三重県 カキとヒオウギ貝、アコヤ貝 #日本おつまみ漫遊記 vol.15

三重県 カキとヒオウギ貝、アコヤ貝 #日本おつまみ漫遊記 vol.15

カキとビール

春もちょうど桜の頃、仕事で三重県鳥羽市を訪ねました。JRと近鉄線が乗り入れる鳥羽駅は海がすぐそば、ちょっと歩くと潮の香りが漂います。いつもながらに気になった店にふらり入ってみれば、そこは元・海女(あま)さんが営むお店でした。

「私のおばあさんもお母さんも海女。家の目の前が海やから、小さい頃から海に潜るのは普通だったもんね。怒られるんよ、海に入ったら手ぶらで戻ってくるんじゃないって。だから子どものうちから何かしら探しては獲ってくる。それが普通やったからね」

年齢は尋ねませんでしたが、60代の後半ぐらいでしょうか。貝を焼くのがとても上手なひとでね。あのゴツゴツしたカキ殻をうまいこと返しながら火を通し、よきところで殻を開けつつ、身の上話まで聞かせてくれて。

「海女さんになるいうより、気づいたら海女さんやっとったわ。このカキ?これは養殖よ、海女さんカキなんか獲らん。岩ガキを夏に獲ることはあるけど」

話ぶりの楽しい方で、ラッキーでした。そしてだんだんとカキの焼けるいい匂いが漂って。焼き上がりを待つ、この時間がまたいいアテだよな……なんて思いながら、キリンラガーをぐーっとひと飲み。ああ、あったかくなってきて、ビールがうまい。

カキとヒオウギ貝

カキは三重県の特産品のひとつでもあります。名人に焼かれて、身はぷりぷり。お代わりしたくなるおいしさでした。そして一緒に焼いてもらったのが、ヒオウギ貝。

「こっちではアッパ貝なんて呼んで、よう食べますよ」

貝殻の色が特徴で、このときいただいたのは赤みがかっていましたが、他にもオレンジ色だったり青だったりと、ちょっとビックリするぐらいカラフルな貝なんです。

カキとヒオウギ貝

開けてみたところ。ホタテ貝によく似ていますね。

ヒオウギ貝

実際、味もホタテと似てはいるんですが、うま味がもっと濃くて、野性味のある感じが独特で。ビールもいいけど、日本酒や焼酎と相性が良さそう。アツアツのところを、芋焼酎のロックなんかと合わせてみたいぞ。

鳥羽

そうそう、店内には鳥羽市出身の演歌歌手・山川豊さんのジャケットが飾られていました。こういうの、私は妙に忘れられない。女将さん、ファンだったのかな。ちなみに山川さんのお母さんも海女さんだったとか。お隣の伊勢市から鳥羽、そしてもっと南の志摩地方にかけてが、日本でいちばん海女さんがいるエリアなのだそう。

「サザエもアワビも、昔はもっといっぱい獲れたもんだけどねえ」

なんて言いつつ、他のお客さんが頼んだサザエを2分もかからずさばいた女将さんの手つきが忘れられません。無駄のない動きがあざやかで。研がれに研がれて小さくなったあの包丁、女将さんがいくつのときから使っているんだろう。

もっとお話を聞きたかったな。ごちそうさまでした。

鳥羽といえば鳥羽水族館も有名ですね、仕事の合間に私も行ってきました。イカが幻想的できれいで、気がつけば何十枚も写真を撮っていた私……。

アコヤ貝の貝柱

さて、鳥羽で出会った忘れられないつまみをもうひとつ。

串焼きにされているこちら、アコヤ貝の貝柱なんです。アコヤ貝といえば、真珠がとれるあの貝です。三重県の鳥羽は真珠養殖の盛んな地でもあるんですね。宝飾品メーカー・ミキモトグループの施設もあるんですよ。

冬場に真珠を採取したあと、貝柱部分が食用として出回るのだそう。串焼きでいただきましたが、コリッとして弾力に富む食感がまず印象的。最初はあっさり上品なんだけど、噛んでいるうちだんだんとうま味が口に広がっていくんですよ。ああ、こりゃいいアテだ。酒と薄口醤油で焼いてあるようでしたが、塩焼きとか、あるいは刻みパセリを入れたニンニクバターなんかでも焼いてみたくなる。

「本当なら冬場で売り切れちゃうんだけど、今年はコロナの影響でお客さんが少なかったからね。まだ冷凍のがあったんですよ」とお店のご主人。3月にいただけたのは幸運だったんですね。今度はぜひ真冬に訪ねて、生のをいただいてみたい。

鳥羽では他にも面白いものに出会えました。次回、また鳥羽のお話をさせてください。

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