旅の列車でつまんで飲む。
格別のたのしさですよねえ……車窓からの見慣れぬ風景がサブつまみ。発車してから「さて」と心で合図して、缶ビールを開ける。プシュッという音を新幹線の中で聞くのはいつ以来だろう。
久々の出張先は名古屋でした。帰りに駅隣接のデパ地下やらをウロウロ。手羽先や味噌カツなど、お酒のアテにもいいものが多い名古屋名物ですが、今回は天むすを購入しましたよ。ごはんものじゃつまみにならないという人もいるかもですが、塩気のきいた小エビ天をコンパクトにむすんだ天むすでビールをやるの、大好きなんです。ほどよく湿った海苔がまたいいんだよね、口の中ですべてが一体化するの、たまらない。そしてグーッとビールを流し込む。
ああ、しあわせだ。
天むすはすっかり名古屋名物として知られていますけれども、もともとは三重県で誕生したということ、ご存じでしょうか。
1950年代に津市の天ぷら店で、まかない用に考案されたらしいのです。忙しくてお店の方がなかなか食事が取れない。仕事の合間に食べやすいよう、エビ天を小ぶりなおにぎりにしてみたら、これがおいしい。作り方を習った人が1980年代になって名古屋で店を出したところ、ヒットした……というのが天むすストーリー。
天ぷらをおかずにごはんを食べるという手間を、むすんでひとつにしちゃったわけですね。「天ぷらむすび」がいつしか「天むす」と略された。「てんむす」って音の良さも、人気の理由のひとつだと私は思います。
天むすってやっぱりごはんですから、時間が経つほどに乾燥しておいしさが減じてしまうもの。そんなときに溶きたまごにくぐらせて焼くとね……うまいんですよこれが!
韓国料理の海苔巻き、キムパってあるじゃないですか。あれも作ってから時間が経ってしまったとき、溶きたまごにくぐらせて両面焼いて食べるんです。韓国の方から習ってやってみたら、クセになりました。たまご液の水分をほどよくごはんが吸って、焼いた香ばしさも加わって、また違うおいしさが生まれる。
ならば天むすでやっても同様の結果になるのではと思い、今回多めに買ってきて、翌日に試してみたら……はい、大ヒット。たまごで包まれて焼くと、中が蒸された状態になるんですよね。ふっくらとした感じがよみがえり、香りもよくなって、これまたビールに合う(笑)。
今回の出張でもいろいろ地元の方に聞き込んできました。「天むすならここ!」とおすすめしてもらった『にぎりたて』というお店。私は名古屋駅近く、近鉄パッセ店で買いましたよ。おいしさはもとより、天むす3個で320円という手頃さもうれしい。あと、やさしい味わいの玉子焼も実に良かったので、名古屋に行くことがあればぜひぜひ。
次は京都に行ってくる予定です。またここで何かご紹介できるよう、聞きこみ頑張ってきますね。
にぎりたて ホームページ
https://www.nigiritate.com/