「自炊力」「にっぽんのおかず」などの著書があり、hitotemaで「日本おつまみ漫遊記」を連載してくださっている白央篤司(はくおうあつし)さん。
2020年2月に発売の「たまごかけご飯だって、立派な自炊です。-たまごで養う自炊力-」も好評です。お料理好きな人も多いhitotema読者の方にはどうかな?とも思ったのですが、共感する部分や再発見も多そうなのでご紹介いたします。
※本の内容を一部引用しております※
目次
基本の技を再発見する

冒頭にも書いてあるように、本書は料理上手を目指す人向けではありません。どこを最終ゴールに定めるかはそれぞれですが、「作りたての料理を味わいたくなったときに何かしら作れるようになりたい」くらいの人に役立つ内容です。

どれくらい初心者向けかというと、「たまごの割り方」から乗っているほど!でも、「平らなところで割る」は、料理に慣れている人でも意外とかなり後で知ることもありますよね。

読み終わってから、料理が大好きな息子(6歳)にたまごを割ってもらいました。あらためて見ると、これってなかなか高度な技術だなと再認識。

ご飯を炊くのだって、そう。今は無洗米もあってお米を研がなくていいこともありますが、それでも炊飯し、その釜を洗うのはわりと面倒な作業です。
ご飯を炊いて生卵を落とす……
たしかに「たまごかけご飯だって、立派な自炊」に違いない!
「加える力」という定義に励まされる

冷蔵庫の余った食材を一掃させる、カレーやお好み焼き、名もなき炒め料理。日々料理をしている人であれば「手抜き」と解釈してしまうそんな料理も、「加える力」という定義をもらうことで表情が変わります。
- カレー+ホウレンソウ=あり!
- カレー+こんにゃく=まずいことはなさそう。
- カレー+チーズ=トッピングにしよう。
- カレー+酸っぱくなった白菜の漬物=大冒険!
そんなふうに味の計算ができるのも、積み重ねてきた「加える力」があるからなんですよね。

これは本書を読んだ翌日の食事。前日の残りの豚汁に茄子を加えた汁かけご飯なのですが、「これぞ加える力……!」という妙な自信が生まれました。
自分の自炊生活と比べて楽しむ
本で知らない知識を得るのも楽しいですが、知っている話を「そうそう!」「わたしは違うな~」と思いながら読むのも楽しいですよね。料理をしている人なら、本書は後者の楽しみがあります。

例えばこの、温泉たまごのくだり。鍋での保温や電子レンジなどいろんな「カンタン温泉たまご」レシピを試した結果、「買う」にたどり着いた一人なので激しく共感しました。
自炊習慣を身につけるための本なので、めんつゆや顆粒だし、冷凍野菜の活用法も紹介されていますが、「私は使わない」という人もいれば、「これ便利だよね~好き!」とニヤリとする人もいるでしょう。
また「ときに『捨てる』思いきりも必要」というコラムに対しても、軽く反発を覚える人がいる一方で「実家から届く食材が使いきれない……」と罪悪感を持っている人ならホッとするかもしれません。
それぞれの目線で、日々の料理生活を振り返ることができます。
たまご料理のバリエーションを再認識する

料理初心者がいきなり上手に作るのは難しいという理由で、本書には「たまご焼き」と「オムレツ」は紹介されていません。それでも、「目玉焼き」「ゆでたまご」「炒りたまご」を使った料理に「スープ」「みそ汁」「丼もの・チャーハン」とレシピは豊富。
しかも、親子丼以外で生肉を使った料理はなく、刺身以外の生魚も登場しません( 冷凍の肉入りカット野菜を除く)。買い物の悩みや食材管理の負担を減らすためだと思いますが、生肉・生魚なしでもこんなに豊かな食生活が送れるのかと気づかされます。
写真は魚肉ソーセージで作るピカタ。小麦粉をはたいて卵液に浸して焼くだけのレシピですが、本書を読んだあとなので「小麦粉をはたくって面倒!ちゃんと料理しててエライ!」という気分になりました。
白央さんの温かさに触れる
毎日料理をしている場合―特に家族のために料理せざるを得ない(と思っている)場合―は、料理をしない日が続くと罪悪感を持ったり、まったく料理をしない人をどこか下に見てしまったりすることがあります。
白央さんは食にまつわる著書の多いフードライターであり、ご自身も料理をされる方です。
三月三日ということで、きょうのツレ弁はちらし寿司に。おかずは炒り鶏と菜の花おかか和え。たまには細々とやるのもいいもんですな。錦糸たまごが苦手なので、厚く焼いてブロックに切りました。今後はこれでいこう。 pic.twitter.com/5jKo6fiI2s
— 白央篤司 (@hakuo416) March 2, 2020
どうでしょう、このキレイなお弁当!
こんなに料理力があるにもかかわらず、白央さんは料理初心者にとって何が難しいかを的確に見抜き、初心者にもできるアレンジを提案し、「たまごかけご飯だって、立派な自炊です。」と背中を押してあげています。
将来、一人暮らしをした我が子に「毎日たまごかけご飯ばっかり食べてる」と報告されたとして、自分は「ちゃんとご飯炊いてて立派!」と言ってあげられるかな。まるごとの野菜や調理済みのお惣菜ではなく、たまごかけご飯に合う海苔やキムチや刻みネギを送ろうという発想になれるかな。
白央さんの温かな視点に触れ、知らず知らずの慢心を反省したのでした。
いますぐ作って食べたくなる

「たまごかけご飯だって、立派な自炊です。」に掲載されているレシピは、どれも手軽で、なじみのあるお料理がほとんどですが、
「ハムエッグ、たぶん10年以上作ってないかも」
「親子丼、そういえばお店みたいに上手に作れたことないな」
「トマトと玉子の炒め物、中華料理屋にあるのに家では作らないな」
「“ とろとろ ”のゆでたまご、マスターしたい!」
などなど、料理写真の美しさも相まって、料理欲がどんどん刺激されてしまいます。夕食の予定を変更してでもいますぐ作って食べたくなる、それこそがレシピ本を読む醍醐味ですよね。

ちなみに、個人的にたまごかけご飯のトッピングでイチオシなのはしらす。水分量多めの釜揚げしらすを多めに混ぜるのが大好きなんです。
さあ今日も、いただきます!
【当記事につきまして】
hitotema編集部が企画して本を購入し、記事を作成しました。