30歳以降の自分を考えて、何か一つ取得しておきたい!と、音楽や映画、ファッションがきっかけで大好きになったフランスの言葉を覚えようと、28歳の時、語学留学することに決めました。
とはいえ、どこからどう始めて良いのか分からず、パリで暮らしている知り合いに相談すると、運良くフランス北部にあるノルマンディ一地方に住む、老夫婦のお宅にホームステイさせていただけることになりました。
その上ラッキーなことに、こちらのご夫婦の息子ジョンさんは日本留学の経験者で日本語が堪能というのもあり、パリで働く彼は一緒に住んでいないものの、「困ったら電話で通訳しましょう!」と、強いアシストを得ることができ、ワクワクなフランス生活がスタート!
…のハズが、1日目、朝起きて「おはようの挨拶を!」と思うも、
「ボンジュールでいいのかな?なんだっけ?」
「ママが何か言ってる…あ、オレンジジュース飲むってことかな?」
「フランスパンって言わないの?バゲットって何???」
「テーブルセッティング、グラスは2つ(ワインとお水用)、デザートのスプーンはそこに置くの知らなかった!」
など、日本で過ごしてきた習慣との違いにたじろぎ、戸惑い、発見の毎日。
また辞書を引きながら一言ずつ覚えていく日々は楽しかったものの、「言葉をきちんと勉強するには学校に通った方が良いのかも」という結論になり、この家でのステイはわずか1ヶ月で終わることとなりました。
そこからパリで一人暮らしをしながら学校に通い、2年ほどの時間を過ごしたあたりで、「そろそろ日本に戻って仕事がしたい…」と留学を終えることを決め、その報告とお礼をとノルマンディーのママに連絡をすると、
「ノリコが頑張って勉強してくれたから、私たちはこうして電話でおしゃべりが出来るのよ」
と、最高に嬉しくて温かい、卒業証書のような言葉で私を包んでくれ、言葉の習得だけではなく、幸せな出会いまで頂いた時間だったと思わせてくれました。
その留学から気づけば早くも21年もの月日が経ち、家では今でも当時から大好きなフランスのラジオを、インターネットを通じて聴いているとはいうものの(Fip : écouter la radio Jazz, Reggae)、突然のフランス語会話となると、単語が出てくるまでにしばしの時間が必要だし、メッセージを送るともなれば翻訳をコピペして送信…なレベルとなってしまい、もうただひたすら「残念…」でしかないのですが、それでも唯一、フランスで過ごした時間の中で今もまだ大切にしている学びというのが、ノルマンディーでの食事で覚えた、お料理のサーブ方法!
留学するまで、家にお友達が食事に来てくれても、料理をまとめてテーブルに並べ、「一緒に食べられる」ことにしか意識がなかったのですが、ノルマンディーのママは、お料理にも流れがあるということを教えてくれました。
まず、指でつまめる簡単なスナックとアペリティフでゲストをお迎えし、みんなが揃ったら、冷たいお野菜のお料理、温かい前菜、メインディッシュ、デザート、チーズ…と、食事の進行具合を見つつ、冷たい料理は冷たいまま、温かい料理は温かいままでと、お家での食事であっても、いかに料理を美味しい状態でテーブルに並べるか!ということを学ばせてくれました。
この方法だとおしゃべりに夢中になって、冷たいお料理が悲しく乾いていくこともなければ、温かいお料理が冷めて固まることもなく、さらには
「次はどんなものが出て来るんだろう!」
「どんな声が上がるだろう!」
なんて、もてなす側、もてなされる側両者共に、楽しい食事時間になるということを知り、キッチンにこもりきりにならないよう、出来る限り事前に準備をして、かつ畑で育てた野菜を食べてもらえるよう、メニューを考えます!
昨今の夏のおもてなしはこんな風。
まずは最初に…
様々な地ビールをおうちで!
「ふじやまビール、もっと飲みたい!」と思うほど、飲み心地さっぱりな美味しさとの出会い!
そこに合わせる野菜の前菜は、
畑で採れたキュウリとオクラ、自家製味噌とマヨネーズのディップ。
桃とモッツアレラのカプレーゼ、タコとホタテ、トマトのセビーチェ。
モロヘイヤ・トマト・ライムの和え物や
ナス・インゲン・かぼちゃの揚げ浸しは、仕込んでおけば、味も馴染んでくれるので個人的夏の定番。
お野菜が続いたので、そろそろ…
夫の故郷、鹿児島名物、鳥刺し!
ブルンブルンの食感、九州の甘醤油、すりおろしニンニク、そこに合わせるは、きりっと冷えた赤ワイン。
この美味しさは夏に限らず、一年中幸せになる一品!(信頼できるお肉屋さんから鳥刺しを空輸してもらえるシステムには感謝するばかり)
冷菜、温菜、お刺身…の後には、メイン的肉プレートを!
とはいえ、つきっきりで焼くのも暑いしねえ…と、お肉屋さんで見つけたソーセージを使って放ったらかしグリル!!
フライパンに乗せて弱火でじっくり焼くだけ!
そこにソーセージから出てくる旨油を茹でたジャガイモに絡ませれば、しっとり系赤ワインも進みます。
そして締めには、地元・三重で人気の“大矢知 手延めん”(伊藤手延製麺所)を使ってニラ和え麺を。
茹でたての麺に山椒オイルを絡ませ、そこにオイスターソースなどで味付けした豚肉、刻んだだけのニラをたっぷり乗せて、熱々のうちに混ぜるだけ!
ニラの香り、山椒の香りは、「お腹いっぱいなのに、お箸がすすむ…」、罪な美味しさを心から堪能します。
ここから先は、果物やチーズ、チョコレートなどをつまみながら、コーヒー… お茶…で終わるのが理想なのに、
「もう1杯だけワイン飲もっかな…」
となるのは、留学時代から続く悪い癖。
でもあの時、わずかだったけれど過ごさせてもらったノルマンディーでのホームステイ、ママのおもてなし術は、学校で教わるのとも違う、今なお大切に思う貴重な経験と学びになりました。
1日も早くこの状況が落ち着いて、再びまた、お友達とこうした食事が楽しめるようになるといいなあ…
ノルマンディーにも行けたらいいなあ…
そんな日が来るのを心待ちにしつつ、今日もまた野菜を育て、お料理の腕も磨きたいと思います!