鹿児島県 とんこつ #日本おつまみ漫遊記 vol.7

鹿児島県 とんこつ #日本おつまみ漫遊記 vol.7

「郷土の味には地元の酒が一番!」
よく言われることですが、その相性の良さを心から感じたときのことを、今回は書いてみますね。

去年のゴールデンウイーク明け、鹿児島をたずねました。鹿児島の郷土料理に、「とんこつ」なるものがあるんです。漢字で書けばまさに「豚骨」と、そのまま。九州名物である、あのラーメンを思い出す方が多いんじゃないでしょうか。しかしこれがまったくの別物、骨付き豚あばら肉をじっくり煮込んだ料理が、鹿児島では「とんこつ」の名で親しまれているんです。

市内の居酒屋に入ってみたら、メニューに早速「とんこつ」の文字が。
「軟骨のついた豚肉をね、柔らかくなるまで焼酎で煮るんですよ。このごろは圧力鍋で煮る人も多いですね。味噌と砂糖で味つけして、仕上げに醤油を少々。味噌だけの人もいるし、醤油だけで煮込む人もいる。郷土料理だから、家によってもずいぶん違って。大根やコンニャクと一緒に煮ることも多いんですよ」

女将さんが作り方をていねいに教えてくれました。しかしいくら煮込んだとて、軟骨がそんなに柔らかく………なるんですね、これが!ひと口食べて驚きました。噛むと歯がゆっくり入っていく食感が面白い。コリッというか、「コリッ……ン」というような、本当に独特の歯ざわり。肉の部分はいわゆる角煮的な極柔の仕上がりで。2つの食感が混ざり合う初体験が、なんとも愉快だったなあ。

味つけはしっかり甘め。コクのある甘い味噌味に口の中が染まったところで、流し込むのは鹿児島特産、芋焼酎。
「あ、あ……合うなあッ!」
思わずひとりごとが漏れました。そんな私を見て、女将さんがニヤリ。
「合うもんでしょう?」
黙ってうなずく私。
豚と味噌と砂糖、食材の中でも強い満足感を与えてくれる三人衆をなんともきれいに洗い流す芋焼酎。飲み込んで、鼻に抜ける香りがまたいいんです。それぞれの余韻を感じさせつつ、こってりした重さはきれいに消えて。地元の肴と酒の相性の良さ、いやすでにこれは相性というレベルを超えて絆といえるものでは……などとも考えたり。

「いいときに来ましたねえ、昨日までは観光客の方が多かったけど、今週ならゆっくり市内を観てもらえる。うちも今日は、予約無し(笑)」
休み明けの早い時間、お店はやっぱり空きがちで、今回のように料理の作り方やらじっくりうかがえる機会に恵まれることが多いんです。鹿児島では特に気さくな方に多く、めぐり会えた。

地酒というのは地元で飲むとまた格別の味わい。鹿児島で飲み歩いた中では、とある居酒屋さんでいただいた、『フラミンゴ オレンジ』(国分酒造)という焼酎が特に心に残りました。しゃれた名前とデザインが気になって頼んでみたら、店員さんが「ライチみたいな香りがする、人気のお酒なんですよ」と。

うん! 芋焼酎らしいスッキリした辛口の飲み心地だけれど、たしかに南国の果実のような香りが漂って、なんともいい……。思わず、おかわり。
ちなみにその居酒屋さん、先の「とんこつ」をデミグラスソースで煮込まれてました。芋焼酎とまたこれが、合うんだ。

ときにモダンに、ときに自由にアレンジされる郷土料理。昔ながらもいいけど、地元の方々の遊び心と共にある姿もまた、いいものです。

「とんこつ」という料理名、やはり観光客には分かりづらいようで、駅周辺などの飲食店では「豚なんこつ」とか「豚のなんこつ煮」なんて名前で紹介されていましたよ。

鹿児島の絶景といえば、桜島。朝早くに拝んだ桜島は小さくも噴煙を上げて霞みがかり、なんとも神々しかった。またいつか、必ず行きたい。

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