さまざまな国の文化が入り混じる東京・新大久保エリア。2021年3月、その駅の真上に“食の交流拠点”となるフードラボが誕生したのをご存じでしょうか。
その名も「Kimchi, Durian, Cardamom,,, (キムチ, ドリアン, カルダモン,,,)」。
シェアダイニングやコワーキングスペース、ファクトリーキッチンを備えた施設で、新たな食の発信地になっているんです。実際どのように利用できるのか、体験取材をしてきました!
目次
国際色豊かな新大久保に誕生した「フードラボ」
韓国のイメージが強い新大久保ですが、最近では中華圏や東南アジア、中東など様々な文化が入り混じる街になってきています。
そんな国際色豊かな新大久保に誕生したのが、フードラボ「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ, ドリアン, カルダモン,,,)」(以下、「K, D, C,,,」)。2021年3月、新大久保駅の真上のビル3・4階に開業しました。改札出たらすぐ左!近い!
駅・まちで新しい体験を。JR東日本が手掛ける「フードラボ」
手掛けたのはJR東日本。「山手線を起点とした駅やまちの個性を引き出し、心豊かな都市生活空間の創造」を目指す『東京感動線』の取組みの一環で、料理雑誌で有名な「オレンジページ」と、コワーキング事業などを展開する「CO&CO」の3社が連携し、運営を行なっています。
ちなみに施設の正式名称は「Kimchi,Durian,Cardamom,,,」のあとにもBeans,Chicken,Okra,Sesame…と99の単語が続きます。これは、色々な食や文化が集まる新大久保のカオス感を表現しているのだとか。(長いので普段はK,D,C,,,呼びでOK!)
それでは、3階・4階を詳しく探索していきましょう!
3階はそれぞれコンセプトを持つ食の期間限定ショップ
オレンジページが運営を担う3階は、一般のお客さんが自由に食を楽しめる50席のシェアダイニング。それぞれコンセプトを持つ「食」のポップアップショップが並んでいて、購入した料理やスイーツを好きな席で楽しむことができます。
いわば商業施設のフードコートのようなスタイルですが、少し違うのは、どのお店も出店期間が決まっていること。そのためお客さんは時期により、毎回違うお店の味を試すことができるんです。
ちなみに5月まではオープニング企画として、「エシカル」をテーマにした新しい餃子スタンド「Unknown Gyoza Stand」や、日本のTKGを世界に発信すべく活動する「日本たまごかけごはん研究所」初のイートイン店舗などが出店していました。
6月からは店舗が一新!今回は2店舗で注文してみました。
入口すぐのキッチンに出店していたのは「fam(ファム)」。東京ではまだあまり知られていないような、日本各地のおいしいものを紹介するスイーツ店です。生産者のこだわりから生まれるジャムやソースを使ったメニューで、作り手と食べ手をつないでいます。
人気メニューは「ジャム3種食べ比べセット」。それぞれ異なる生産地のおすすめジャム3種を、西会津のスコーン専門店「SATURDAY BREAKFAST CLUB」のスコーンと併せて味わえるドリンク付きセットです。
今回選んだのは、新潟・佐渡産のジャムセット。幻の西洋なしと称される「ルレクチェ」、希少な黒イチジク品種「ビオレ・ソリエス」、樹上で完熟させるふじりんごで作る「りんご」の3種で、どれもみずみずしく個性ある味わい。少し塩気のあるスコーンともマッチしていました。
シェアダイニングの最奥にあったのは、エシカルをテーマにしたかき氷スタンド「名称未設定氷菓楼(unknown KAKIGORI stand)」。
緊急事態宣言で卸値が1/3になってしまった老舗宇治茶農家の抹茶や、滋賀の老舗茶問屋のほうじ茶を使ったかき氷のほか、規格外フルーツで作るネクタージュースなどを販売。他に店舗はなく、ここだけでしか味わえないメニューです。
注文したのは、抹茶とクリームチーズの抹茶ティラミス「Mount Uji」。新雪のようなふわふわの氷に、濃厚でクリーミーなソースが良く合います。氷の中には砕いたビスケットも入っていました。食べ終わると体が冷えて寒くなるので、ホットの焙じ茶を付けるのがおすすめです。
そのほか、恵比寿の本格中華料理専門店「チャイニーズダイニング方哉(まさや)」のスピンオフショップ「台湾屋台方哉」も。
台湾のスパイスと醬&ソウルフードをテーマに、こだわりの食材と天然の調味料で作る台湾料理が食べられます。こちら平日は、ディナーのみ、18時からオープンします。(こちらは6月13日までの営業でした!)
各店舗の出店期間や今後のスケジュールなどは「K, D, C,,,」の公式サイトで確認ができます。ぜひチェックしてみてくださいね。
4階は充実のキッチンを備える会員制コワーキングスペース
続いて4階へ。こちらは国内外で多様なコミュニティづくりを担うCO&COが運営する、会員制のコワーキングスペース。奥にはミーティングルームもあります。主に、食に携わっている方が利用しており、生産者や研究機関、食品メーカーなどのほか、食の分野に新規参入したい企業やスタートアップも多いそう。
コワーキングスペースの横には、保健所の菓子・そうざい製造許可を取得したファクトリーキッチンが2つ。大型オーブンや食品パッケージ用の真空包装機も備えています。
例えば「コワーキングスペースで新商品の企画を練り、キッチンで新商品を試作&小ロットで製造し、3階のシェアダイニングで試験販売する」というような流れも叶います。新たな挑戦をしたい企業にとって、ワンストップで取り組める環境が整っているのは嬉しいですよね。
コワーキングスペース前にあるのは、広々としたコミュニティキッチン。手元を写すカメラも完備されているので、料理イベントなども開催できます。
食を軸に、幅広い事業に取り組む人たちが利用する4階。化学反応のように、それぞれの強みを活かしたコラボレーションも生まれているのだとか。
実際に、ヴィーガン事業を手掛ける企業が3階に出店していた餃子店とコラボし、お肉を使わない「ピスタチオ・マッシュルーム餃子」を期間限定販売したことも。「K, D, C,,,」ならではの面白い試みです。
食への好奇心が満たされる!深く学べる「K, D, C,,, Food College」も開講
また2021年6月からは、食のプロや、食に強い関心を持つ方たちを対象にしたコミュニティ・プログラム「K, D, C,,, Food College」がスタート。月ごとに異なるテーマで食の専門家を招き開講します。感染対策を取った3階会場には満席の10名に加え、オンライン参加の方たちが集まりました。
2021年6月は「スパイス」がテーマ。「インドアメリカン貿易商会」の3代目であり、世界中をめぐるスパイスハンター、シャンカール・ノグチさんが講師となり、スパイスの世界を学んでいきます。初回となるこの日、主催するオレンジページさんのご厚意で私も参加させていただくことに。
議題は「スパイスの定義について」。気候や文化が異なる国の間でスパイスはどのように世界に広がっていったのか、交易ルートや歴史を辿りながら深く掘り下げていきました。
その他、オーガニック・スパイスの嗅ぎ比べや、国ごとのスパイスの使い方や保存法、昔のスパイス瓶なども紹介。
参加者の皆さんが前のめりで話を聞いたり、メモを取ったりする姿が印象的でした。最後の質問タイムでは「基本のスパイスの配合は?」や「魚に合うスパイスは何か」などのほか、「セイロンシナモンとカシアシナモンの使い分けについて」といったマニアックな内容も!
質問が途切れず、盛り上がっていました。
新大久保にはスパイスを扱うお店も多いので、気になったらすぐにチェックできるのもいいですね。
2021年7月以降は、納豆を通して食の多様性を考える「フードダイバーシティ」や、「発酵と醸造」「食×コミュニケーション」などの講座も開講予定。こちらも詳しくは公式サイトで確認ができます。
多彩な視点から「食」を楽しむ場に!
今回じっくり取材をしてみて、「新大久保」という独特なエリアの魅力を最大限に活かしたフードラボだと感じました。多彩な食の交流地点でもあり、新しい食に出会える発信地点でもあり。「食」に興味がある方たちの好奇心を大いに満たしてくれる場になりそうです。
Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ, ドリアン, カルダモン,,,)
の基本情報
所在地:東京都新宿区百人町1-10-15 JR新大久保駅ビル3・4F
定休日:
3Fシェアダイニング 月・火曜日、その他不定休
4Fコワーキングスペース・ファクトリーキッチン 土日祝日
営業時間:
3Fシェアダイニング 11:00~20:00
4Fコワーキングスペース・ファクトリーキッチン 9:00~18:00
アクセス:JR新大久保駅 直上
公式サイト:https://kdc-foodlab.com/
【当取材記事につきまして】
hitotema編集部が企画、ライター田窪綾さんが取材依頼し、記事を作成しました。