東北地方のミズ、今回は青森で。 #日本おつまみ漫遊記 vol.20

東北で愛される山菜、ミズ #日本おつまみ漫遊記 vol.20

「歯ざわりのいいものといえば?」
そんな問いがあったら、私は真っ先に「ミズ!」と答えます。山菜のミズ、食べたことのある人はどのくらいいるだろう。今年の夏に仕事で青森県の弘前を訪ねる機会があり、市場で久しぶりにミズを目にしました。

ああ……ミズだ、ミズがある。久しく食べてないなあ、とたまらない思いに。ミズってね、噛んでいて気持ちがいいんですよ。シャッキリした歯ざわりで、クセがなくて、名前どおりのみずみずしさに満ちて。東北全般で食べられるようですが、私の印象では特に秋田県と山形県で愛されているように思います。と、そんなことを弘前の人と話せば「えーっ、私も大好きだけど?」「私も!」なんて言われてしまいましたが(笑)。

ミズはね、茎を食べるんです。
大鍋でゆがいて、スジのかたいところがあれば取りのぞいて。下ごしらえはそれだけ。その茎を塩昆布で和えるのは定番の食べ方。

ああー……嬉しいなあ。久しぶりにいただいて、箸が止まらない。心は欣喜雀躍。野ブキのような感じに近いんですが、よりクセがなくて、おとなしい。それでいて強い味わいに負けない柔軟性があるというか。寄り添いつつも、しっかり存在感は見せてくれる。それが、ミズ。

きれいな水の流れる沢や渓流沿いなどに生えているそうです。ハウス栽培もされているとか。一度見学に行きたいなあ。

ミズ、油炒めにしてもうまいんだ。
豚肉とゴマ油なんかで炒めると、ビールのいいアテになるんですよ。そう、しっかりしたうま味や香りの強い調味料にもしなやかに自分を合わせてきます。

柔らかいところだったら、数本まとめて肉巻きにしても面白そうだな。うーん、来季やってみたい。旬は春から初夏にかけてといわれますが、秋口まで最近では食べられているようですね。

こちらは、ゆでたイカと酢味噌和えにしたもの。うーん、しゃれたつまみになりますねえ。イカのモチッとした食感との対比がすごくいい。あ、オリーブオイルと柑橘で和えるとかも良さそうだな。ミズ、いろいろ応用のきく山菜なんです。クセの無さがいいんでしょうね。

こんなふうに、下ごしらえされたものが青果店で売られていることもしばしば。それだけニーズが高いんでしょうね。お味噌汁や鍋に入れる人もいるようです。
毎回なんですけど、書いてたらまた食べたくなってしまった……。腹が鳴る鳴る、ミズに鳴る。

ミズと呼ばれる山菜は2種類あって、赤ミズと青ミズとがあります。茎の下の方が赤いのが赤ミズ、全体に緑色なのが青ミズ。赤ミズのほうが繁殖力があり収穫量も多く、一般的にミズといったら赤ミズのことを指すよう。

で、その赤ミズは成長するに従って葉の付け根にコブができるんですよ。いわゆる「むかご」的な。ゆがくと緑色に変わって、ここも食べられるんです。噛むとねばりが出て、また独特の食感が楽しめるんですよ。ひとつで2度おいしい山菜、それがミズ。

ミズは東北の居酒屋さんでは人気の食材、先に挙げた塩昆布やおかかで和えたもの、肉と炒めたのなんて品書きでよく見かけます。ミズとホヤの和えものや、ミズをたたいて粘りを出して、トロトロにした料理なんかもあるんですよ。もし東北を旅して見かけたら、ぜひトライしてみてください。

こちらは青森県のシンボルのひとつ、岩木山です。弘前のまちのあちこちからよーく見えるんですよ。山頂のシルエット、女のひとの横顔に見える……とも言われます。冬は雪をいただいて、またきれいなんだ。

ああ、早く気兼ねなく旅をして、地元つまみを楽しめる世の中が来ますように。そのときまでお互い元気でいましょうね。

来月また、お目にかかります。

関連記事

>hitotema

hitotema

贅沢・丁寧は、難しい。でも、節約・時短ばかりじゃつまらない。日々の生活を彩る、嬉しい情報を届けます。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。
Cookieなどの設定や使用の詳細については詳細をよくお読みいただき、これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになりますので、ご了承願います。

同意する