前々回が茨城県だったのに、またも茨城を選んでしまいました。
というのも、どうにも思い出されてならなかったんです。「自粛」が続き、外出といえば日用品の買い物や、お金の引き出しに行くぐらいで、原稿書きと家事の繰り返し。花見や行楽などもってのほか……といった空気感の中、私はどうにも4年前に訪ねた常陸大宮市山方(やまがた)の春の光景が、思い出されてならなかったんです。
久慈川がおだやかに流れ、野辺にはツクシやヨモギが生い茂り、どこからか桜の花びらがはらりと飛んでくる。なんともうららかで、のどかで。そんな明媚なる景色がすぐそばの納豆工場を、私はそのとき訪ねていました。
当時私はある雑誌の連載で、「県民に愛される地元ならではの商品」を調べていたんですね。茨城県の回は、生産量が全国1位でもある名物の納豆がテーマ。
ひたすら県人に聞き込みを続け、「好きな納豆メーカーは?」「買うならこれ、というのはありますか」といった話を、100人ほども聞いたでしょうか。
よく聞かれたのが、「舟納豆はうまい」という声。
昭和26年創業、常陸大宮市の山方にある丸真食品が製造元です。取り寄せてみれば、確かにおいしい。名前の由来は、舟形の経木のパッケージから(久慈川の渡し舟にヒントを得たそう)。茨城県産の小粒大豆は粒立ちがよく、粘りがしっかり。食感が良くてどこか上品な味わいが印象的でした。早速、工場見学と取材をお願いしたというわけです。
そのとき「うちのオリジナル商品で、人気があるんですよ」と教えていただいたのが、今回ご紹介する「ワイン de ナットーネ」。
商品名から察せられるでしょうが、「ワインのつまみに」と開発された納豆の加工品です。納豆に、チーズペースト、トマトとバジル風味のペーストをそれぞれかけていただくもの。コクと香りがしっかりしたペースト自体もおいしいのですが、受け止める納豆が実に秀逸。「紅大豆」という大粒の大豆で、ほっくり、もっちりした食感が素晴らしい。チーズやトマトと違和感なく口の中で溶け合って、味わいがなんともふくよか。食べていて贅沢な気持ちになる、そんな納豆なんです。
「紅大豆は、山形県の川西町というところで大事に作られている大豆なんですよ。流通が少ない希少なもの。豆自体が本当においしいですよねえ」
そういって笑った工場のみなさんを、懐かしく思い出します。本当に納豆づくりが好きで、自社製品に誇りと自信を持っている方々でした。
そのままでもちろんおいしいのですが、私はプレーンなチーズピザにのせて食べるのも好きなんですよ。チーズ味なら黒コショウをたっぷり、トマト&バジル味はフレッシュバジルをのせて「追いバジル」をしたり、刻んだパセリを散らしたりするのもおすすめ。クラッカーにのせてカナッペにするのも。
さて、今夜はワインでも開けましょうか。あ、晩酌の前にも手洗いをしっかりとしなければ、ですね。
丸真食品
公式サイト(オンラインショップ): https://www.funanatto.co.jp/
工場見学: https://www.funanatto.co.jp/user_data/factory.php
※最新情報は公式サイトでお確かめください。
【当記事につきまして】
ライター白央篤司さんが企画し、掲載許可を得て記事を作成しました。