「倉敷の今」を伝えるWebメディア『倉敷とことこ』ライター、あまむらです。食いしん坊のわたしにとって、「おいしいものブティック平翠軒」はまさに憧れのお店!ぎっしりと商品が並ぶ店内、品質の良い美味しい食べ物、見ているだけで楽しい手書きのポップ……。ささやかな美味しい幸せを求めて通っていましたが、今回お話をお聞きして、ただ「おいしい」だけじゃない平翠軒の魅力に圧倒されました。
前回のランチ3選に続き、今回も 『倉敷とことこ』とhitotemaさんのコラボ企画!ここへ行くために倉敷へ旅行する価値がある、素敵なお店「おいしいものブティック平翠軒」を紹介します。
目次
静かな通りに佇む「おいしいものブティック平翠軒」

倉敷美観地区の川通りから少し離れた、静かな通りにある「おいしいものブティック平翠軒」。看板も控えめでこぢんまりとした印象ですが、全国の美味しいもの好きの心を掴んで離さず、いまもリピーターが増え続けています。有名百貨店やセレクトショップのバイヤーもこっそり通う、倉敷を代表するお店です。

平翠軒の建物も趣があり、道行く人の目を惹きます。こちらは、すぐとなりにある親会社「森田酒造」の大正時代からある倉庫を改装した建物です。平翠軒創業は1990年4月、オープン当初は森田社長が集めた150種類の商品からスタートしました。2階はギャラリー「破゛ 流知庵(ばるちあん)くらしき」を併設しています。

「平翠軒」という名前は、森田家に古くからある茶室「平翠軒」に由来しています。平翠軒の翠は翡翠の翠、翠はかわせみの翠色から、お店の看板にはかわせみがデザインされています。
総数1,500種類以上!圧巻の品揃えにワクワクする店内

さて、おいしいものブティック平翠軒の中へ入りましょう。さっそく入り口から商品で溢れています。この先にどんなおいしいものとの出会いがあるのでしょうか。ワクワクしますね。

一歩足を踏み入れると、そこはもう平翠軒ワンダーランド。全国から選りすぐりの食品が、100平米ほどの店内に所狭しと並ぶさまは壮観です。商品の種類はなんと1,500種以上!スタッフの方によると、まだまだその種類は増え続けているそうです。

陳列のこだわりは「地上90cmから2mの間に商品を並べること」。平翠軒のお客さんの多くは50~70代の女性です。その年齢の方が見やすいように、無理な体勢にならないようにと気を配った、思いやりの店内になっています。
缶詰・瓶詰め&乾麺がメインのコーナー

平翠軒は大きく分けて3つのゾーンに分かれています。 正面入り口から向かって右の壁側は、ジャムや缶詰、調味料の瓶がならび、その間をぬうように乾麺などの商品棚があります。手前は缶詰、奥にはオリーブオイルのコーナーもあります。
チルド品がメインのコーナー

中央はチルド品の冷蔵庫です。チーズや肉加工品、塩辛瓶詰め、バターなどの乳製品、お漬け物やおつまみなどがぎっしり!チルド棚の空いたスペースには、色とりどりのジュースで埋め尽くされています。

見てください、この途方もないチルド製品の数々!たまり漬け、柴漬けのお漬け物類に佃煮、豚の角煮、梅干し、味噌、生ハム、ベーコン……。あまりの情報量の多さに目と頭が追いつきません。
調味料・乾物&お酒がメインのコーナー

向かって左側は、ドレッシングや調味料、わかめやにぼし、珍味の瓶詰めなどが並び、その手前には混ぜご飯や炊き込みごはんの素、ふりかけなどが置かれています。

こちらは親会社である森田酒造の酒類が並ぶコーナーです。平翠軒は森田酒造の子会社であり、森田酒造3代目である森田昭一郎さんが作ったお店です。森田酒造創業以来の製法を守り続けてきたロングセラー「萬年雪」のシリーズや、まったく加工なしの朝搾りで採集された「未搾り」のお酒など 、数々のお酒が揃います。平翠軒にお酒のおつまみが多いことも納得です。
平翠軒の原点「いなだ鰤(ぶり)」との出会い

お店の中央、チルド冷蔵庫の上あたりに目を向けると、何かがぶら下がっていることに気が付きました。これは一体なんでしょう。

こちらは「いなだ鰤(ぶり)」と言い、かつて能登半島で作られていた鰤の保存食です。(非売品)

いまほど流通が整備されていない時代のこと。能登には、売り物にならない鰤を日陰で干し、保存食にする伝統がありました。森田社長 は、旅の途中でこのいなだ鰤に出会います。
かつお節のような鰤を嚙むと、じんわりと魚の脂がしみ出てくる。しけで海にでられないときは、いなだ鰤を酒の肴にして呑んでいる漁師の姿がありました。まだものを捨てない精神、生活の知恵が生きていたんです。

いなだ鰤のように、命を大切にする商品、作る人の思いが込められた食べ物を届けたい。物を作る人から元気をもらった、その恩返しがしたい。その思いが原点となり、平翠軒が生まれました。平翠軒の商品はすべて、そんな森田社長の思いが込められた品物が並びます。
うまい、まずいなんてどうでもいいんです。良い人が作っているものをお店に置きたい。それに、良い人が作る物は良いものだからね 。

ちなみに、いなだ鰤と一緒にぶら下がっていた巻ぶりはスライスでも販売されています。能登半島に伝わる独特の塩漬けはこちらもお酒に良く合う一品。能登半島伝統の味がお手軽に楽しめますよ。
迷ったときはポップ&コンシュルジュにお任せ。

お店のスタッフさんに 売れ筋は?と聞いたところ、意外な答えが帰ってきました。
それが、本当に人それぞれというか……皆さん自分で見つけ出すところが楽しいみたいです。この中から探し出すのが楽しいのじゃないかしら
なるほど、それが平翠軒の楽しみ方なのですね。

とはいっても、1,500種類の品揃えです。じっくりと見るだけで1時間以上はかかるでしょう。そんなとき助けになるのが、ひとつひとつの品物に置かれているムービングポップ(固定していないポップ)。手にとって見るも良し、ほかの商品と比較して見るも良し。商品の特徴を的確にとらえたポップは、きっとお買い物が楽しくなりますよ。

例えば、こちら「酒宝あかひら」のポップです。
「春獲れ“ぼら”の卵巣を森田酒造の大吟醸粕をベースにしたペーストに漬け熟成させてあります。天然の美味を素朴な昔ながらの粕漬の技がなんとも素晴しい酒の肴を作り出しました。平翠軒発の新しい美味をお楽しみ下さい。そのままか軽くあぶってお茶漬にしても楽しめます。」
う~ん、これは食べてみたくなりますね。内容は森田社長が考え、奥さまが和紙と筆を使い、すべて手書きで書かれています。

もっと色々な商品を知りたいときやギフト選びをしたいときは、平翠軒のスタッフに相談に乗ってもらいましょう。お店のことをすみずみまで知り尽くした知識の多さ、深さはまさに平翠軒のコンシュルジュです。森田社長、スタッフの方々、それぞれのおすすめ商品もお聞きしましたので、次の章で紹介します。
おすすめは全部!? 平翠軒のとっておきをご紹介
全部おすすめではあるのですが、私あまむらが個人的に大好きなのは「吟醸酒ケーキ」。

ブランデーケーキはたくさんありますが、こちらはふわふわのパウンドケーキに森田酒造の吟醸酒をたっぷりと染み込ませた日本酒のケーキです。しっとりとしたケーキを食べると、華やかでうっとりするような日本酒の香りが広がり、こんなに贅沢な一口があるのかと思うほど。アルコールは抜いているので、お子様でも安心です。
ここからは、森田社長とスタッフの方々のおすすめをご紹介していきますね。
吉田牧場のチーズ

森田社長のお気に入りは「吉田牧場のチーズ」。
とにかく(吉田牧場創業者の吉田)全作さんが好き、ものづくりの原点のような人。自分の家族のためのチーズだから、悪いはずがないんです 。
ブラウンスイス種の牛乳を使い、天才的な技で丁寧に作られた吉田牧場のチーズは「幻のチーズ」とも呼ばれるほど。力チョカバロチーズはワックスコーティングがなく、 1つ6,000円以上する高級チーズですが、入荷するとすぐに売れてしまうそうです。
イタリアから空輸されるオリーブオイル

また、オリーブオイルも平翠軒に欠かせない商品です。信頼のおけるバイヤー経由で、イタリアから5リットル缶を仕入れて小分けに詰め直し ています。空輸で仕入れることにより、オイルの鮮度が保たれ、いつでも新鮮なオイルが手に入るのです。

イタリアの家庭には、南北2種類のオリーブオイルが常備されているそうです。北イタリアのエキストラバージンオリーブオイルは、サラダやパンなどそのまま食べる生食向き。南イタリア産はソテーなどの調理用に向いています。
美味しいオリーブオイルの見分け方は、飲んでみること。ナッツや青リンゴのような鮮烈な香りが立ち上るオリーブオイルは、一度使ったら離れられません。
石原信義の調味料

スタッフのおすすめは、色々な種類が揃う「石原信義」のポン酢調味料と鍋の素。特に「石原信義の塩ポン酢」は、高知県産のゆずと徳島県産のすだちを使い、さっぱりとした味わいが人気の商品です。
柚子屋本店の商品

こちらは山口県にある柚子屋本店の柑橘系商品で、特に珍しいのは 「夏みかんスライス」。果皮と実のあいだにある、白くて柔らかい部分をスライスし、シロップ漬けにしたものです。しっとりとした食感と夏みかんの爽やかな香りが印象的な、マーマレード好きにおすすめしたい一品です。
平翠軒自家製のオリジナル商品

「焼き牡蠣のオイル漬」や「下津井たこの酒びたし」など、平翠軒自家製のオリジナル商品も多数あります。お酒のおつまみ以外にも、自然な甘さの「いちぢくジャム」や「バルサミコ入りミートソース」など、こんな商品もあるんだ!と探してみるのも楽しいですよ。
買い物後はギャラリー「破゛流知庵(ばるちあん)くらしき」でひとやすみ

リピーターのみなさん、 平翠軒の2階はギャラリーになっていることをご存じですか?今回初めて2階に足を運びましたが、こんなに素敵な空間が広がっているなんてびっくりしました。倉庫時代の大きな梁(はり)が、建物の歴史を思わされます。

ギャラリーには、森田家が所有するコレクションの数々が並びます。こちらは日本人形のコレクションです。

展示作品は季節ごとに変わり、版画、ガラス、絵画、かけじくなど、さまざまな作品が並ぶそうです。

大きな窓からは、森田酒造の敷地と茶室「平翠軒」が見えます。この景色が見えるのは、美観地区でも平翠軒の2階、破゛流知庵くらしきのみだそうです。貴重な休憩スポットですね。

お買い物のあとは、コーヒーでゆっくりとひと休みもできますよ。とても静かで癒されるギャラリーです。
購入したのは、こちらの3品!
平翠軒おすすめの商品をいくつか購入してみました。初めて食べるものばかりでワクワクします。
ばっけ味噌

まず一品目は、森田社長がおすすめくださった、秋田県三吉フーズの「ばっけ味噌」。ばっけとは秋田弁でふきのとうのことです。
これはすごいよ!
店内のポップには「早春の山菜ふきのとうの味噌漬けです。天然のふきのとうなので、高い香りと爽やかな苦みがなんとも美味」とあり、早速購入してみました。
まず、その色に驚かされます。灰汁が少ないふきのとうを使うので、鮮やかな緑色をしているそうですよ。鮮烈なふきのとうの香りのあと、ほんのりと苦みがあり、想像以上にまろやかで優しい味わい。ごはんにのっけて食べたら止まらない美味しさです。チーズとの組み合わせも相性が良く、ピザやパスタにも合いそうです。
ビバガーリック

次は、スタッフさんのいちおし、広島の女性のみの会社大輪が作る「ビバガーリック(小)」。青森県産のにんにくを刻み、イタリア産オリーブオイルで煮込んだ万能調味料です。これはすごい、ただの炒め物がとんでもないごちそうになります!フランスパンに塗ってガーリックトースト、キャベツと合わせたら美味しいおつまみに大変身。これはもう手放せなくなりそうです。
自家製ラクレットチーズ

最後は岡山県吉田牧場の「自家製ラクレットチーズ」(108g入り)。幻と呼ばれる吉田牧場のチーズ、お店で見かけたら即購入することをおすすめします。スイス原産のハードチーズの1種であるラクレットは、熱することで美味しさを発揮します。吉田牧場の最高級の牛乳、そして職人技でできた最高のチーズです。

スタッフの方から「じゃがいもとの相性が最高!」と聞き、さっそく試してみました。ラクレットの程よい塩味とクリーミーさが、じゃがいものほくほく感と最高のコラボレーション!ラクレットの熟成された深い味わいは、驚きの美味しさです。そのままだと少しクセがある匂いも、火をいれるとふんわりと華やかな香りに変わります。
本当に良いものを求めて「おいしいものブティック平翠軒」へ
良い素材を使い、良いものを作るまっとうな人を大切にしたい。そしてそれを分かってくれる人に届けたい。作り手と買い手の出会いの場が平翠軒です。
食べ物の驚きと楽しさ、そして慈しみに溢れた「おいしいものブティック平翠軒」。森田社長が惚れ込んだ人が作る「おいしいものコレクション」は、これからも増え続けていくことでしょう。ぜひ、お店に足を運んでみてください。
おいしいものブティック平翠軒店舗の基本情報
住所:岡山県倉敷市本町8-8
電話:086-427-1147
FAX:086-424-0088
フリーダイヤル:0120-334833
営業時間:午前10時~午後6時
定休日:月曜日
公式サイト:https://www.heisuiken.co.jp/
今回ご紹介した商品の製造販売元
平翠軒
- 巻きぶり
- 吟醸酒ケーキ
- 酒宝あかひら
- 焼き牡蠣のオイル漬
- 下津井たこの酒びたし
- いちぢくジャム
- バルサミコ入りミートソース
- オリーブオイル
- 森田酒造のお酒
公式オンラインショップ: https://www.heisuiken.co.jp/
吉田牧場
- カチョカバロ
- ラクレット
公式サイトはありません。
ナチュラルチーズ専門店「フェルミエ」に在庫があれば通販可能です
倉敷鉱泉株式会社
- 石原信義のポン酢や調味料
公式オンラインショップ:https://www.kurashikikousen.com/ajikoubou/
柚子屋本店
- 夏みかんスライス
公式オンラインショップ: https://www.e-yuzuya.com/
三吉フーズ
- ばっけ味噌
公式サイトはありませんが、秋田県大仙市のふるさと納税返礼品になっています。 ふるさとチョイスで申し込みできます。
大輪
- ビバガーリック
公式オンラインショップ: http://vivagarlic.jp/
その他、Amazonや楽天市場でも販売されています。
こんにちは。「倉敷の今」を伝えるWebメディア『倉敷とことこ』ライターのあまむらです。岡山に住んで10年、その間何度も倉敷に通い続け、好きが高じていつのまにかライターになっていました。倉敷美観地区とその周辺は、大原美術館をはじめとして歴史[…]
【当取材記事につきまして】
hitotema編集部が企画し、倉敷とことこ様に取材・撮影・執筆を依頼しました。
取材・撮影・執筆:あまむらみちえさん(倉敷とことこライター)
倉敷とことこ:https://kuratoco.com/
ノッツコッツ(あまむらさんのブログ):https://amamuragohan.com/