ムースやプリン、ゼリーなどを作るときは、ゼラチン、アガー、寒天などの凝固剤を使います。「結局固まるならどれを使っても同じじゃないの?」と思う方も多いのではないでしょうか。
ですが、ゼラチン、アガー、寒天は、原材料や食感、凝固温度などが違うので、それを知らずに代用すると失敗する可能性があります。
この記事では
- ゼラチン、アガー、寒天の特徴や使用方法
- お菓子のレシピ3種類
をまとめました。
それぞれの特徴を活かしたお菓子も紹介しているので、お菓子作りの参考にしてくださいね。
目次
ゼラチン

ゼラチンの特徴
原材料
牛骨、牛皮、豚皮に含まれる動物性たんぱく質である、コラーゲンが原材料です。
食感や味
ぷるんとした食感で、口溶けがいいです。コラーゲン特有の味や香りがほのかに感じられますが、そのまま食べない限りほとんど分からないでしょう。
色
透明感がありますが、やや黄味がかっています。
溶解温度と凝固温度
溶解温度は50~60度、凝固温度は20度以下です。
基本的に常温ではなく、冷蔵庫で冷やすことで固まります。
一度固まったものは、25度以上になると溶け始めます。
<参考>
溶解温度:固形物(今回はゼラチンの粉)が水分と混ざり完全に液体状になる温度
凝固温度:水分と混ざり液体状になったゼラチンが固形物になる温度
使用方法
ゼラチンは、粉ゼラチンと板ゼラチンがあり、どちらも原材料や性質は同じですが使用方法にやや差があります。
粉ゼラチン
倍量程度の水で5分ほどふやかします。粉ゼラチンに水をかけるとムラになるので、必ず水の中に粉ゼラチンを入れましょう。

板ゼラチン
冷水に20分程度浸し、しっかりと水分を絞ってから使います。板ゼラチンが溶けないように、冷水を使うのがポイントです。
粉ゼラチンはふやかした水も分量に加わりますが、板ゼラチンは水を絞って使うため、配合割合が変わってきます。できれば代用はせず、レシピに掲載されている種類を使いましょう。
向いているお菓子
プリン、ゼリー、ムース、ババロア、マシュマロなど
使用の際の注意点
ゼラチンは動物性のたんぱく質なので、たんぱく質分解酵素を多く含むパイナップル、パッションフルーツ、キウイフルーツ、パパイヤ、イチジクなどのフルーツを入れるとゼラチンのたんぱく質が分解されて固まりません。
もし上記のフルーツを使いたい場合は、
- 加熱し酵素の働きを止めます。
- 缶詰を使用します。
ゼラチンを使ったブランマンジェのレシピ
ブランマンジェは、フランスを含め、ヨーロッパではとてもポピュラーなデザートです。ゼラチンの特徴であるくちどけの良さが活かされています。
今回は、オレンジのゼリーをかけてさっぱりと仕上げました。
材料(プリンカップ4つ分)

<ブランマンジェ>
- 牛乳 250ml
- 生クリーム 100ml
- グラニュー糖 45g
- ゼラチン 4g
- 水 15ml
<オレンジゼリー>
- オレンジ 2玉
- 水 10ml
- グラニュー糖 10g
- ゼラチン 2g
- 水 10ml
作り方
1水にゼラチンを入れてふやかします。
2鍋に牛乳、生クリーム、砂糖を入れて、沸騰直前まで温めます。
3火を止めて1のゼラチンを加え、木べらなどで泡立てないように混ぜます。

4茶こしでこします。

5容器に入れて粗熱が取れたら、冷蔵庫で冷やし固めます。
6ブランマンジェが固まったらオレンジゼリーを作ります。水にゼラチンを入れてふやかします。
7オレンジを房から出して、ハンドブレンダーで軽く潰します。(ハンドブレンダーがない場合は、すり鉢などで潰します。)

8水と砂糖を鍋に入れて煮溶かしたら、7を加えて沸騰直前まで温めます。
9火からおろしてゼラチンを入れてよく混ぜ、小さいボウルにうつします。
10オレンジゼリーを入れたボウルより大きいボウルに氷水をはり、9を乗せてとろみがつくまで冷やします。

11ブランマンジェにオレンジソースをかけてしっかりと冷やしたら完成です。

アガー
アガーの特徴

原材料
海藻の一種であるカラギーナンやマメ科の種子から抽出されるローカストビーンガムが原材料の商品(パールアガー8、パールアガー深雪、クールアガーなど)と、寒天やゲル化剤が原材料の商品(イナアガーL、ぷるるんアガーなど)があります。
商品によって多少仕上がりに違いがありますが、以下で説明する食感や色、凝固温度などはほぼ同じです。
※ゼラチンが主原料のパールアガー16(ムースやババロア用)もありますが、こちらはゼラチンのカテゴリになると思います。
食感や味
柔らかくふるふるとした舌触りで、市販のゼリーに近い食感になります。無味無臭なので、食材の味を邪魔しません。
色

無色透明です。光沢があり透明度が高いので、食材の鮮やかさを際立たせます。
本来くず粉を使う和菓子は冷えると白濁しますが、アガーを代用すると冷えても透明感が保たれ涼しげに仕上がるため、最近は水まんじゅうの材料として使われることも多いです。
溶解温度と凝固温度
溶解温度は90度以上、凝固温度は30~40度です。一度固まったものは、30~40度で溶け始めます。
使用方法
砂糖とアガーをよく混ぜてから液体に加えます。

向いているお菓子
ゼリー、プリン、杏仁豆腐、水まんじゅうなど
使用の際の注意点
アガーはダマになりやすく、一度ダマになると熱を加えても溶けきれません。アガーと液体を混ぜる時は、しっかりと攪拌しながら少しずつ加えるようにしましょう。
アガーを使った2層のプリンのレシピ
アガーの特徴である透明度の高さを活かしたフルーツゼリーを乗せたプリンです。アガーなら、たんぱく質分解酵素が多いキウイフルーツやパイナップルも問題なく使えます。手軽に作れるように生クリーム不使用のプリンですが、練乳を入れることでコクがアップ!砂糖は、精製度が高いグラニュー糖を使用すると透明度が保たれます。
材料(2~3人用のグラタン皿1個分)

<プリン>
- 卵 2個
- 牛乳 350cc
- 練乳 30g
- グラニュー糖 15g
- アガー 5g
<フルーツゼリー>
- 水 250cc
- グラニュー糖 25g
- アガー 5g
- お好みのフルーツ 3~5種類
※このレシピでは、小玉オレンジ、キウイフルーツ、ブルーベリー、いちごを使用しました。
作り方
1アガーと砂糖を鍋に入れてよく混ぜます。
2牛乳を少しずつ加えて溶かします。
3ボウルに卵と練乳を入れて泡立て器で白身を切るように混ぜます。(泡立てないようにします。)

4こし器で3こしながら2に入れます。
5弱火で沸騰直前まで温め、とろみが出るまで焦げ付かないように木べらで混ぜます。

6こし器でこしながらグラタン皿に流し入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やし固めます。
7プリンが固まったらフルーツゼリーを作ります。フルーツをお好みの大きさにカットし、プリンの上に並べます。

8アガーとグラニュー糖を鍋に入れてよく混ぜ合わせます。
9水を8に少しずつ加えながら混ぜます。
10火にかけて沸騰させ、1分ほどよくかき混ぜたら火からおろしボウルにうつします。
1110より大きいボウルに氷水をはり、10を乗せて粗熱を取ります。アガーは凝固温度が高く、冷やし過ぎると固まるので粗熱が取れればOKです。
12アガー液を7流し入れ、冷蔵庫で冷やし固めたら完成です。

寒天
寒天の特徴

原材料
海藻の一種である、テングサやオゴノリが原材料です。
アガーにも寒天が含まれる場合がありますが、ここでは原材料がテングサやオゴノリ100%の商品について説明します。
食感や味
歯切れがよく、ほろほろと崩れるような食感です。
ゼラチンやアガーよりも強度があり、型から出してもダレずに形をキープできます。
海藻の香りが少し残っている商品もありますが、ほぼ無味で味への影響はありません。
色
透明度は低く、白濁しています。
溶解温度と凝固温度
溶解温度は90度以上、凝固温度は40~50度です。
1度固まったものは、70度ほどで溶け始めます。
使用方法
寒天は溶解温度が高いので、水分と一緒に沸騰直前まで温めしっかりと煮溶かします。粉寒天はふやかす必要がなく、水にそのままに入れて使えます。

向いているお菓子
水ようかん、牛乳寒天、ゼリーなど
使用の際の注意点
寒天は、棒寒天、糸寒天、粉寒天がありますが、お菓子作りには粉寒天がおすすめ。
粉寒天をおすすめする理由は、
- 事前にふやかす必要がない
- 海藻の香りが少ない
- 棒寒天、糸寒天に比べて透明度が高い
という特徴があるからです。
寒天を使った抹茶寒天のレシピ
寒天は強度が高いので、カットしたり型抜きをしたりすることができます。
抹茶寒天にあんこやアイスクリーム、白玉などをトッピングしてパフェ風にしたり抹茶ミルクに入れたりして、自由にアレンジを楽しんでください。
材料(20×15cmのバット1枚分)

- 水 400cc
- グラニュー糖 45g
- 粉寒天 4g
- 抹茶 4g
- 水 15ml
お好みのトッピング 適量
(このレシピでは抹茶アイス、冷凍白玉を使用しました。)
作り方
1抹茶と水15mlを合わせてペースト状にします。

2水、グラニュー糖、粉寒天を鍋に入れて沸騰するまで混ぜながら火を入れます。
3沸騰後、1分ほど混ぜ続けたら火を止めます。
41を加えてよく混ぜます。抹茶ペーストがダマになる場合は、泡立て器で混ぜます。
5型に入れて粗熱が取れたら、冷蔵庫で冷やし固めます。

6しっかりと固まったら2cm角にカットします。

7お好みのトッピングと一緒にお皿に盛ったら完成です。

ゼラチン、アガー、寒天の特徴まとめ
ゼラチン、アガー、寒天の主な特徴を表でまとめました。比べてみると、同じ凝固剤でも種類によって全然違うので面白いですね!
原材料 | 色 | 食感 | 凝固温度/ 溶解温度 | 特徴 | |
ゼラチン | 動物(牛や豚の皮・骨に含まれるコラーゲン) | 透明感があるもののやや黄味がかっている | ぷるんとして滑らかな口溶け | 20度以下 / 50~60度 | 一部の生フルーツに不向き |
アガー | 海藻(カラギーナン)や植物(ローカストビーンガム)、 寒天やゲル化剤 など | 無色透明 | 柔らかくふるふるとした食感 | 30~40度 / 90度以上 | 無味無臭 |
寒天 | 海藻(テングサ・オゴノリ) | 白濁色 | 歯切れがよくほろほろとした食感 | 40~50度 / 90度以上 | 型抜きやカットOK |
ゼラチン、アガー、寒天の特徴を知り使い分けよう

凝固剤という同じ働きをするゼラチン、アガー、寒天ですが、仕上がったお菓子は、食感や見た目に大きな差が出ます。それらはお菓子の美味しさを大きく左右するものなので、基本的に代用はおすすめしません。
それぞれの凝固剤の特徴を知り、適したものを選んで美味しいお菓子を作ってくださいね。