こんにゃくから作り始めた記憶。紅白ナマスや牛肉と牛蒡の八幡巻き、カブを菊に見立てて切ったり、やり慣れないことの連続すぎて、一切の余裕がなかった結婚1年目。

「どう?」と味の感想を求めると、「話しかけられないくらい、なんか怖かった」…、夫からは味じゃない感想が返ってきました。

2015年。

2015

「一の重、二の重…それぞれの意味って…」
まだまだ分からないこと慣れないことだらけながらも、なんとか形が決まり始めた、2年目。お正月価格になるかまぼこの値段に驚き、飾り切りを覚えたのもこの年でした。

2016年。

2016

私が作れるもの、夫が好むものがようやく見えてきた3年目。そして黒豆やチキンロールなど、人様からの頂き物に遠慮なく甘えることも覚えました。

2017年は、身内に不幸があったので、おせちもどきでお正月。畑の恵みを大皿に載せて、夫婦の健康を祈っていただきました。

2017

2018年。

2018

作るもの、詰めるもの、ほぼ同じスタイル確立。だからせめて…と、秋に抜いたさつまいもで初めて栗きんとんを作ったものの、「あ、私たち、甘いものを嬉々として食べないんだった」事を思い出し、栗きんとんはこの年限りとなりました。

2019年。

2019

1年に一度しかしないながらも、蓮根や人参、カブ、かまぼこの飾り切りが上手に出来るようになった気が。調子に乗ってお雑煮に入れたかまぼこも、こんな風。

2019-2

2020年の年越しは海外で!と、サンフランシスコ、マーファ、サンタフェへの旅に。
中でも、サンフランシスコで食べたBakesale Bettyのチキンサンドがたまらなく好みで、「毎年お正月はサンフランで!」そう願いそうになりながらも、

2020

それでもやっぱり作りたくなった2021年のおせちは、去年ここで書いた通りの仕上がり。

関連記事

二人暮らしなのに、毎年山のように作ってしまう“おせち”、本年も1月半ばにてようやく食べきりました。今年はお客様がいらっしゃることもなく、おすそ分けするタイミングもなく、毎食夫婦で向かい合い、まずはお重に詰めたものを、そこに飽きれば「今日か[…]

#加藤紀子のおいしい畑

迎えた2022年も、詰めるアイテムはほぼ同じラインナップながらも、自分の中に大きな気づきが。

これまでは育てたもの、買ったものを調理して味付けし、詰めたら完成!と思ってきたけど、作りながら「おせち作りはいつもと同じ料理ではあるけれど、より手間をかけて、丁寧に仕上げていく料理なんだなあ」、分かってはいたけど、手を動かし続けていく中で、しみじみこんな気持ちが湧いてきました。

各地域の風習が組み込まれていたり、彩りや何かに見立てる飾りや切り方、数日かけて食べられるような知恵と意味をも含む味付け。
だからこそ、それらを理解している、していたであろう大人たちは、おせちをお屠蘇とともにいただける喜びを、家族や仲間と噛み締めていたのではないのかなあ?なんて。

「せっかくだから、田作りも綺麗に並べよう」
盛り付けるだけではない、向きを揃えるひと手間を。

「田作りと数の子にはやっぱり日本酒だねー」
亡き父が「熱燗で!」と楽しんでいたスタイルや、今では孫のためにせっせと田作りを作る母の気持ちが、今になってやっと理解出来ました。

2022

(今年のお屠蘇は土田酒造さんのシン・ツチダを。きもと作りで作られる無添加の日本酒は、空気に触れることで味が変化、進化していくので、口に運ぶたびに新しい味が楽しめました。https://tsuchidasake.jp

この一年も一層、おいしく楽しいお話を届けられるよう、精一杯綴っていくので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします!

関連記事

>hitotema

hitotema

贅沢・丁寧は、難しい。でも、節約・時短ばかりじゃつまらない。日々の生活を彩る、嬉しい情報を届けます。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。
Cookieなどの設定や使用の詳細については詳細をよくお読みいただき、これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになりますので、ご了承願います。

同意する