舌磨きはしたほうがいいの?舌を守るケアをしよう #歯科衛生士の歯の教室

舌磨きはしたほうがいいの?舌を守るケアをしよう #歯科衛生士の教室

特に舌磨きの必要性を感じていなかったものの、テレビCMやネットの情報を見て舌磨きを始めたという方も多いのではないでしょうか。
しかし、舌磨きは必ずしも必要なわけではなく、間違った方法で舌を磨きすぎると逆に舌の組織を傷つけてしまい、口臭が悪化したり痛みが出たりすることもあります。
そこで今回は、舌磨きについて解説していきます。

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舌磨きとは?

舌磨きとは?
(画像出典)PIXTA

舌磨きとは、一般的に舌ブラシやスクレーパー(細くて薄い金属をU字に曲げた物)を使って舌苔(ぜったい)を掻き出すことを指します。

舌苔は、舌の表面に付いている白っぽい部分。舌にはじゅうたんのように細かい毛(糸状乳頭)がびっしり生えているのですが、この先端に剥がれ落ちた粘膜の上皮や食べカスなどがくっつき、かたくなって舌苔になります。

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舌磨きは、本当に必要?

舌磨きは、本当に必要?
(画像出典)PIXTA

剥がれ落ちた粘膜の上皮や食べカスと言われると、すぐにでも取り除きたくなるかもしれません。
しかし舌苔があること自体は問題なく、むしろ白くて薄い舌苔は健康な舌である「しるし」でもあり、舌磨きの必要性はほとんどないです。

実は舌磨きで口臭が悪化することも…!

「舌磨きは口臭予防になる」とも言われますが、健康な舌を磨いてしまうと逆に口臭が悪化する恐れがあります。
その際、糸状乳頭に溜まっている唾液も一緒に取ってしまうので、乾燥しやすくなります。舌が乾燥することで細菌が増殖してニオイを発生させてしまい、逆に口臭がひどくなってしまうのです。

舌磨きが必要なケースもある!

舌磨きが絶対にダメということではなく、必要なケースもあります。
例えば寝たきりの方は、咀嚼(そしゃく)が上手くできないだけでなく舌を動かせないことが多いです。舌が動かせないと飲み込む機能も弱くなるので、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります(※)。
誤嚥性肺炎を防ぐためには、舌ブラシやスクレーパーなどで舌苔を除去(正確には舌苔の中にいる細菌を除去)する必要があるのです。

その他、歯科医院によっては、舌の状態によって舌ブラシを使った方が良いと判断することがあります。その時には、担当医の指示を守ってケアをしましょう。

※誤嚥性肺炎とは、飲み込む機能が正常に働かず、肺に食べ物や細菌などが入ることが原因で起こる肺炎のことです。

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舌は健康のバロメーター

舌は健康のバロメーター
(画像出典)PIXTA

舌は体の健康を表すバロメータとも言われていて、舌苔の色や厚さなどを見て、症状の原因を診断することがあります。まずは舌の状態を確認してみましょう。

白くて薄い舌苔

中央部分から舌の付け根にかけて白くて薄い舌苔が広がっていて、舌の両側から先端にかけては舌苔がない状態。これは健康な舌の特徴です。
粘膜の上皮の入れ替わりは頻繁に行われているため、白くて薄い舌苔があるのは正常な状態なのです。

白くて厚い舌苔

健康な舌(白くて薄い舌苔)の上に、古い粘膜の上皮や唾液の成分、細菌、食べカスなどがたくさん付着してかたくなった、白くて厚い舌苔。これは、寝たきりの状態などで舌が動いていない状態が長く続くと起こりやすくなります。

舌が機能していない場合には、唾液の出が悪くなってしまい舌苔が厚くなりやすいです。また、舌苔が厚くなると細菌が増殖しやすく、口臭が発生しやすくなります。

黄色い舌苔

黄色い舌苔は、体を休めなさいという「しるし」とも言われていて、防御反応を表しているケースが多いです。たとえば、慢性胃炎や消化不良などを起こしている時は舌苔が黄色くなり、症状が進行するとさらに黄色味が強くなる傾向があります。
軽度の歯周病や虫歯、タバコでも、舌苔が黄色くなることがあります。

黒い舌苔

病気が進行して重くなったり、抗生物質を長い期間服用したりすると、常在菌のバランスが崩れて舌苔が黒く着色することがあります。また、黒い舌苔は独特なニオイを発しやすく、口臭がひどくなりやすいです。

赤い舌

赤い舌は、舌苔が全くない状態です。重度の病気が慢性化したり、栄養不足・鉄分不足になったりすると舌が赤くなることがあります。

舌磨きの前に!すぐにできる舌のケア方法

舌磨きの前に!すぐにできる舌のケア方法
(画像出典)PIXTA

舌苔が白くて厚い場合、磨きたくなるかもしれません。
しかし、舌苔が厚くなってニオイがするように感じるのは、舌が乾燥して糸状乳頭がさらにかたくなり細菌の数が増えたり、食べカスが多く残っていたりするのが原因です。
舌をゴシゴシ磨くよりも、根本原因を解決するのが先です。

鍵となるのは、唾液。

唾液には、舌を保湿するだけでなく、余分な舌苔を洗い流してくれる働きがあります。唾液の量が少なかったり、質が悪かったりすると舌苔が厚くなりやすいです。つまり、初めから舌苔を取るのではなく、唾液の量を増やし質を高めるケアがおすすめなのです。

よく噛む

よく噛むと、唾液腺が刺激されて口の中が唾液で満たされるようになります。食事の時は、一口につき20回は噛むようにして、唾液の循環を良くしましょう。

唾液腺マッサージをする

噛んだときだけでなく、唾液腺に刺激が加わったときにも唾液が出る仕組みになっています。唾液が出る場所は、次の3箇所です。

  • 耳の下周り(耳下腺)
  • 下顎の真下(顎下腺)
  • 顎の先端(舌下腺)
(画像出典)PIXTA

それぞれの部分を、手で優しくマッサージしていると唾液がジワッと出てきます。このマッサージは、やるとわかるのですが、5分もしないうちに唾液が出始めるほど効果があるので、仕事の合間にでもやってみてくださいね。

水分補給

唾液の成分のほとんどは水分なので、水分補給は欠かせません。水分不足の状態では、十分な量の唾液を作り出せず口の中が乾いてしまいますので、こまめに水分補給するようにしましょう。

歯磨き

歯磨きをすると、口の中を刺激して唾液が出るようになります。また、舌苔に溜まる前に食べカスを除去できるので、細菌の繁殖を防ぐ効果もあり、舌苔が厚くなりにくいです。

ストレスを溜めすぎない

過度なストレスは、自律神経に作用して唾液が出にくくなったり、ネバッとした唾液になったりして舌が乾きやすく、舌苔から嫌なニオイを発生させる原因になります。唾液の質を高めるには、食事のバランスや睡眠時間などの生活習慣、ストレスの原因を見直すのも重要です。
参考資料:厚生労働省「身体のストレス反応から考える職場のメンタルヘルス対策:No.2 ストレスと口の健康」より

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「舌苔=取り除くべきもの」、ではない

白くて薄い舌苔は、舌の潤いを保つために必要です。
口臭の原因が舌苔にあると思い込み、自己判断で舌苔を取ると逆に悪化する可能性があります。舌を磨くと爽快感もありますが、磨きすぎは禁物なのです。

歯科医院では、舌苔の状態を診て症状の判断をすることもあるので、除去してしまうと診断しにくくなります。基本は今回紹介した舌ケアとし、舌苔の状態が気になる時には、自分で取らずにかかりつけの歯科医院に相談してみましょう。

記事監修:林 徹(歯科医、はやし歯科医院院長)

林徹先生

三重県津市 高茶屋小森町356-2林歯科ビル1F
059-234-0118
https://hayashi-dentalclinic.net/
小さなお子様からお年寄りまで、幅広い層の患者さまに信頼していただける医療を提供することを心がけています。

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