加藤紀子のおいしい畑

ウー先生に習う 粉物料理の不思議と魅力 #加藤紀子のおいしい畑

「紀子さん、閉じ目が大事なのでは!」
「すみません、ちょっと笑ってしまいました」
「笑笑笑!」
「それでも食べてみたい!」
先日、とある食べ物をインスタグラムのストーリーズにアップしたら、こんなリアクションが続々…。
いったい何がどうなって…というお話です。

先日、編集者のお友達から「のりちゃん、ウーさんのプライベートレッスンに参加しない?」と夢のようなメッセージが届きました。
彼女が言う「ウーさん」とは、大好きなお料理家、ウー・ウェン先生のこと!
前号でも先生の発売されたばかりのご著書「料理の意味とその手立て」について熱く綴りましたが、長らく「難しそう…」と、指をくわえてレシピ本を眺めていたお料理の数々が、時間を経てシンプルな工程を提唱してくださるに至り、中国料理がより身近に、美味しく作れることを知りました。

そこから毎日、本を読んで真似して作っていたのもあり、このタイミングでのお誘いは心躍るほどに嬉しく、もちろん参加の意思を伝え、待ちに待った当日、鼻息荒くアトリエへ。
初めてご挨拶をさせていただくウー先生は、チャーミングで明るいエネルギーが全身から溢れている、そんな印象の方。

「粉料理は難しくないんですよ、小麦粉、油、水分の特徴を生かして作るだけ〜!あとは慣れですよ〜」
これまで知らなかった世界へのドキドキを、ワクワクに変えてくれるようなお話をしてくださってから、レッスンはスタート。

今回はお友達が編集として携わった、ウー先生の新刊、
「ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理」の中から“空心餅(コンシンビン)”作り。
こちらは西太后の大好物と伝えられている宮廷料理の一つだそうで、肉まんの皮を作り焼いた後、中をくりぬいて空洞にし、肉そぼろなどを詰めていただくお料理とのこと。

「よく見ていてくださいね!」先生が見せてくれるデモンストレーションは、数秒前までボウルの中にあった小麦粉が、あれよあれよという間に生地という存在に変わり、伸ばされ、丸められ、もうフライパン!?と驚くほどに、なめらかでスムーズ。
「一生懸命こねる」とか「力強く伸ばす」などない、ただひたすらに美しく、しなやか。

空心餅(コンシンビン)

一連の流れを見て「もしかして先生がおっしゃるように簡単なのかも!」と思ったところで、実際に作ってみることに。
先生と同じよう、菜箸で粉を混ぜ、生地を発酵させて、丸く広げて…えっとえっと…(汗)。
「なんだか綺麗じゃないですね〜!」
アメーバのごとく自由な方向へ広がる私の生地を、先生がサっと手を加えてくれると嘘のようにまとまり、隣にいたお友達と「魔法の手だ!!」と感動!

先生のヘルプのおかげで(でしかない)出来上がった空心餅がこちら!

空心餅(コンシンビン)完成

悲しいかな、手伝っていただいたにもかかわらず、宮廷料理にうっかり出したら西太后が怒り出しそうな仕上がり(涙)!
中の空洞が小さく、肉そぼろも高菜漬けの炒め物もうまく収まらず、まとったゴマは食べる前にポロポロと剥がれ落ちる始末…。

でも味は流石のレシピで美味しかったし、先生は「慣れですよ」とおっしゃってもいたし、同じくウー先生ファンの夫にも食べて欲しい…と、なれば。

材料

「手早く混ぜますよ」「ボウルについた粉も忘れずにこそげ取りますよ」
ウー先生の声が頭の中で温かいうちに、しっかり復習!

こねる

「土俵にお塩をするんじゃないんだから、打ち粉は少しでいいんですよ〜」
そんな言葉も思い出しながらこねて発酵させて、生地を切って…

包む

包んで…焼いて…。
あの日教わったよう、レシピに書かれているよう、「先生、一人でもできるようになりました!」と次にお会いしたらそう報告できるよう、間違いなくやったはずなのに…なぜなの、私。

空心餅(コンシンビン)完成2

そう、冒頭にある数々のコメントは、こちらの焼きあがった空心餅の写真をインスタグラムのストーリーズで見た直後に送られてきたもの…近しい仲間から久しぶりの人まで、黙っていられなかったほどの仕上がりとなりました。

まあまあな時間を私として生きてきて、自分自身の得手不得手も理解していると思ってはいましたが、丁寧な作業がこうも苦手だとは、改めてびっくり!

ミント添え

「ミントがいい仕事してるよ!」フォローの方向があっているのかいないのか…、夫は気遣ってこんな一言を。
玄関先で育てているミントやフェンネルが、ここで救ってくれるとは…。

ウー・ウェン先生とツーショット

(※注 撮影時だけマスクを外しました)

「あなたを観ていて、性格が好きだわ〜って思っていたの〜」
レッスン終了後、ウー先生がなんとも嬉しい言葉をかけてくださいました。
そんな優しく想像した通りに素敵だった先生をがっかりさせないためにも、復習と反省を重ね、いつの日か、お友達にも振る舞えるようになれたなら!

お取り寄せや美味しいレストランでの食事は永遠にみんなの味方で、頼りになるけれど、大人になってもまだまだやったことのない経験、苦手だけど美味しい!が味わえた時間は、なんだかとっても楽しかったです!

ちなみにこちらの本、ありがたくも裏表紙の内側に原寸大のサイズ表があるので、「皮を8センチに、10センチに伸ばす」といったような工程で「こんな感じかな〜」とイメージで作りがちな私のような人にも優しい一冊です!

ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理』(高橋書店)より

関連記事

>hitotema

hitotema

贅沢・丁寧は、難しい。でも、節約・時短ばかりじゃつまらない。日々の生活を彩る、嬉しい情報を届けます。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。
Cookieなどの設定や使用の詳細については詳細をよくお読みいただき、これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになりますので、ご了承願います。

同意する