「厨房から台所へ――志麻さんの思い出レシピ31」#読んで楽しいレシピ本レビュー

『厨房から台所へ――志麻さんの思い出レシピ31』(タサン志麻) #読んで楽しいレシピ本

レシピ本を読んでる時間って、幸せですよね。

きれいな盛り付け写真をぼんやり眺め、最初につくるのはどれにしようかと妄想し、作者さんのコメントを読んで勝手に親しみを覚え……

実際につくるかどうかよりも、新しいレシピ本を手に入れて読んでいる時間こそが幸せ!
と、そこまで言うのは独断と偏見が過ぎますが、読んでも楽しいレシピ本をhitotema編集部がご紹介していきます。

初回は、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で話題のタサン志麻さんのレシピ&エッセイ『厨房から台所へ 志麻さんの思い出レシピ31』です。

※本と番組へのネタバレを含みます※

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タサン志麻さんについて

タサン志麻さんは、お料理専門の家政婦さんとして話題の方です。

番組では、志麻さんの優しく控えめな雰囲気と内に秘めた熱さのギャップに驚かされるばかり。
不思議な雰囲気の方だなと思いながら番組を見続けていると、フランス料理のシェフとしてストイックにがんばりすぎて周りを傷つけてしまったことや、生活のために家政婦を始めたこと、15歳年下のフランス人男性とご結婚されたことなどが明かされていくのですが――

そんな志麻さんのエッセイとともに、思い出のレシピが記されているのがこの本です。

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真面目すぎておもしろい!

志麻さんが真面目すぎるほど真面目なことはテレビを見ていればわかるのですが、それは生まれつきというか、子ども時代からだったんだな、とわかるのが、山口時代の「家族から教わったこと」の章。

たとえば、龍馬チョコレート。

坂本龍馬にちなんでいることは想像がつきますが、龍馬の好物や高知の特産品を入れたとかじゃないんです。
お楽しみは奪えないので答えは控えますが、いやまさか!ええ?!

自分が親だったら、戸惑うだろうなあ……
優しいお父さまと好奇心旺盛なお母さま、風流なおばあさまが、志麻さんをそのまま受け入れて育ててこられたことに尊敬の念すら覚えます。

そして、地域一番の進学校から大阪あべの・辻調理師専門学校へ。
先生たちは大学へ行ってくれと懇願したんじゃないかな、とも思いますが、さすが志麻さんです。

専門学校へ進学し、フランス料理に出会って留学し、レストランでシェフとして働く章へと読み進めても、志麻さんはずっと真面目。

まさに「がむしゃら」で、手を抜く人が許せない。そんな人にまかせるくらいなら自分がやる。

似たような経験がある人は多いでしょうが、少人数の職場なだけに、無理をしまくって本当にひとりでやってしまうのです。
しかも、寸暇を惜しんでフランス語まで習いに行く……!

このあたりまで読み進めると、お会いしたこともないのに「変わり者の親友を持った気分」になってきます。

身体大事に!心は壊さないで!
気持ちはわかるけど、周りは少し困ってるかも!
とりあえず寝て!

と、いまの志麻さんは大丈夫だとわかっているのにハラハラしてしまいました。

結婚して家政婦として働き始めるまでのエッセイでは、志麻さんはわりと自分に否定的です。でも、端々のエピソードで志麻さんがひとりぼっちではなかったらしいことは伝わります。
志麻さんを見守り、かわいがってくれる人がそばにいたことに、勝手にホッとするのでした。「宮内先生のクロックムッシュ」、本当に美味しそう。

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志麻さんを作った、思い出の味

Amazonでこの本のレビューを読むと「レシピというよりエッセイ」「レシピがわかりづらい」といったコメントもあります。
実際、「カリスマ家政婦の志麻さんが教える、冷蔵庫のありもので手際よく作れるレシピ」が目的ならがっかりすることもあるでしょう。

だって材料に、

フォンドヴォー!
フュメ・ド・ポワソン!
コルシニョン!

クロタン(ヤギのチーズ)のサラダとか、

ブルーチーズソースのステーキとか、やりたい放題。
でも、読者に忖度しない志麻さん、好き……!

写真を見て文章を読んでいると、10年以上前に行ったパリのビストロの風景が頭に浮かんできました。
フランス料理やお料理が好きなら、少し難しいレシピも楽しく読めるはずです。

とはいえ、テーマは「志麻さんの思い出レシピ」ですから、難易度はさまざま。
自宅ですぐに作れる手軽なレシピもあります。

作ってみました!

まず作ってみたのは、フランス家庭料理の定番であるポトフ。

簡単ですが、野菜を入れるタイミングが指示されているので彩りよく仕上がります。自己流だと面倒でつい全部ぶち込んでしまいますが、手順で示してもらえるとちゃんとしようと思えますね。

素材の魅力が引き出されている優しい味わいで、しみじみ美味しい。二日分作りましたが、一日でお鍋が空っぽになりました。
わかっていたことですが、志麻さんの仕事が手際の良さだけでなく、たしかな知識と技術に支えられていることをあらためて実感する味です。

これはドーナツ⁉

ではなく、千葉県白井市のために考えた梨と豚肉のフライ。「洋梨に生ハム」や「プルーンの豚バラ巻」など豚肉とフルーツの組み合わせはときどきありますが、斬新!
このサイズのトンカツと比べるとヘルシーですが、梨の直径がそれなりにあるので想像以上に豚肉が必要でした。

豚のうまみの下にじゅわっとみずみずしく、温かい梨汁。初めての味でしたが、たしかにフランス料理のエッセンスがある!と思いました。

こちらは、じゃがいものピューレの豚巻き。スキレットで焼いてみました。
離乳食のお話の続きで紹介されていたレシピですが、これはおつまみにも!

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そして、いまの志麻さん

2020年1月現在の志麻さんは、第二子出産後で家政婦はお休み中。
でもレシピ本をつくったり、NHK「きょうの料理」に出演したりと活躍されています。

フランス料理が大好きなのに、フランスのミュシュラン星付きレストランで働けるまでになってもぬぐえなかった違和感。
その答えが、本のタイトルにもなっている「厨房から台所へ」です。

さて、これから冬本番。次は正統派レシピのオニオングラタンスープを作ろう、と思っていたら……

カフェで本場フランス風のオニオングラタンスープを発見!
というわけで、次は「ナスとピーマンと豚肉の甘みそ炒め」にしようと思います。つくりおきの人気メニューだとか!

【当記事につきまして】
hitotema編集部が企画し、本を購入して記事を作成しました。

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