一時期、15ヶ月待ちの高級鍋として話題になった「バーミキュラ」。いまは無水調理鍋だけでなく、ごはんを炊くためのライスポットも大人気ですね。
さて2019年12月3日、バーミキュラ製造元の「愛知ドビー」が、ブランド体験型複合施設「バーミキュラ ビレッジ(VERMICULAR VILLAGE)」を名古屋にオープンさせました。
バーミキュラをもっと楽しむための施設で、ビレッジ限定サイズのバーミキュラの販売やバーミキュラで焼いたパンがあり、レストランがあり、食にまつわる本のライブラリーがあり、ゆくゆくは料理教室やトップシェフによる出張料理イベントも……
と聞くと、バーミキュラ愛用者ならずともワクワクするはず!
どんな想いで作られた、どんな施設なのでしょう。
【第一部】愛知ドビーとバーミキュラについて
【第二部】最高のバーミキュラ体験を。バーミキュラ ビレッジについて
【第三部】3代目のお二人がバーミキュラ ビレッジに込めた想いと未来像
三部構成でご紹介していきます。
バーミキュラをよく知っている方は第二部から、バーミキュラもバーミキュラ ビレッジもよく知っている方は第三部から読んでいただいても結構です。
目次
【第一部】愛知ドビーとバーミキュラについて
まずは、バーミキュラと製造元の愛知ドビーについての説明から。過不足なくお伝えするため、公式サイトを引用しますね。
愛知ドビーは、1936年に愛知県名古屋市で創業された老舗鋳造メーカーです。
https://www.vermicular.jp/aboutus/company/
3代目の兄弟の「町工場から世界最高の製品を作りたい」という思いから生まれたのが、メイド・イン・ジャパンの鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」です。
「手料理と、生きよう。」をブランドスローガンに掲げ、素材本来の味を楽しむライフスタイルを通じて、世界中に手料理のある暮らしの素晴らしさをお届けする事がバーミキュラブランドの使命です。
これが、2010年に誕生したバーミキュラのオーブンポットラウンド。
- 1500℃の鉄を溶かして鍋の形を作る鋳造
- 0.01ミリ以下の精度で鍋を精密に削る精密加工
- ガラス質の釉薬を吹きかけ、800℃で焼き付けるホーロー
高度な技術を要する3つの工程を駆使して作られているため密閉性が高く、素材の水分だけで調理できる「無水調理鍋」です。無水で作るカレーのおいしさが評判になって一躍有名になりました。
2016年には、「重要なポイントである火加減を自分で調節しなければならない」というバーミキュラ調理の課題を克服したライスポットを発売。
鍋炊きごはんのおいしさを自動調理機能で実現した製品で、炊飯だけでなく定番になりつつある低温調理も可能です。
ライスポットは発売を発表した時点で大ニュースになり、発売前から4ヶ月待ちになるほどでした。
愛知ドビーの3代目である土方邦裕社長(右)と土方智晴副社長(左)の前職は、商社と自動車メーカー。廃れかけていた家業を継ぐにあたり、邦裕社長は鋳造、智晴副社長は精密加工の技術を身につけて自ら職人となり、業績を大幅に改善させることに成功します。
しかし、お二人はそれでは満足しませんでした。
自分たちが幼いころから見てきた職人さんたち。彼らにかつての誇りを取り戻してもらうには世界に誇れるメイド・イン・ジャパンのBtoC(個人消費者向けのビジネス)しかない、という結論に至り、鋳物ホーロー鍋を作ることを決意。1万回以上の失敗を重ね、3年という年月を経てバーミキュラを完成させました。
15ヶ月待ちという記録を作ったのは、発売から4年目の2013年のこと。いまや増産体制が整って待ちもなくなり、バーミキュラの取扱店は全国47都道府県を網羅しています。
【第二部】最高のバーミキュラ体験を。 バーミキュラ ビレッジについて
2019年12月3日、3代目のお二人の念願であった「バーミキュラ ビレッジ」が愛知ドビー創業の地である名古屋市の中川運河沿いにオープンしました。
物販・教育業態の「スタジオエリア(STUDIO AREA)」と飲食業態の「ダインエリア(DINE AREA)」から成る体験型複合施設で、コンセプトは「最高のバーミキュラ体験を。」。
バーミキュラをもっと知れる「スタジオエリア(STUDIO AREA)」
スタジオエリアは、バーミキュラをより深く知るためのエリア。バーミキュラを買おうかどうか迷っている人やなんとなく興味があるだけという人でも気軽に訪ねられる施設です。
カスタマーサポートセンター
「カスタマーサポートセンター(VERMICULAR OWNERS DESK)」にはバーミキュラを知り尽くしたコンシェルジュが常駐しており、バーミキュラに関する困りごとや悩みごとは何でも相談できます。末永く使うためにホーローを張り替えるリペアサービスも、こちらで申込できますよ。
フラッグシップショップ
ビレッジ限定サイズを加えた16種類のバーミキュラを実際に手に取ることができるのが「フラッグシップショップ(VERMICULAR FLAGSHIP SHOP)」です。※一般販売はライスポット2サイズを含めた計7種類。
手前は食パン用のスクエア型。ずらりと並ぶ大小のバーミキュラは、いつまでも眺めていたくなるフォルムです。
調理器具やテーブルウェアも魅力的で、バーミキュラと一緒に使いたくなるものばかり!
バーミキュラを知り尽くしたコンシェルジュが実演をしたり、自分で使い勝手を試してみたりすることもできます。
■営業時間:平日10:00~20:00、土日祝9:00~20:00 水曜定休
■TEL:052-746-3330
クックブックライブラリー
バーミキュラを通して、もっともっと新しいクリエイティブが生まれるように……
そんな想いから、食にまつわる本を中心に3,000冊の本を集めたコーヒーショップ付きのライブラリーが「ブックストア/コーヒースタンド(COOK BOOK LIBRARY)」。コーヒーやバーミキュラで焼き上げた焼き菓子とともに、読書を楽しめますよ。
ここで見るだけでは我慢できず、買いたくなってしまう本が多い!食いしん坊な本好きさんは要注意です。
ラボラトリー
「ラボラトリー(LABORATORY)」 は、世界のトップシェフのために専用バーミキュラを開発する工房です。小さいながらも鋳造・精密加工・ホーローというバーミキュラ製造の一連の機能を持っています。定期的に製造実演やワークショップも開催される予定だそうですよ。
こちらは、グランドオープン前の記者発表の場で披露された鋳造技術。
1500℃の鉄を型に流し込み、バーミキュラが型から生まれ出てくる様子を目の当たりにすると、予想していた以上に感動します。
ものづくりとは、こういうことだったのか……!
長年の経験があっても、ごくわずかなズレで、こんなふうに失敗してしまうこともあるのだそう。バーミキュラを作る難しさが伝わる姿です。
※製造実演とワークショップは、2020年1月以降順次開催予定。
料理教室
ラボ同様、2020年にスタート予定なのが「料理教室(KITCHEN STUDIO)」。
バーミキュラのコンシェルジュや専属シェフによる教室や親子料理教室、さらにはバーミキュラを愛用している世界のトップシェフによる特別講義が開催される可能性もあるそうです。
■Touch&Cook(料理実演・試食会)
定員:8名~20名(予約可)
■料理教室
定員:8名(教室内容により異なります)
※要予約
※2020年1月以降、順次開催予定。
スタッフのためのアトリエやスタジオも
新製品や新レシピの開発を行うためのアトリエや、新レシピの写真や動画の撮影を行うためのスタジオも、スタジオエリア内にあります。
一般開放されない場所なら関係ないと思うかもしれませんが、実は違います。
バーミキュラを手に取るお客様と職人を始めとするスタッフが近しい距離で過ごせるように。そしてそのことが、スタッフのさらなる誇りと意欲につながるように。
愛知ドビー本社に近い中川運河にバーミキュラ ビレッジが誕生したのは、それも大きな理由。スタッフ専用施設が併設されていることは、意図的なものです。
バーミキュラの食の世界観を体験できる「ダインエリア(DINE AREA)」
スタジオエリアから120mほど南にあるのが、レストランとベーカリーカフェのあるダインエリア。モーニング・ランチ・ティータイム・ディナーと、1日を通してバーミキュラ料理を味わうことができます。
レストラン
中川運河を臨むテラス席が気持ちいい、バーミキュラ ビレッジのメインダイニング「バーミキュラ レストラン ザ ファウンダリー(VERMICULAR RESTAURANT THE FOUNDRY)」。
とにかくバーミキュラ尽くしで、ソフトドリンクやカクテルにもバーミキュラで調理したフルーツを使っているほどです。
とはいえ、単にバーミキュラを使っているだけではありません。バーミキュラで調理したお料理を薪窯で仕上げるなど、新しいヒントに富んでいます。
モーニングは、専用のバーミキュラで焼いたカンパーニュのタルティーヌ。バーミキュラでカンパーニュをカリッと焼いてあり、トッピングは見た目よりも甘さ控えめです。
サラダには無水調理して甘さを引き出したにんじんが入っています。にんじん嫌いだった邦裕社長をにんじん好きに変えたという、バーミキュラの伝説ともいえるにんじんです。
すべてのメニューにライスポットで炊いたごはんが付くランチ。
カレー用の黄色いレモンライスもライスポットで炊いてあります。豚のすね肉が溶け込んだカレーとの相性は抜群!
見た目は一般的なターメリックライスのようですが、似て非なるもの。「ターメリックライスより白飯派」という方も、一度はレモンライスを試してください。
ディナーはアラカルトでご自由に!
ちなみに楕円形のバーミキュラも、高い技術の結晶。密閉度を高めるのが円形よりずっと難しいため今まで販売されていませんでしたが、ビレッジ限定で販売されます。すごい!
※食事の盛り付けや使われるバーミキュラ・食器は、変更されることがあります。
■営業時間:
モーニング8:00~10:30(L.O 10:00)、ランチ11:00~14:30(L.O 14:00)、ティー14:30~16:30(L.O 16:00)、ディナー17:30~22:00(L.O フード 21:00/ドリンク 21:30)
※日・月・火は21:00クローズ(L.O フード 20:00/ドリンク 20:30)
■定休日:水曜
■予約:2019年12月現在はコースのみ予約可
■TEL:052-355-6800
シェフズテーブル
レストランの2階は、キッチンを囲むカウンター席のある特別な空間「シェフズテーブル(CHEF’S TABLE)」。こちらは、世界のトップシェフが腕を振るうイベントのためのスペースです。
バーミキュラ ビレッジでしか味わえない特別なレストランのお料理、料理教室同様に想像するだけで心が浮き立ちますね。
ベーカリーカフェ
レストランの隣の建物は、すべてのパンをバーミキュラで焼き上げるベーカリーカフェ「バーミキュラ ポットメイドベーカリー(VERMICULAR POT MADE BAKERY)」。
バーミキュラの数は約800個とのことですので、おそらく愛知ドビーにしかできないベーカリーでしょう。
施設の厨房ができてからレシピ開発していては間に合わないということで、会社の食堂で試作を重ねてオープンを迎えたのだそうです。
パンの丸いフォルムを引き立てる包み紙も愛らしく、人気の手土産になりそうですね。
バーミキュラで調理した無水カレーを詰めた焼きカレーパンは、名物になること間違いなし!カフェメニューにはシチューもあり、中川運河に面したテラス席でもいただくことができます。
角型の食パンは「バーミキュラの食パン」と「バーミキュラのあん食パン」の2種類。スタジオエリアの段落でご紹介した、専用のバーミキュラで焼かれています。
■営業時間:平日10:00~18:00 土日祝8:00~18:00
■定休日:水曜
■TEL:052-355-6801
クリエイターの英知が結集したビレッジ
バーミキュラ ビレッジは、愛知ドビーだけで実現した施設ではありません。
3代目のお二人が信頼する各界のトップクリエイターが参加しているのです。設計やインテリアからロゴ、グリーン(植物)に至るまで適当に選ばれたものはひとつもありません。
例えば、レストランとベーカリーカフェを運営しているのは「bills(ビルズ)」や「シアターテーブル」を手がける「TRANSIT GENERAL OFFICE INC.(トランジットジェネラルオフィス)」。
ユニフォームは「OUTIL(ウティ)」。
ちなみに写真右、職人さん用のジャケットは他のスタッフも着たがったので追加発注し、いまでは愛知ドビーの制服のような状態になっているとか。
レストランで使われる岐阜県土岐市の美濃焼の窯「SAKUZAN」の食器やアートワークを手がける「ブロックショップテキスタイル」など、一部商品はフラッグシップショップでも購入できますよ。
【第三部】3代目のお二人がバーミキュラ ビレッジに込めた想いと未来像
元は繊維機械のメーカーだった愛知ドビーは、大きく栄えたのち一度は衰退し、そしてバーミキュラによって再度復活を遂げました。そして、愛知ドビー本社に近い中川運河もまた、栄えたのちに衰退し、美しい景観が再度注目を浴びています。
土方智晴副社長は自社と中川運河の来歴を重ね、だからこそここに作りたかったと語りました。
――日本中、いや世界中で人気のバーミキュラのフラッグシップショップです。東京にあったらお客さんが殺到してすごいことになると思いますが、「東京」という案はなかったんでしょうか。
なかったです 。
――本当に!?ご兄弟で意見が割れることもなかったんですか?
なかったです。
中川運河と愛知ドビーはこの地で同じように歩んできましたから、ここに作らないと意味がないんです。それに自分たちの目の届くところでなければ、品質を保てません。
――そこに迷いはまったくなかったんですね。それは(記者発表の場でのご挨拶にあった)「スタッフが暮らすように働く場所」というお話にも通じるんでしょうか。
(お二人が大きく頷く)
――でも正直、「暮らすように働く」というのがどういうことか理解しきれていません。ともすれば、会社で寝泊まりしているような姿も浮かんできてしまうのですが……
ちょっと前まで言われていた『ワークライフバランス』はもう古くて、これからは『ワークアズライフ』の時代です。仕事と生活のバランスではなく、暮らしの一部として仕事があるということ。夢中になれること、楽しくできることでなければ、クオリティの高いものは作れません。仕事とプライベートの境目はなくなってもいいんです。もちろん、仕事以外を犠牲にしろという意味ではないですよ。
智晴副社長の説明で、「中川運河でなければならない」「スタッフが暮らすように働ける場所を作る」という言葉の意味が、遅まきながらイメージできてきました。レストランがランチやディナーだけでなくモーニングやティーがあるのも、暮らしに根付いた施設だからなのでしょう。
――さて、バーミキュラ ビレッジは中川運河再生計画事業だったとのことですが、構想に何年くらいかかったのですか?
7~8年前ですかね。
事業より先に構想はあったんですよ。でも、優先度の問題でなかなか進められなかったんです。ビレッジよりライスポットが先だろう、みたいな感じで。でもライスポットが完成して、ようやく具体的に考えられるようになりました。で、ビレッジを作るならこの地を再生させたいという想いもあったので『中川運河再生計画』で検索してみたんですよ。そしたら、既にその計画があって、公募が始まっていたんです。それで応募して、うちを選んでいただきました。
――偶然検索して公募を見つけるなんて、そんなことが実際にあるのですね!
それにしても、本当に素敵な施設です。でも、お二人ともに飲食業とは無関係な経歴ですよね。「鍋を作ろう」という案が出てそれを完成させるところまではなんとか想像がつきますが、各界のクリエイターが結集するようなブランドになるまでに、どんな道のりがあったのでしょうか。
それはもう、一歩一歩。一つひとつ、です。
デザインもわからないし、webサイトもSNSもわからないし、レシピやレシピ本の作り方もわかりませんでした。ひとつずつ勉強しながら満足できるようにやってきました。
――そんな地道な歩みだったんですね。そういえば気になっていたんですが、VERMICULARの刻印があるドアノブや箸置きって……
すべて、愛知ドビーの工場で鋳型から作っています。
――やっぱり!
門柱や駐輪場もですよ。
――なんと!そこまで徹底していらしたんですね。
では最後にちょっとネガティブな質問になりますが、『重い・高い』でバーミキュラ購入を迷っている方へメッセージをお願いします。
高い買い物をして使わないままになったら、と思うと心配ですよね。そういう方のために作ったフラッグシップショップですから、ぜひ来てください。バーミキュラが自分のライフスタイルに合うかどうか、実際に体験して確認していただきたいですね。
まとめ
3代目のお二人の長年の構想がついに実現して生まれた、バーミキュラ ビレッジ。
記者発表の場で智晴副社長が語った「10年後にも新鮮で、100年後にも残るように、自分たちにできることを」という言葉を裏付けるような、最新でありながら地に足のついた、堅実なものづくりの現場でした。
バーミキュラ ビレッジの基本情報
■ダインエリア(南側)
住所:愛知県名古屋市中川区舟戸町4 運河沿い
駐車場:35台(内軽自動車用3台、身障者用1台)
■スタジオエリア(北側)
住所:愛知県名古屋市中川区舟戸町2 運河沿い
駐車場:29台(内軽自動車用1台、身障者用1台)
■アクセス:
<電車>
名古屋駅より名鉄「山王駅」下車、徒歩約14分
名古屋駅よりあおなみ線「ささしまライブ駅」下車、徒歩約15分
<バス>名古屋駅より名古屋市営バス幹名駅2「小栗橋」下車、徒歩約1分
<車・タクシー>名古屋駅 太閤通口より約5分
■公式サイト
バーミキュラ:https://www.vermicular.jp/
バーミキュラ ビレッジ:https://www.vermicular.jp/village/
【当記事につきまして】
hitotema編集部が企画・取材依頼し、メディア内覧会にご招待いだたいて記事を作成しました。