もうね、「見ているだけでも幸せ」ってな食べもの、ありませんか。眺めているだけでも多幸感を与えてくれるような大好物。人それぞれだとは思いますが、私の場合は……まずもって、ウニです。ウニなんです。
ウニと向かいあったとき、ときめきとはこういう感情かと毎度思いますね。いつ頃からこんな深い思いを抱くようになったのか。小さい頃は寿司ネタでいえば断トツでカッパ巻き、玉子、かんぴょう巻きが好きだったのになあ（いや、今も好きではあるけど）。そう、小さい頃なんてむしろ「なんか、キモチワルイ」と除けていたウニが、今や仰ぎ見るほどに麗しい。
ああ、いつもと文章のテンションが違ってしまうぐらいにウニのことを思うと気持ちがアガり、そわそわし、たまらなく嬉しくなってしまうのです……！
そんな時間を先日、広島にて過ごしていました。
広島の名物といえばそう、お好み焼き。市街にはお好み焼き屋さんがいっぱいあります。初めて歩いたときは「こ、こんなにあるんかい！」と思いましたねえ。お好み焼き店ばかりが入っているビル『お好み村』は市内繁華街の名物のひとつ。このあたりを歩いていると生地の焼ける匂い、ソースのちょっと焦げたいい香りがプーン……と漂うときがあって、食欲が刺激されるんですよ。そしてなじみのない食べものの匂いに包まれたとき、私はどうにも旅情を感じて、嬉しくなるんですな。
はい、話はウニに戻ります！お好み焼きを出す鉄板料理店の中には、つまみを楽しめる店も多くあるわけですね。中区弥生町『中ちゃん』という店の名物料理に「ウニクレソン」なるものがあるんです。
鉄板でウニとクレソンをサッと炒め、バター醤油で味つけしたもの。クレソンとウニという取り合わせ、しかもウニを加熱……というと味の想像がつかないかもですが、これがなんともシャレた味わいになって、うまいのですよ。ほろ苦いクレソンと、サッと熱を通すことで甘みが強くなったウニがもう……すばらしい相性で。香ばしい醤油とバターのコクと塩気が全体をまとめて、これぞまさに佳肴！ほどよいしょっぱさとウニの濃厚さがビールに合うんだなあ。
むほほほ。付け合わせのバゲットにのせていただきますよ。ああ、たまらーん！ひとかじりして生のジョッキをつかんで、ゴクゴクゴクとビールを飲み干し、プハーーーッとひと息。しばし、ぼんやり……。
まだお皿にウニとクレソンがいっぱい残っている。それを全部私がひとりで、食べられる。鉄板の前でひとり、ニマーッとしてくるわけです。ふふ、ふふふふふふふふふ。
途中でレモンをしぼって風味を変えると、また新鮮なおいしさに。お皿に残った汁はもちろんバゲットに吸わせていただきます。これがまたね、たまらんのよ……。すみませんビールお代わり！値段はひと皿1,900円ですが（2020年10月現在）、やっぱり広島に来たらいただかずには帰れません。
この「ウニクレソン」ですが、市内の飲食店では「ウニホーレン」といって、クレソンではなくホウレン草で作られるものが一般的。先の『中ちゃん』で「ウニクレソン」が誕生し、「ホウレン草でやってもいいかも」的に鉄板焼き屋さんに広がった……なんて話を地元の人から聞くのですが、詳細は不明。
ちなみに『中ちゃん』で訊いてみたところ、「ウニクレソンが生まれたいきさつなど、詳しいことは分からない」とのこと。先代のご店主が考案したという話も聞きますが、そのあたりのことはもうちょい、調べてみます。
ちなみに広島の青果店で見つけたホウレン草、パッケージに「食べてみんさい！とれたてじゃけえ！」と書かれてあって、ああ私は今広島にいるのだなあ……と感じ入りました。
とあるお店の看板。「ウニホーレン」の文字が見えますね。広島というとカキのイメージがなんといっても強いでしょうが、もし旅することがあればウニクレソン、ウニホーレンもおすすめですよ。食いしん坊のあなた、ぜひ試してみてください。
中ちゃん
住所：広島市中区弥生町6-8
電話番号：082-243-6067
公式サイト：https://nakachanhiroshima.wixsite.com/home
【当記事につきまして】
ライター白央篤司さんが企画し、掲載許可を得て記事を作成しました。
