家庭用として使用されているガスには、都市ガスとLPガスがあります。LPガスと都市ガスは、原料だけでなく、供給方法や料金体系などが違います。
この記事ではガスを利用する際に役立つ知識を解説します。ガスの切り替えを検討している人も、ぜひ役立ててください。
目次
家庭用LPガス=プロパンガス
LPガスと都市ガスの違いを比較する前に、LPガスとプロパンガスの違いについて。結論から言えば、「家庭用のLPガス=プロパンガス」。
名称がなぜ違うのか、それぞれ何を指しているのかは、興味がある方だけ知っていればOK。
LPガスとは液化石油ガスの略称
LPガスは、液化石油ガスを表す英語である“Liquefied Petroleum Gas”の略称です。液化石油ガスとは、冷却・圧縮により容易に液化できるプロパン、ブタンなどの石油由来原料のガスのことです。
本来気体であるガスを液状にするのは、効率よく運搬するため。ガスは気体の状態よりも液体のほうがはるかに体積が小さくなるため(体積250分の1)、一度に多くのガスを運搬できるからです。実際にガスとして使用する際に、気体に戻します。
プロパンは、家庭用LPガスの主成分
家庭用LPガスにはプロパンだけでなくブタンなども含まれますが、主成分はプロパン。対する工業用LPガスの主成分はブタンです。家庭用と工業用を区別するために、家庭用LPガスに「プロパンガス」という呼称が用いられるようになりました。
都市ガスとLPガスの違い
家庭用ガスとしては、LPガスだけではなく都市ガスもあります。
家庭用LPガスとプロパンガスは実は同義だというお話はしましたが、都市ガスはまったく別物です。
主原料
LPガスと都市ガスは、そもそも主成分が違います。LPガスは液化石油ガスであるのに対して、都市ガスは液化天然ガスです。メタンやエタンを主成分として構成されています。
都市ガスの原料である天然ガスも元々は気体ですが、LPガスと同じく運搬時の効率を高めるために液化されています。マイナス162℃まで冷えることで液体となり、体積が気体のときと比較すると600分の1まで小さくなるのが特徴です。
供給方法
LPガスと都市ガスは、供給方法も異なります。LPガスはガス会社や販売店の作業員がガスボンベを契約者の自宅や店舗に届けて設置し、ボンベからガスが供給されます。都市ガスは地下のガス導管を通じて、各契約者の元へガスを供給します。
都市ガスはガス導管を引ける場所にしか供給できませんが、LPガスはガスボンベを設置すればどこでもガスを供給できます。そのため、LPガスが日本の国土の100%を網羅しているのに対し、都市ガスが使えるエリアはわずか6%程度です(都市部は人口が多いので、利用世帯数の比率では半々くらいです)。
熱量
LPガスと都市ガスでは、ガスの熱量が異なります。1立方メートルあたりの熱量(カロリー)は、都市ガスが11,000kcal、対するLPガスが24,000kcalと約2倍以上の差があります。
とはいえ、「LPガスの家庭ではお湯が2倍のスピードで沸く」ということではありません。家庭用ガス器具では出せる火力が決まっているため、LPガスでも都市ガスでも同じ要領で使えるよう調整されているのです。
業務用では、高い火力やエネルギーが必要な用途でLPガスが選ばれる場合も多いです。
ガス機器
主成分や熱量が違うため、LPガス用と都市ガス用では使えるガス機器が異なります。
ガスコンロ、給湯器、ガス暖房機、乾燥機など、ガス機器はいろいろありますが、どの機器にも「都市ガス(天然ガス、12A13A)用」「LPガス(プロパンガス、LPG)用」が明記されています。
引越しなどでガスの種類が変わった場合は、ガス機器の買い替えが必要になります。
用途
LPガスと都市ガスは、それぞれの特性を生かした用途で使われています。
ボンベで持ち運べるLPガスは、屋台などの屋外店舗での熱源、災害のための備蓄用ガスとしても活用されます。災害時には被災地ですぐに炊き出しができたり、仮設住宅でガスが使えるようになったりするのも、LPガスの可搬性のおかげ。タクシーでは、ガソリンの代替としてLPガスが燃料として使われていることも多いです。
地下のガス導管から供給される都市ガスは、家庭用ガス機器のエネファーム(家庭用燃料電池)、エコジョーズ(省エネ高効率給湯器)、ガス空調、ガスコージェネレーションシステムなど機器もさまざま。また、都市ガスは取り扱いがしやすく燃焼性が高いため、ボイラー・工業炉などの燃料転換、天然ガス自動車、船舶へのLNG燃料供給にも用いられています。
LPガスと都市ガスの料金の違いについて
LPガスと都市ガスの違いについて解説してきましたが、いちばん気になるのが料金の差。LPガスのほうが高いことはよく知られていますよね。
ここでは、料金に差が出る理由や料金体系について解説します。
LPガスには配送料・人件費がかかる
LPガスは、ボンベに入れた状態で契約者の住宅や店舗などに届ける必要があります。また、ガスボンベの運搬や設置は専門資格がいる仕事。地下のガス導管を通じて供給する都市ガスと違い、配送のための車や燃料、人件費が必要になるため、LPガスのほうが割高になるのです。
LPガスは自由料金制のため
光熱費=公共料金と思っている人もいるかもしれませんが、公共料金とはその料金決定に政府や地方自治体が関わるものを指します。
都市ガス料金は政府が認可するので公共料金。しかし、LPガスは事業者が自由に料金設定できる自由料金制なので、実は公共料金ではないんです。
そのため、かなり高めの料金設定にする業者も一部あり、平均すると都市ガスよりLPガスのほうが高くなる傾向にあります。
【補足】初期費用の分割払いで割高に見える側面も
都市ガス契約時、地下ガス導管の引き込み工事が必要な場合などに、初期費用を請求されることがあります。
LPガスでもガス検知器などの設置費用がかかる場合があるのですが、それは一括払いの初期費用としてではなく、毎月のガス料金に分割して上乗せされることが多いです。ガス料金の差ではないのですが、毎月の請求額が上がるため高く感じられる一因になります。
LPガスのメリット、都市ガスのメリット
それぞれのメリットも見ていきましょう。
LPガスのメリット
「運びやすい」「ボンベに充填されている」という特長を持つLPガスは、災害時に役立ちます。家・店舗ごとなので復旧が比較的早いですし、炊き出しや仮設住宅建設時にもすぐにガスを供給することができます。
災害に備えて、LPガスボンベを備蓄している公共施設も多いです。
また、LPガスは燃焼時の二酸化炭素発生が少ないという特長があり、環境に優しいエネルギーとして注目されています。
都市ガスのメリット
都市ガスのメリットは、なんといっても料金の安さです。家の外観を気にする人にとっては、ガスボンベを置く必要がないことも、メリットと言えるかもしれません。
LPガスと都市ガスの違いを知っておこう
ガスボンベさえあればどこでも使用できるLPガス。ガス料金が高いというデメリットもありますが、災害時のことを考えると安心感もあります。
自由料金制であるLPガスは、ガス会社によって料金もさまざま。高いなと感じる場合は、まずはガス料金の比較から始めてみてください。