仙台駅にある、大きな大きなステンドグラス。
中央のモチーフは七夕飾りで、その上に伊達政宗公、そして右下に松島・五大堂が描かれています。すべて、宮城県の代表的なイメージ。ここはね、待ち合わせ場所としても定番なんですよ。新幹線を降りて出口に向かうと、まず目に入ってくる光景。ここを通るたび、「帰ってきたなあ……」と思うんです。
私は父の転勤の関係で、幼稚園から小学校までを仙台で過ごしました。物心ついてからの8年間、やっぱり影響は大きいですね。お米といえばササニシキだし、かまぼこといえば笹かまぼこ、温泉といえば鳴子に秋保（あきう）。そして夏の風物詩といえば……
ホヤなのです。
初夏に入ったあたりから、宮城に行けることがあると「ああ、良いホヤが食べられる」と嬉しくなります。鮮度がいのちのものですから。居酒屋さんをはしごして、どこの店の品書きにも「ホヤ」の字があると、宮城に来たなあ、来てるんだな……と強く実感。
ただこのホヤ、宮城の人だからって好きな人が多いかというと……そうでもないような？
特に好む人が多いのも確かですが、「食べたことない」「食べたいと思わない」「食べたことはあるけど、好きではない」という人もかなりいます。ホヤを出してる料理屋の板さんでも「正直私は……（笑）」って方、何人か知ってますしね。
好き嫌いが分かれるものだからこそ、熱い人も多くなる。「あんなもの」なんて言われると、余計に擁護もしたくなる。そんな存在が、ホヤではないかと。みなさんが育った地域にも、そんな存在の名物食、ありませんか？
私もね、一発でホヤ好きになったわけじゃないんです。最初に食べたときの感想は、「クニュッと、フニッと、不思議としか言いようのない食感。そしてひたすらに海の味」ってなものでした。それが2度、3度と機会を重ねるうち……いつしかクセになって、気がつけば率先して頼むほどに。信頼できるお店に行ったら、必ずお願いしてます。そう、仙台や宮城の沿岸部だからって、どこで食べてもうまいわけじゃない。仕入れと管理によりますねえ。
先の写真は、『おでん こうぞう』さんという、仙台駅から徒歩6分ぐらいのお店でいただいたもの。おでんとお刺身がおいしい店で、ホヤも間違いないだろうと思って頼めば、バッチリでした！
なんともきれいな、身立ちのホヤで。思い返して今、口の中に潮の感じがよみがります。その「ホヤ潮感」が口に残っている間に飲む日本酒がね、こたえられないのですわ。
ホヤというと刺身か、酢の物が一般的な食べ方。でも、揚げても蒸してもうまいんですよ。独特の香りがほどよく飛んで食べやすくなるので、最初のトライは加熱したものがいいかも。上の写真は大葉で巻いて天ぷらにしたもの。東京・門前仲町の『三陸港町酒場 女川男（おながわまん）』さんでいただきました。東京でおいしいホヤを食べられるお店のひとつです。こちらで食べたホヤのバター焼き、そして炊き込みごはんもうまかったなあ。久々にまた訪ねてみよう。
日本各地でもホヤを売る鮮魚店、お店が少しずつ増えていますね。なるたけ良い状態のものとの出合いがありますように。そして旅が楽しめるようになったら、仙台や三陸地方を訪ねて、ホヤもぜひ食べてみてください。
ホヤを楽しむコツは、味を事前に想像しないこと。どうもね、「ホヤを試してみたけどうまくなかった」という人と話していると、勝手にウニやエビみそみたいなうま味を期待してるんじゃないかと思うんですわ。ホヤはホヤの味で、他に代替のないものです。多分誰もが初体験の味。「〇〇みたいで、おいしい！」と例えられない味と割り切って、試してみてほしい。そこからは好みです。気に入ってくれると、いいんだけどなあ。
最後に情報をもうひとつ、「仙台に行く用事はあれど、食べ歩く時間の余裕はなくて」という方向けに。仙台駅にもいいお店があるんですよ。駅ナカには魚介を扱うお店がたくさんありますが、駅ビル『エスパル』東館2階の立ち食い寿司『塩竃 しらはた』さんが個人的にはイチオシです。私は仙台帰り、ここでサッとつまむのが好きでねえ……。お酒もいいものを置いてます。ぜひに。
【当記事につきまして】
ライター白央篤司さんが企画し、掲載許可を得て記事を作成しました。
