100円ショップや通販サイトで、歯石が取れる道具をよく見かけるようになりました。歯科医院に行くのを控えている方にとっては、自宅で手軽に歯石が取れて助かりますよね。しかし、歯石を自分で取るのは、口のトラブルを引き起こす原因になることも。
そこで今回は、自分で歯石を取る危険性やトラブルなどについて解説していきます。
目次
歯石を取るための道具
歯石を取る器具は、鎌のような形で先端が細くなっているのが特徴の「スケーラー」という器具です。ステンレス製が多く、狭い歯と歯の間に付いている歯石も取れるようになっています。
他に、歯の表面に付いている歯石を削り落とせるヘラのような形をしたスケーラーもあります。
小さい丸い鏡のついた器具やピンセットなどと一緒に「歯石取りセット」として販売している通販サイトなどもあります。
爪楊枝はNG
爪楊枝を使って、自分で歯石を取ろうと試みた方もいるのではないでしょうか。
しかし、歯石はかたくて歯にこびり付いているので、爪楊枝では取るのは難しいです。力を入れ過ぎて爪楊枝の先が折れてしまい、口の中に破片が残ってしまう恐れもあります。
自分で歯石を取るのは危険!
自分で歯石を取ると、次のような危険性があるので注意が必要です。
歯と歯茎を傷つける
たとえ爪楊枝ではなくスケーラーを使っていても、自分で歯石を取ろうとすると歯や歯茎などを傷つけてしまう可能性が高いです。
その結果、以下のようなトラブルが起きやすくなります。
出血や痛み
ステンレス製のスケーラーは、包丁と同じように刃先の切れ味が良いので、歯茎を引っ掻くと出血してしまうことがあります。特に、歯と歯茎の境目にある歯周ポケット(歯茎の中への入り口)の内側をスケーラーで引っ掻いてしまうと、痛みが出ることも。
また、スケーラーで歯石を取っているつもりが歯を削って傷を作ってしまうリスクもあります。
歯垢や歯石が付きやすくなる
自分で歯石をキレイに取り除くのには、限界があり、部分的に残ってしまいがちです。歯の表面が凸凹になるので、逆に歯垢や歯石が付きやすくなります。
歯がしみる(知覚過敏)
歯の表面のエナメル質はかたい組織ですが、スケーラーで強くガリガリと削られると薄くなります。エナメル質の内側にある象牙質という柔らかい部分が露出すると、熱い飲み物や冷たい食べ物が歯にしみるようになります。
詰め物や被せ物が外れる
スケーラーの先が詰め物や被せ物に引っかかって、外れるトラブルも起きやすいです。詰め物や被せ物が取れた状態を放置しておくと、歯の部分が虫歯になったり、被せ物が入らなくなったりします。また、歯や被せ物の状態によっては、新しく被せ物を作り直すために何回か通院が必要になるケースもあります。
歯石はそのままでもよい?トラブルのリスクも!
ご説明してきたように、自分で歯石を取るのはスケーラーであってもおすすめできません。しかし、だからといって歯石が溜まったまま放置していると別のトラブルにつながります。
歯周病
歯周病は、歯を支えている骨が溶けていく病気です。最悪の場合には、歯の周りにある顎の骨を溶かして、歯が自然に抜けてしまうほどです。
歯石は、細菌の出した排出物や死んだ細菌が固まったもので、石のようにかたくザラザラしているのが特徴です。歯石の表面がザラザラしているため、その上に歯垢が溜まりやすくなります。そうなると、歯垢の中にいる細菌が歯茎の中に侵入して、歯周病を引き起こします。
口臭
歯石があることが原因で、口臭がするようになります。
歯石が溜まっている状態は、歯垢も多く溜まりやすく、歯周病菌や虫歯菌がいる可能性が高いです。歯周病菌や虫歯菌が排出物として出す特有のガスが口の中に広がって、口臭を発生させます。
この場合、歯垢や歯石を取らない限り、口臭が改善することはありません。
虫歯の発見が遅れる
「歯垢が歯石になる」というサイクルを同じ箇所で繰り返すと、歯石が重なっていきます。ときには「歯が欠けた状態では?」と思うくらい分厚くなって、虫歯ができている部分を覆ってしまうことがあります。
虫歯は時間が経つほどに進行していくので、発見された時には症状が深刻化していることも少なくありません。
歯石は自分で取らずに歯科医院へ!
歯石は、自分で取らずに歯科医院で除去してもらうのがおすすめです。歯科医院では、歯石除去の後には、専用の薬剤で歯の表面をコーティングして、傷ついた歯の表面を整えてくれます。
虫歯や歯周病などの症状が出ると、通院する頻度が増えてしまい大変になりますので、トラブルが起きる前に歯のプロである歯科医院で定期的に除去してもらいましょう。
定期検診の頻度は歯科医院や口の状態によって違いますが、3〜6ヶ月に1回のペースが一般的です。
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記事監修:林 徹(歯科医、はやし歯科医院院長)
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