妊娠中は歯の治療に行っても大丈夫? #歯科衛生士の教室

妊娠中、歯の治療に行っても大丈夫? #歯科衛生士の教室

歯医者に通っている途中で妊娠が発覚したとき、「そのまま治療を続けてもいいのかな?」「歯の治療がお腹の子に影響でないかな?」と心配になりますよね。
そこで今回は、妊娠中の歯の治療について解説していきます。
妊娠中の方や妊活中の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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妊娠中の歯の治療は妊娠中期が安心

妊娠中の歯の治療は妊娠中期が安心
(画像出典)PIXTA

「妊娠中は歯の治療ができない」と聞いたことがあるかもしれません。
しかし、妊娠中に歯の治療がまったくできない時期というのは、基本的にありません。
ただ、妊婦さんが安心して治療を受けられるのは、妊娠中期(妊娠5ヶ月〜7ヶ月)になります。
次からは、妊娠周期別にできる歯の治療について見ていきましょう。

妊娠初期(1ヶ月〜4ヶ月)

妊娠初期は、あまり歯の治療に向いていません。
この時期は、つわりの症状や体調不良などが出やすい頃です。口の中に器具を入れるのが気持ち悪くなる人も多く、治療が難しくなります。
また、妊娠初期は、胎児のさまざまな器官が発育していく大切な頃です。もしもの場合の妊婦さんや胎児への影響も考え、緊急性がない限り、歯の治療を応急処置程度に済ませることが多いです。

妊娠中期(5ヶ月〜7ヶ月)

妊娠中期は、妊婦さんの体調が比較的安定する時期です。
つわりも落ち着き、しかしまだお腹が大きくなりすぎていないので、歯の治療がしやすくなります。この時期に、歯の治療を済ませておくのがおすすめです。

また、妊娠中は口のトラブルが起きやすいもの。特に問題がない場合でも、このタイミングで歯のクリーニングをして口を清潔に保つようにしましょう。
妊婦歯科検診を無料で受けられる自治体も多いので、活用するといいですね(追加の治療や検診の範囲を超えたクリーニングは有料になります)。

妊娠後期(8ヶ月〜10ヶ月)

妊娠後期は、お腹がさらに大きくなるので、あまり歯の治療に向いていない時期です。
歯の治療は、仰向けの姿勢で行います。仰向けは、お腹の神経や血管を圧迫して体の負担になる恐れがあります。もちろん、妊娠後期でも歯の治療はできますが、母体や胎児への負担を考えると応急処置程度に控えたほうが安心です。

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妊娠中の歯の治療で心配な3つのポイント

妊娠中の歯の治療で心配な3つのポイント
(画像出典)PIXTA

妊婦さんが歯の治療をするとき、特に心配なのは次の3つだと思います。
気になる3つのポイントについて、解説していきます。

レントゲン

歯の治療をする前は、歯や歯茎の状態を確認するためにレントゲンを撮るのが一般的です。レントゲンは、放射量が母体や胎児に影響ないのか心配になりますよね。

歯科用のレントゲンには、以下のような特徴があります。

  • 医科で使用される放射線量に比べて少ない
  • 口周りを中心に撮影するため、放射線がお腹にあたる心配はほとんどない

また、撮影時には放射線を約1/100まで減らせる防護エプロンを着用するので、安心して撮影ができると言えます。

とはいえ、妊娠中はレントゲンを控える歯医者が多いです。なぜなら、妊婦さんの不安を増やすようなことをしたくないからです。
例えば、「レントゲンは大丈夫だと説明を受けたけれど、もし赤ちゃんに影響がでたらどうしよう」と後になってから心配になる方もいるでしょう。こういった不安な気持ちは、母体や胎児に悪影響を与えることがありますし、妊娠中のストレスにもなります。

レントゲンは、よほどの緊急事態でないかぎり必須ではありません。レントゲンの影響が心配な方は、担当医に不安なことをしっかりと伝えて撮影を見送ってもらいましょう。

麻酔

歯の治療で使う麻酔は、使用量が少なく母体や胎児への影響がほとんどないと報告されています。ただ、妊娠初期と妊娠後期は、母体や胎児に影響が出る可能性を考えて、緊急性のない治療では念のため避けるのが一般的です。

とはいえ、妊娠するとホルモンバランスの変化で口内も変化していきます。その影響で突然、虫歯や親知らずが痛み出すのも珍しくはありません。
強い痛みが妊婦さんのストレスになると、お腹の赤ちゃんもストレスを感じます。痛みが強いときには、我慢せず麻酔を使って歯の治療をするケースが多いです。

なお、治療の不安を和らげる全身麻酔や笑気吸入鎮静法といった麻酔は、リスクが高いため妊娠中には使用できません。

参考資料:麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン

妊娠中は、なるべく薬を服用しないのが基本です。
歯科で処方される薬は、鎮痛剤(痛み止め)と抗生物質(化膿止め)が一般的です。
薬の種類によっては、母体や胎児に影響が出ることもあるので、薬を処方されたときには、必ず担当の産科医に確認をしましょう。

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妊娠中の虫歯や歯周病の放置は危険!

妊娠中の虫歯や歯周病の放置は危険!
(画像出典)PIXTA

妊娠中は、食事の回数が増えて生活が不規則になったり、悪阻の症状で歯磨きが不十分になったりしやすいです。そういった生活の変化は、口にも影響して虫歯や歯周病を引き起こします。特に妊娠中の歯周病の放置は、早産や低体重児出産のリスクが高まりやすいと日本臨床歯周病学会が発表しています。

歯周病の原因になる歯周病菌や炎症物質が、血流を通じて子宮や胎盤、胎児の発育に悪影響を与えて、早産や低体重児出産を引き起こすのではと考えられています。
このように妊娠中に歯周病が発症し進行すると、妊婦さんの健康だけでなく、お腹の赤ちゃんにも影響が出ることがあります。
妊娠中に歯周病がある場合には、なるべく早めに歯周病治療をするのがおすすめです。

参考資料:妊婦の歯周病と早産・低体重児出産との関連性

妊娠中に避けたい歯の治療

妊娠中に避けたい歯の治療
(画像出典)PIXTA

妊娠中には虫歯や歯周病の治療はできますが、次のような処置は避けたほうが良いでしょう。

抜歯

抜歯は、麻酔や薬の服用が必要になります。母体や胎児への安全性を考えて緊急性のない場合は、抜歯をせずに応急処置で様子を見るのが基本です。

インプラント

インプラントは、顎の骨の中に人工歯根(インプラント)を埋めて、歯のような見た目や機能を回復させる治療法です。インプラントをするには、外科手術が必要です。
インプラントは、抜歯と同様に痛み止めや化膿止めの服用が必要になるので、妊娠中は避けたほうが良い治療になります。

矯正

歯医者によっては、妊娠中の矯正治療が可能なところもありますが、基本的には妊娠中の矯正は避けたほうが良いでしょう。
矯正では骨格や歯の状態の確認をするために、レントゲン撮影が必要になるからです。
また、歯に装着する矯正装置によっては、歯磨きがしにくく清潔に保つのが難しく、虫歯や歯周病を引き起こす原因になります。
矯正治療は、妊娠中の虫歯や歯周病になるリスクを高める可能性があり、急ぎでない限りは、産前か産後にするのがおすすめです。

ホワイトニング

ホワイトニングは、歯を白くする治療です。
歯医者で使用するホワイトニング薬剤は、過酸化水素や過酸化尿素が含まれています。
これらが、気体になり鼻や口から吸い込むことで胎児の血管を詰まらせる可能性があります。母体や胎児への安全性を考えると、妊娠中のホワイトニングは、おすすめできません。

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妊娠中の歯の治療は無理せず行いましょう

妊娠中は歯の治療に行っても大丈夫? #歯科衛生士の教室
(画像出典)PIXTA

歯の治療は、妊娠中期の頃が適しています。しかし、妊娠中のつわりや体調は、個人差が大きいです。妊娠中期でも体調が悪いときには、無理に治療を受ける必要はありません。
妊婦さんとお腹の赤ちゃんを優先して、体調の良いときに歯の治療を受けましょう。
出産準備のひとつとして、妊娠中に歯の治療やクリーニングを済ませておくのがおすすめです。

記事監修:林 徹(歯科医、はやし歯科医院院長)

林徹先生

三重県津市 高茶屋小森町356-2林歯科ビル1F
059-234-0118
https://hayashi-dentalclinic.net/
小さなお子様からお年寄りまで、幅広い層の患者さまに信頼していただける医療を提供することを心がけています。

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