お菓子の箱がアートに変身!空箱職人はるきるさんに直撃インタビュー

お菓子の箱がアートに変身!空箱職人はるきるさんに直撃インタビュー

「最近お菓子の空箱が次々とすごいことになっているらしい」

そんな噂を巻き起こしているのは、新進気鋭の工作作家・空箱職人はるきるさん(@02esyraez4vhr2l)。新作をTwitter に投稿するたびに毎回何万・何十万のRTやいいねがつく人気作家さんです。その作品の魅力や制作のモットー、作品の見どころや特に試行錯誤した点などを、インタビューを通じてご紹介します。

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君はプリングルズおじさんを見たか?お菓子の空箱がすごいことになった!

プリングルズおじさん1
プリングルズおじさんが立ち上がった⁈ 5人そろって決めポーズ!(写真提供:はるきるさん)

えっこれって何?
プリングルズおじさんの人形?

のほほんのんびりとした表情が特徴のプリングルズおじさん、お顔が丸いからお腹もでっぷりしているかと思いきや意外とスリムでダンディー。しかしよくよく見ると、背広の端々に文字やイラストが見え隠れ。

この感じはもしや……?

そうです!
こちらのプリングルズおじさん、材料はすべて実際に販売されている「プリングルズ」の空箱。こちらはお菓子の空箱で作られた空箱アート作品なのです。

プリングルズおじさん2
プリングルズおじさんと、その元となったパッケージ。一人一人のおじさんの性格まで違いそう!

それぞれの元となった「プリングルズ」のパッケージはこちら。並べて見ると確かに顔がパッケージそのまま、背広もパッケージと同じ色です。でも服のクオリティが普通の紙工作とはとても思えないリアリティーだし、プリングルズの箱の上に乗ってこの大きさということは革靴のヒモや手の細かさは二度見するレベルだし、自立もした上に余裕を感じるポージングまでさらりととってみせるとは!

お菓子の箱のビフォー・アフターとして「こんな発想があるとは!」「この完成度の高さって!」の両方の意味で驚いてしまう、はるきるさんの空箱アート。さらには丸顔のプリングルズおじさんをスタイリッシュに仕上げてしまうような、既存のイメージを崩さないままに軽くひねりを利かせたユーモアがまた面白く、日に日にファンを増やしているのです。

リッツ・コアラのマーチ・メルティキス・アポロ
【左上】ナビスコ「リッツ」の空き箱が幻獣に!過去最多の7箱を使用したとのこと。【右上】ロッテ「コアラのマーチ」でコアラがマーチを!【左下】冬枯れの木のブランコで、小鳥が雪だるまへ贈るとろけちゃいそうな明治「メルティキス」。可愛い!【右下】明治「アポロ」ロケット、月面まで飛ぶに違いない!

「プリングルズ」だけではなく数々の空箱が、人形だけではなく様々な形の作品へと変身します。
誰もが知っているお菓子の箱、だけどお菓子を食べたら捨てるだけの箱。それを誰も見たことのなかったアート作品へと生まれ変わらせているはるきるさん。
作品はすべて一つひとつ違った世界観。元となるお菓子のパッケージそのもののイメージが形となり、時にはファンタジー、時にはメルヘンと、作品ごとに新しい世界が出現するのです。

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作った人:空箱職人はるきるさんって?

「空箱職人はるきる」こと、河口晴季さん。空箱作品は全て一人で作っているそう。(写真提供:はるきるさん)

はるきるさんが最初にお菓子の空箱で作った作品を発表したのは2017年。明治「ザ・チョコレート」の空箱で作ったロボットで、ツイッターで大きな話題となりました。その後2018年9月に空箱作品第二段・ブルボン「アルフォート」の宇宙に浮かぶ船を発表したところ16万5千以上の「いいね」を集め、一躍人気作家に。現在(2019年)は神戸芸術工科大学アート・クラフト学科の4年生、大学生兼空箱職人として活躍しています。

空箱「職人」というとなんとなく、黙々と作品を作り続ける……みたいなイメージがありますね。でもご本人は人当たり柔らかく優しい雰囲気のお兄さん。「『空箱アーティストはるきる』でも良かったんですが、それだと名前の文字数が長いなと思って。それで『空箱職人』にしました」と笑いながら話してくれました。またはるきるさんのお名前は、本名「はるき」さんが貼って切るから「はるきる」さんとのこと。

待望のYouTubeチャンネルも開始!

この作品たちは、一体どうやって作ってるの?

その謎は2019年10月にYouTubeで公開されました。制作中の作品写真などはあまり撮らないというはるきるさん。初めて制作の全過程を公開したのがこちらの動画なのです。

使っている道具は、セロハンテープ、カッター、カッターマット、ハサミと接着剤。特別な道具などは一切使いません。誰にでも使える普通の道具で、どこにでもあるお菓子の空箱が誰も見たことのない作品へと変身してしまうのが、はるきるさん作品の面白いところですね。

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制作モットーは「空箱以外の材料は使わずに、元のデザインやイメージを活かして面白いものを作ること」

マリービスケット
木につるされた小部屋でお茶とビスケットを楽しむ女の子。小部屋の表札はもちろん「マリービスケット」!(右側の写真提供:はるきるさん)

今も増え続けているはるきるさん作品、その制作ペースは現在2週間に1作品ほどです。

取材時(2019年10月)の最新作は、40作品目の森永製菓「マリー」。マリーとイラストレーター・おおでゆかこさんがコラボレーションした限定パッケージを使用した、優しい風合いのイラストをそのままに活かした可愛らしい作品です。

ではその制作の内側とは?
いくつかの作品について、はるきるさんのコメントを伺っていきましょう。

人気の火付け役となった、ブルボン「アルフォート」

アルフォート
イメージぴったり!宇宙に浮かぶ船!

元となるお菓子のイメージを裏切らない世界観だけでなく、観る人の予想を一歩超えるようなモチーフや遊び心が取り入れられているのがはるきるさん作品の特徴です。

できる限りメルヘンやファンタジーなどをイメージに取り入れた、夢のあるものを作りたいと思っています。アルフォートの船とかも、普通に帆船でも良かったんですが、空を飛ばしたら夢があるなって思って。宇宙に浮かぶ船にしました。

ロッテ「チョコパイ」がメルヘンな街並みに!

チョコパイ
橋の上には、パッケージを流れる川を見下ろす人たちの姿も

一つひとつが異なる作品のイメージは、一体どこから湧いてくるのでしょうか。はるきるさんにお伺いしたところ、「すべてお菓子のパッケージから連想しています」とのこと。

スーパーで実際にパッケージを手に取って眺めてみて、作品が面白くなるようにとあれこれその場でイメージを膨らませて。それでいいのを思いついたら購入します。売り場に長居してしまうので、あの人ずっとあそこにいるな、なんて思われているかもしれません(笑) 。

ロッテ「トッポ」は空中に浮かぶ城へ変身!

トッポ
白い城壁とチョコレート色の屋根のコントラストも素敵ながら、左右非対称なのに自立するバランス感覚がすごい!

はるきるさんの空箱作品はすべて立体。作品として仕上げるために、補強材などに一部違う材料を取り入れたりすることは……と訊くと、「いえ、ありません」ときっぱり。

僕の作品は材料に空箱を使うというところが特徴なので。モットーとして、その空箱以外の材料は使わない、というのがあります。そこをありにしちゃうと、何でもありになっちゃうので。この箱以外の材料は使わないという制約の中で、そのパッケージのデザインだったりイメージだったりを活かして、面白いものを作っていきたいなと 。

質問!これまで特に作るのが大変だった作品は?

ミルキー・どん兵衛・チョコボール・ビスコ
【左上】不二家「ミルキーチョコレート」ではペコちゃんが美少女に成長。【右上】日清「どん兵衛」サムライ“斬り捨て御麺”。お揚げの笠が“ふっくら”してるのがまたいい。【左下】森永製菓「チョコボール」のキョロちゃんが本気出した!【右下】おいしくてつよくなる、グリコ「ビスコ」の強さの方向性がまさかのそっち!

ペコちゃんかな……。普通ならパッケージに書かれた顔のイラストはそのまま平面で使うんですが、この時は平面に書かれたぺこちゃんの顔を立体にしてみようと思って。これが難しかったんですよね、頑張ってもなかなか可愛くならなくて苦労しました。

ちょっと意外な答え!

空箱アートのさらなる細部をご覧あれ

見慣れたお菓子の空箱が変身する面白さ、作品モチーフのイメージの豊かさも魅力ながら、やはり惚れ惚れするのがこの工作作品としてのクオリティの高さ。細かい部分まで丁寧に作られた作品からは、専門家でなくてもその技術のすごさを伺い知ることができます。

一際目を惹く「シーバスリーガル」!

シーバスリーガル
「世界で最も飲まれているスコッチ・ウイスキーのひとつ」と言われる「シーバスリーガル」の空箱が、凛々しい西洋の騎士に!(右上の写真提供:はるきるさん)

お菓子以外の箱を使った作品も続々と登場しています。
数ある作品の中でも、特に目を惹くのが「シーバスリーガル」。モチーフや細部についてお伺いすると、「箱の銀色がかっこよかったんで騎士にしました」とはるきるさん。

注目ポイントは?
そして、甲冑の手足のリアルさなど、まるで実際に動かすこともできそうに思えてしまいますが、これは……?

剣先よりも剣の手元の辺りに注目してもらえたらと思います。柄にYEARSのロゴが来るように使っていたり、胸元にロゴを使っていたりするので。手足は、固定されています(笑) 。

合計16箱使用の大作!ロッテのチョコレート「シャルロッテ」

シャルロッテ
4色を4箱ずつ、合計16箱が使われている。

それぞれの作品は1種類のお菓子の空箱から作られますが、こちらの「シャルロッテ」は同じお菓子の味違いとなる4種類のパッケージを使用した作品。スイーツタイムを楽しむ人たちやパティシエの姿、階段によって段差のある構造となった街並みまで、一つの世界が作り込まれています。カラフルな風景からは焼き立てのお菓子の香りまで漂ってきそうですね。

この作品は元のパッケージを立体として使用しています。色の違う4種類のパッケージを4箱ずつ、建物ごとに屋根や窓も形を変えて。またパッケージから人物のイラストを切り抜いて配置しているんですが、奥行きとか、窓際の立体感とかもぜひ見てもらいたいポイントです 。

小さな窓の奥に小さなパティシエを覗き見ることができるこの仕様、すごい!

ライトアップで幻想的に……。森永製菓「ムーンライト」

ムーンライト
森永製菓の人気クッキー「ムーンライト」は、ブルーのパッケージがブルーの塔に!

はるきるさんがご自身で一番お気に入りの作品が、この「ムーンライト」だそう。

時計塔と月の幻想的な世界です。よく見ると時計の文字盤は「MOONLIGHT」の文字。屋根の上ではシルクハットの紳士が腰かけて夜空に月を吊るしており、吊るされて揺れている三日月には天使の姿が。
『お菓子の箱で作る夢の世界展』では、ライトアップされて展示されました。

元の商品の名前がムーンライトですので、そこから月のイメージで。自分の中で、デザインがすごく気に入っている作品です

はるきるさんの作品は、どれも元になったパッケージの商品に愛情が感じられるものばかり。普段何気なく手に取るお菓子を改めて楽しめるだけでなく、元となるお菓子への優しい目線や遊び心を夢のあるモチーフを通して感じ取ることができるのが、はるきるさんの人気の秘密かもしれません。

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はるきるさんの空箱作品を、見て楽しむ?作って遊ぶ?

名古屋パルコ
『お菓子の箱で作る夢の世界展』名古屋パルコ会場。18日間で7000人以上が来場!

現在どんどん活躍の場を広げているはるきるさん。2019年には神戸三宮で初の個展を開催、次いで名古屋・池袋で『お菓子の箱で作る夢の世界展』が開催されました。ツイッターで大人気の作品を実際に見られる機会とあって、会場は満員御礼!

2019年7月には初の書籍『お菓子の箱だけで作る空箱工作』も出版されましたよ。こちらは空箱作品を見て楽しむだけでなく、実際に空箱アート作品を作ることができる本です。

小学生の方でも空箱工作を楽しめるように、手順や型紙などわかりやすく載せています。初めて作ってみたい方、あまり工作が得意でない方へも、楽しんで作っていただけるかなと思います 。

空箱アートが気になった方、見るだけでなく作る方もぜひ楽しんでみては?

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