今何かと話題のうがい薬。特にイソジンは、売り切れが続出した薬局もあるくらい、大人気商品となりました。とはいえ、うがい薬を使用しすぎると風邪や感染症の予防になるどころか、逆効果になる可能性があります。そこで、今回は正しいうがい薬の使い方を解説していきます。
目次
うがい薬の効果
うがい薬の種類は、イソジンだけではありません。風邪や感染症予防に効果的なうがい薬は、歯科医院でも購入することができます。ここでは「イソジン」と、多くの歯科医院で取り扱いが多い「コンクールF」という、うがい薬の効果について説明していきます。
殺菌・抗ウイルス
うがい薬には、細菌やウイルスに効果がある有効成分が含まれています。
例えば、イソジンの場合には、ポビドンヨードというヨウ素が使用されていて、色んな種類の細菌やウイルスに効果があります(イソジンと名のつく商品はいくつかありますが、使用成分に違いがあり、全てのイソジンが細菌やウイルスに効果がある訳ではありません)。
また、コンクールFにも殺菌・抗ウイルス作用があります。コンクールFに含まれている成分はイソジンに比べるとウイルスに対する効果が少し劣りますが、持続的に使用するのが特徴で、細菌やウイルスの増殖を抑えることができます。
口臭予防
口臭の主な原因は、嫌気性細菌という細菌です。嫌気性細菌は、食べカスをエサにしてガスを出します。この発生したガスが、腐った卵のようなニオイと例えられるほどの悪臭で、口の中に充満し呼気として外に排出されます。
うがい薬の成分には、この嫌気性細菌を殺菌する効果があります。ポビドンヨードが配合されているイソジンは勿論、コンクールFには、口臭予防になる成分が含まれています。
口腔内の消毒
うがい薬には、風邪や感染症予防の他に、口の中を消毒する役割があります。イソジンの有効成分であるポビドンヨードは、手術後の消毒液として使用されるほどの高い殺菌能力があります。歯を抜いた後に、消毒として茶色い液を塗布されたことはありませんか?あの茶色い液がヨード。抜歯後のポッカリと空いた穴から細菌感染を起こさないように殺菌能力の高いヨードを使用しています。
爽快感
イソジンの独特な味が苦手な方もいるかと思います。しかし、近年の爽快感ブームにより、イソジンにもミント風の香りが配合されている商品もあって、うがい後の爽快感が残るようになっています。コンクールFは、低刺激でミント味なので、ピリピリしない優しい味が口の中に広がります。
うがい薬で注意するポイント
うがい薬で注意すべきポイントは次の3つです。
うがいしすぎによる口腔常在菌を殺菌
口の中には、悪い菌もいれば良い菌も存在します。健康な口の方に多くいる細菌が口腔常在細菌です。約1,000億個もの数の常在細菌たちは、外から入ってきた細菌が体の中に侵入するのを防御する役割があります。また、火傷や口の中を切った時に何もしなくても痛みや傷が自然に治るのは、常在細菌が粘膜を作り出して治癒しているからです。
しかしうがい薬には、細菌やウイルスだけではなく、常在細菌も殺菌してしまいます。特に、ポビドンヨード系は高い殺菌能力があるため、うがいしすぎると常在細菌が殺菌されて粘膜の細胞が傷つきます。そうなると、口の中の抵抗力が低下するので、色んな菌やウイルスが体の中に侵入しやすい状態になるのです。
妊娠中・授乳中の場合
妊娠中や授乳中の方が、ポビドンヨード系のうがい薬を使用するのはおすすめできません。ポビドンヨードはヨウ素です。うがい薬をして、口の中に残ったヨウ素が胎児や母乳に移動して、甲状腺機能が低下する可能性があるからです。妊娠中や授乳中の方には、コンクールFがおすすめです。コンクールFは成分にヨウ素が含まれていないので、安心して使用することができます。
持病がある場合
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの主原料です。そのためバセドウ病や甲状腺の持病がある方は、ヨウ素の過剰摂取を避ける必要性があるので、ポビドンヨード系のうがい薬は使用できません。また、ヨウ素に対して過敏症の既往歴がある方も、使うことが禁止されています。
正しいうがい薬の使い方
うがい薬の正しい使い方は次の通りです。
濃度を守る
うがい薬は、濃度が高いほど効果が増すわけではありません。むしろその逆で、高い濃度でうがいをすると口腔常在細菌が殺菌されてしまうので、口の中の抵抗力が弱くなる原因になります。うがい薬を使用する時には、必ず濃度を守ってうがいをしましょう。
ガラガラうがいをする
風邪や感染症を予防するうがいの仕方は、ガラガラうがいです。ブクブクうがいは、口の中に残っている食べカスを取ったり、虫歯菌や歯周病菌が増殖するのを防いだりする時にするやり方です。
1日に何回も使わない
1日に何度もうがい薬を使うと、口腔常在細菌が殺菌されて機能しなくなります。例えば、長い時間外出していて家に帰ってきた時には、うがい薬を使用する。少しの外出の場合や歯磨きの時にはうがい薬を使用せずに、水だけのうがいにするようにして、頻度をコントロールしましょう。
口の中を清潔に保つのが風邪や感染症の予防になる
うがい薬には、確かに殺菌・抗ウイルス効果がある商品があります。しかし、口の中が不衛生な状態のまま、うがい薬を使用しても効果はあまり期待できません。また、不衛生な口の中は、良い菌である口腔常在細菌も弱っている状態です。
日頃から口の中を清潔に保つことこそが、口腔常在細菌を活発にさせて、風邪や感染症になりにくくする秘訣なのです。うがい薬は、毎日頻繁に使うよりも喉が痛い時や口の中がネバつく時に使用するようにしましょう。
記事監修:林 徹(歯科医、はやし歯科医院院長)
三重県津市 高茶屋小森町356-2林歯科ビル1F
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