2020年1月、小泉進次郎氏が「育休」を取得し、話題になりました。
重責のある現職環境大臣の育休取得には賛否両論がありましたが、男性の育休取得推進は社会の課題のひとつです。
今回は、パパ育休の現状や展望、収入を守る支援制度について見ていきたいと思います。
目次
男性の育休取得の現状
男性の育休は、女性の育児負担を軽減し、出産による女性の離職率を下げる一助になると考えられています。
男女ともに育児と就労のバランスの取れた環境が整備されれば、出産への障壁が取り除かれ、ひいては少子化に歯止めを掛けられるだろうという期待もあります。
男性の育休取得率
近年では男性も育休制度を利用できることが知られてきましたが、「パパ育休を取得した」あるいは「周りにパパ育休を取った人がいる」というケースはまだまだ少ないのが現状です。令和2年7月に厚生労働省が発表した男性の育休取得率は、7.48%でした(※)。
この数字には1日だけの取得も含むので、女性並みに数ヶ月、あるいは年単位で取得している人はもっと少ないのです。
※厚生労働省:令和元年度雇用均等基本調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r01/06.pdf
取得率が低い理由は、職場環境と経済面
男性の育休取得率が低い理由は、やはり「仕事を休みづらい」という現実のようです。
- 業務を代わってもらえるほど人手に余裕がない。
- 自分の業務を任せられる人がいない。
- 職場にパパ育休への理解がなく、「迷惑」という空気がある。
- パパ育休の取得が、今後の昇進に影響したり、不本意な異動につながったりする可能性がある。
そして、「育休取得による減収を避けたい」という経済的理由も大きいでしょう。男性育休取得を推進するには、取得を妨げるこれらの要因を解決することが必要です。
男性の育休取得推進のための制度
職場環境は一朝一夕には解決できませんが、より取りやすくするための制度もあります。
2021年4月時点では下記ですが、4回に分けて取れるような制度改正や「男性産休」案についても検討が進んでいますよ。
パパ休暇
育児は当然夫婦でするものですが、妻が夫の手を必要とする切実度が高いタイミングは2回あります。1回目は、産後すぐの体調が安定しないとき。そして2回目は、育休明けに職場復帰するときです。
そのため、産後8週間以内に男性が育休を取得していた場合に限り、特別な事情がなくても2回目を取れることになっています。
通称「パパ休暇」、パパ育休を2回取れる制度です。
パパ・ママ育休プラス
両親ともに育休を取得する場合、通常は1歳までである育休期間が1歳2ヶ月までに延びる制度があります。
但し、パパの育休取得開始がママの育休取得開始よりも遅いことが条件なので注意してください。
育休取得中の収入減を補完する支援制度
支援制度には「育児休業給付金」と「社会保険料免除」があり、併用することで収入の約8割は保つことができます。
育児休業給付金
一定の要件を満たしている労働者が勤務先に申請すれば、育児休業前の月収の最大67%を雇用保険から受け取れます。
計算式:休業開始時の賃金日額×支給日数×67%
(育休開始6ヶ月経過後は50%)
賃金日額:育休開始前の6ヶ月の給料(賞与を除く)を180日で割った金額
支給日額:1ヶ月を30日として算出
参照:厚生労働省 Q&A~育児休業給付~
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
社会保険料免除
育休取得中は、給与の中から支払っている社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)が免除されます。
所属している健康保険組合によって社会保険料の負担額は異なりますが、一般的に収入の14~16%といわれています。
支援制度の問題点
社会保険料が免除の規定は、「月末の日が育休の期間に含まれていると、その月が免除の対象になる(含まれていないと、前月まで)」です。
これは育休を数ヶ月単位で取ることを前提に決められた判断基準ですが、男性は短ければ1日だけの取得あり得るため、「育休を取ったのに免除対象にならない」というケースが生じています。
逆に、社会保険料免除を狙った短期間の取得も可能で、いずれにせよ問題ということで法改正が議論されています。
【参考】
内閣府HP:少子化社会対策大綱の推進について<令和3年度における主な取組>令和2年12月25日
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/law/pdf/r021225/shoushika_taikou_b2.pdf
厚生労働省HP:育児休業中の保険料免除について(第135回社会保障審議会医療保険部会)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000698355.pdf
当たり前に育休取得できる社会へ
国による制度の利用促進策や職場環境の改善によって、パパ育休は徐々に利用しやすくなっています。女性に偏る育児負担が軽減されて、女性の職場復帰や社会参加がさらに促進されるといいですね。
小泉大臣も、オンライン会議や国会への参加はこなしつつ計12日間の育休を取得し、「育児がこんなに大変なのかと感じた。また、世話をしながら子と過ごす時間は貴重だった」と取材に答えていましたので、父親にとっても大切なことだと思います。
これからの時代、男性も女性も当たり前に育休を取得できる社会になることを期待したいです。
家族、職場、地域、社会全体で男性の育児参加への理解が進むと、日本の未来も明るいでしょう。