スポンジケーキ作りは、卵の泡立て具合や粉の混ぜ方、型への流し込みなど、たくさんのコツを押さえる必要があります。何度作っても納得のいくスポンジケーキができない方は、一度基本を見直しましょう。
この記事では、製菓衛生師の資格を持つ筆者が、よくある失敗の解決法や鉄板レシピなどを解説していきますので、スポンジケーキ作りの参考にしてください。
目次
スポンジケーキの種類と使い分け
スポンジケーキは、大きく分けて2種類あります。
ジェノワーズ生地

全卵を一緒に泡立てる“共立て法”で作る生地は、ジェノワーズ生地と呼ばれます。ジェノワーズ生地は、キメが細かくしっとりとした食感が特徴。
ショートケーキやロールケーキなど、どんなケーキやクリームとも相性がよく日本で最も使用頻度の高いスポンジケーキです。
ビスキュイ生地

卵白と卵黄を別々に泡立てる“別立て法”で作る生地は、ビスキュイ生地と呼ばれます。
ジェノワーズ生地よりも空気を多く含むため、外はサクッと香ばしく、中はシュッと溶けるような軽い食べ心地です。
生地に流動性がほとんどないので、しぼり出せるのも特徴。この特徴を生かし、シャルロットケーキやブッセ、ティラミスなどに使用されます。
必要なキッチンツール
では次に、スポンジケーキ作りに欠かせないキッチンツールを紹介します。
絶対必要なキッチンツール

必ず必要なものは、
- キッチンスケール
- ハンドミキサー
- ボウル
- ゴムベラ
- 粉ふるい
- ホールケーキ型
です。
ふんわりとしたスポンジケーキを作るために最も重要なポイントは、卵の泡立て具合です。
ハンドミキサーではなく手持ちのホイッパーを使うこともできますが、男性でもかなりの労力と時間を使います。また泡立つまでに時間がかかると、せっかく適温にした温度が下がってしまったり、泡が潰れて泡立て不足になりがちです。
ハンドミキサーがあれば、素早く生地を良い状態にすることができますし、高速・中速・低速など速度を細かく設定して生地のキメを整えるのにも役立つので、今回は「絶対必要」に入れました。
ホールケーキ型のサイズと分ける人数の目安
号数 | 直径 | 人数 |
4号 | 12cm | 2〜4人 |
5号 | 15cm | 4〜6人 |
6号 | 18cm | 6〜8人 |
あると便利なキッチンツール

下記のものは絶対に必要なものではありませんが、スポンジケーキをよく焼く方は揃えてみてください。
- ケーキクーラー:焼きあがったケーキを冷ますための道具
- スライサー:均一な高さにスライスするための道具
- ハケ:スポンジにシロップを塗るための道具
- キッチン用温度計:温度を正確に測るための道具
基本の材料と役割

失敗しないためには、材料の役割をきちんと知ることが大切です。
卵
卵白に含まれるたんぱく質は、空気を抱え込み泡立つ“気泡性”という作用があります。
さらに卵は熱を加えることで凝固するので、しっかりと泡立った卵が入った生地をオーブンで焼き上げることで、ふわふわとした食感のスポンジケーキができるのです。
薄力粉
薄力粉に水と力が加わると、グルテンというたんぱく質が作られます。グルテンは、粘りと弾力のある物質で、膨らんだ生地を支える骨格の役目をします。
また、スポンジケーキのもちっとした弾力もグルテンのおかげです。
砂糖
最も大きな役割は、甘みをつけることです。
その他にも、卵の余分な水分を吸収し泡立ちをよくする、生地中の水分を抱き込みしっとりとした食感にするといった役割も担っています。
バター
バターの主な役割は、コクとしっとり感を与えることです。
牛乳
水分量を増やすことで、口溶けがよくなります。
フレーバー
ココアパウダーや抹茶を混ぜ込むことで香りや味をつけます。
プレーンのスポンジケーキのレシピにフレーバーを加える際は、必ず薄力粉の分量からフレーバー粉の分量を減らします。
置き換えの目安は以下の通りです。
フレーバーの種類 | 置き換えの目安 |
ココアパウダー | 薄力粉の20% |
抹茶 | 薄力粉の5% |
いちごパウダー | 薄力粉の5% |
フレーバーをつけるときは、事前に薄力粉とよく混ぜ合わせふるっておくことがポイント。そうすることでムラなく均等に混ざります。
よくある失敗「膨らまない」の原因と解決方法
スポンジケーキで一番多い「膨らまない」という失敗はなぜ起こるのかを解説します。
卵の泡立て不足
最も多いのは、卵の泡立て不足です。ジェノワーズ生地とビスキュイ生地、それぞれ泡立てのポイントを紹介します。
ジェノワーズ生地
卵液の温度を36度前後まで上げると泡立ちやすくなるため、湯煎にかけながら泡立てます。温度は、キッチン用温度計を使う、または手の甲に卵液をつけ人肌くらいであることを確認しましょう。
生地を持ち上げたときにリボンのような帯状で流れ落ち、落とした生地の跡がしっかりと立体的に残る状態(リュバン状)になるまで泡立てます。

ビスキュイ生地
卵白は泡立てる直前まで冷蔵庫に入れてしっかりと冷やした状態で泡立てます。
また、砂糖を最初に入れると空気が含まれにくくなり泡立ち不足になるので、白っぽくもったりするまで泡立ってから数回に分けて砂糖を入れるのもポイントです。

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薄力粉を入れた後の混ぜすぎ・混ぜ不足
薄力粉は、混ぜすぎるとグルテンが必要以上に出て粘りがある生地になり膨らみません。また、混ぜすぎると気泡も潰れるので、膨らみ不足の原因になるのです。
ただ、混ぜ不足の場合も生地のキメが整わず、均等に膨らみません。薄力粉を入れて混ぜると、ツヤが出て滑らかになる瞬間があるので、それを見極めましょう。

型に入れる時に気泡を潰している
せっかくいい状態の生地ができても、型に入れる時にゴムベラで何度も触ったり高すぎる位置から生地を落とすとどんどん気泡が潰れます。
これを解消するためには、あらかじめボウルを傾け生地を一箇所に集めてゴムベラで触る回数を最小限にし、低い位置から一気に流し込むことが大切です。
オーブンの温度が低い
低い温度で焼くと生地が持ち上がらず膨らみが悪くなります。家庭用の電気オーブンは小さいため、ドアの開閉で庫内の温度が下がってしまいます。
焼成温度よりも10度ほど高めの温度で予熱をし、生地を庫内に入れてから温度を下げて焼き上げましょう。
失敗しにくい!スポンジケーキのテッパンレシピ
使用頻度の高い、ジェノワーズ生地のレシピを紹介します。各工程のポイントも記載しているので参考にしてください。
材料(5号ホール型)

- 卵 2個
- 砂糖(グラニュー糖) 85g
- 薄力粉 75g
- 牛乳 25g
- バター 20g
下準備
- 卵を常温に戻す
- ホールケーキ型に型紙を敷く
- 薄力粉をふるう
- バターと牛乳を耐熱ボウルに入れてバターが溶けるまで湯煎にかける
- オーブンを190度に予熱する
作り方
1ボウルに卵を割り入れ、ほぐします。湯煎にかけたら砂糖を加えてハンドミキサーで泡立てます。
ポイント:ハンドミキサーは大きな気泡ができないように中速に設定します。
236度ほどに温まったら湯煎から出し、リュバン状になるまでしっかりと泡立てます。
ポイント:最後に1分ほど低速で泡立て、大きな気泡を潰しながら生地のキメを整えます。
3ゴムベラに持ち替えたら、薄力粉をふるいながら加え、生地を底からすくい上げるようにして混ぜます。
ポイント:できれば2人で作業をし、1人がふるい入れながらもう1人が混ぜます。
4粉がおおよそ混ざったら、溶かしバターと牛乳のボウルに大さじ3強程度の生地を入れ、乳化するまで混ぜます。
54を3に回し入れ、底からすくい上げるようにして素早く混ぜます。
ポイント:ツヤが出て滑らかになったら混ぜるのをやめます。
6ボウルを傾けて生地を端に寄せ、低い位置から型に流し込みます。
ポイント:何度もゴムベラで縁の生地を触ると気泡が消えてしまいます。気泡が消え、黄色っぽくなってしまった生地は入れないようにしましょう。
7大きな気泡を消すために、2〜3回台に叩きつけます。
8オーブンに入れたら、温度を180度に下げ25分ほど焼きます。
9焼き縮みを防ぐため台に叩きつけ、型から取り出します。
10ケーキクーラーに乗せて冷まします。
ポイントを押さえながら作れば、均等にしっかりと膨らんだジェノワーズ生地ができますよ。

スポンジケーキの保存方法
すぐに使わないスポンジケーキは、粗熱をとったら冷暗所で保管しましょう。
冷蔵保存
冷蔵保存であれば、2日程度保存ができます。
完全に冷めたのを確認し、型紙をはがさずにラップで隙間なく包んでください。
スポンジケーキは半日〜1日ほど休ませることで、水分が満遍なく行き渡りしっとりとした食感になります。また、スライスもしやすくなりますよ。
冷凍保存
冷凍保存であれば、1ヶ月程度保存ができます。
冷蔵保存と同様にラップで包み、さらに匂い移りや乾燥を防ぐためにフリーザーバッグに入れましょう。使用する前日に冷蔵庫に移動させ、ゆっくりと自然解凍させます。
スポンジケーキは基本を知ってから挑戦しよう!
スポンジケーキが上手に焼けるようになると、お菓子のクオリティーがグッと上がります。
この記事で紹介した工程ごとの大切なポイントを押さえれば、初めてでもきっとキメ細かく高さのあるスポンジケーキが焼き上がるはずです。
ジェノワーズ生地は使用頻度が高いので、ぜひこの機会にマスターしてください!