トランス脂肪酸はなぜ悪い? #世界のオイルを巡るレシピと油活のススメ

トランス脂肪酸はなぜ悪い? #世界のオイルを巡るレシピと油活のススメ 

今回はなるべく摂りたくない油、トランス脂肪酸について。

ニューヨーク市で2007年に施行された条例「外食産業でのトランス脂肪酸の使用禁止(一食当たり0.5g未満)」のニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか?
約2万軒ものレストランに影響があったとのこと!凄いですよね。

そんな風に何となく悪いイメージのトランス脂肪酸。
だけど詳しいことは正直よく分からないという方も多いかもしれませんね。

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トランス脂肪酸とは?

何となく悪いと思っているけど具体的には分からないという方も多いトランス脂肪酸。
どんな油なのか、発生する理由と健康への影響を知っておきましょう。

まず脂肪酸の種類と構造図を思い出してください。
常温で固体の飽和脂肪酸と液状の不飽和脂肪酸がありましたね。

脂肪酸構造イメージ
脂肪酸構造イメージ (画像出典)金田油店

不飽和脂肪酸には炭素が二重に結合している部分があり、ここで発生するのがトランス脂肪酸です。
通常二重結合の同じ側につく水素が逆配置になったものをトランス型といいます。
二重結合のある脂肪酸に対して発生しますので、多くの種類があります。

天然の不飽和脂肪酸は通常シス型ですが、牛や羊などの反芻動物は胃の微生物によりトランス型が作られます。牛肉や乳製品には天然のトランス脂肪酸が含まれ、種類はバクセン酸などが多いようです。

世界で規制の対象となっているのは人工的なトランス脂肪酸で、以下2つの状況で発生します。

部分的に水素添加して作られた油

(画像出典)PIXTA

安定性の悪い液状の油(不飽和脂肪酸)に水素を添加すると、酸化しにくい飽和脂肪酸になります。これを硬化処理と言いますが、全部硬化させると硬すぎてバターのような滑らかさが出ないので、部分的に水素添加することでマーガリンやショートニングといった油脂ができます。
その際にトランス脂肪酸が発生します。

原料は大豆油や菜種油、パーム油などで安価なこと、硬さも調整できることから、パンやお菓子へ練り込んでサクサク食感を出したり、からっと揚がるフライ油として加工食品への需要が高くなっています。

トランス脂肪酸はパンやケーキ、ドーナツ、揚げ物、スナック菓子、カップラーメン、アイスクリーム、マヨネーズ、植物性クリームなど多くの加工食品に含まれますので、個人差はありますが思っている以上に摂取しているかもしれません。

マーガリン・ショートニング=トランス脂肪酸、ではない

近年は、ネガティブイメージ払拭のために乳化技術などを駆使し、部分水素添加油脂不使用マーガリンにシフトチェンジしたマーガリンメーカーもあります。また、こめ油を原料にしたマーガリンや環境に配慮したパーム油を使ったオーガニックショートニングなども販売されています。
高まる健康志向へのニーズに応え、トランス脂肪酸量の少ない商品を発売したり自主的に情報開示するメーカーも増えてきています。

高温での精製処理や高温加熱

(画像出典)PIXTA

油の臭いを取るために高温で脱臭処理をしたり、長時間の揚げ物などでもトランス脂肪酸が発生することがあります。
一部のサラダ油や繰り返し使われた油での揚げ物、また揚げ物を電子レンジで再加熱するなど、やはり頻度や量によりますが注意した方がいいでしょう。
またトランス脂肪酸以外にも、リノール酸を多く含む油を高温加熱するとヒドロキシノネナールという過酸化脂質が発生し、その毒性が生活習慣病の原因になるという研究データも発表されています。

健康のためには加熱酸化した油は避けるべきですね。揚げ物は美味しいですがほどほどに。

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トランス脂肪酸の健康への影響

さて上記のように人工的に発生したトランス脂肪酸は身体にどんな影響があるでしょうか。
まず複数の研究データにより、トランス脂肪酸を摂取すると、LDLコレステロールの増加とHDLコレステロールの低下により冠動脈疾患リスクが高まることが分かっています。

実際規制の早かったデンマークやニューヨーク州では心疾患による死者数が減ってきたとの調査報告も出ています。また肥満や脂質代謝異常、糖尿病 不妊や流産、発育障害や記憶力低下、アレルギーにも関わると言われていますから、1%以下ならOKではなく極力0にする方がいいですね※。
妊娠中、授乳中はお母さんが摂る栄養が胎児、赤ちゃんに移行しますし、小さな子どもが食べるお菓子にも植物加工油脂やマーガリン、ショートニングが高確率で入っています。

※WHOの勧告基準は総エネルギー比の1%未満

トランス脂肪酸が増えがちな食生活とは?

(画像出典)PIXTA

トランス脂肪酸をどれくらい摂っているか、これは食生活によってとても個人差があると思います。

  • 毎日外食やデリバリーを利用する
  • お弁当やお惣菜を買うことが多い
  • ファストフードやコンビニの揚げ物などをおやつにしている
  • 甘いものは毎日欠かさない
  • 夜食にカップラーメンや冷凍食品を食べる
  • 粉ものやスナック菓子が大好き
  • 朝ごはんは総菜パンに缶コーヒー

など、特に学生や一人暮らしの若い世代なら思い当たる人が多いかもしれません。
このような食生活では、1%を軽く超えてしまうことも多いと思います。

トランス脂肪酸をどう避けるか

食べるものがない!と思うかもしれませんが、家で普通に和食を作っている分にはさほど多くなることはないと思います。揚げ物も、買うよりなるべく家で揚げるほうがいいですね。
毎日料理するのは無理でも、何か買う時にちょっと意識するだけでも変わってきます。

  • パンやケーキなど小麦粉を使った加工食品の原料をよく確認する
  • 加工油脂が入った原料をさらに揚げたような食品をなるべく控える
  • ふわふわ、サクサクのものに注意する
  • 天ぷらやとんかつは油の回転や継ぎ足しが早そうな人気店で食べる

など、できる時にできるところから気を付けてご家族や次の世代の健康も守りたいですね。

トランス脂肪酸の量は調べられる

指先から血液を数滴採血して送ると分析してくれる機関があります。
オメガ3量や脂肪酸バランスの指標も分かるので、どうしても心配な方や調べてみたい方には参考になりますよ。
そして数ヶ月、食生活に気を付けてまた測ると違いが出るはずです。

一般社団法人 日本リポニュートリション協会 脂肪酸検査
https://www.lipo-nutrition.com/sokutei

ちなみに私も3年前、自分の血中脂肪酸分画を調べてみました。
職業柄もあり、外食はするけどファストフードは食べない、甘いもの、パンや揚げ物はたまに。インスタント食品はほとんど食べない。油には気を使い、家では和食中心です。
そんな生活で、トランス脂肪酸値は0.26%でした。
またそろそろ調べたいと思っています。

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トランス脂肪酸に対する世界と日本の取り組み

(画像出典)PIXTA

現在世界の60ヶ国で食品中のトランス脂肪酸の規制措置や上限値設定がされています。トランス脂肪酸量の表示義務があるのは中国、韓国、メキシコなど21ヶ国、削減を表明している国は56ヶ国。
世界と日本は今、どうなっているのでしょうか。

世界の取り組み

2003年、世界保健機関(WHO)は1日当たりのトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギーの1%未満とするよう勧告を出しました。2015年、米食品医薬品局(FDA)も人工的なトランス脂肪酸について健康への害があると判断、2018年から食品への使用は原則禁止となりました。(部分水素添加油脂)

WHOは2018年に油脂業界、食品及び外食産業界に対して2023年までに工業的に生成されたトランス脂肪酸を排除するための世界的な取り組みに参加するよう声明を発表しています。

そして「工業的に生産されたトランス脂肪酸は心臓病の原因となり世界中で毎年50万人以上の死因と推定される」として各国の取り組みをスコア化しています。

TFA Country Score Card TFA=trans-fatty acids(トランス脂肪酸)
https://extranet.who.int/nutrition/gina/en/scorecard/TFA

日本の取り組み

日本では2012年、食品安全委員会が、食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価結果を公表。
「日本人の大多数の摂取量がWHO勧告基準の総エネルギー比1%※未満であることから健康への影響は小さい。脂質に偏った食事をしている個人においては1%を超えていることがあると考えられるため留意する必要がある」と結論づけました。
※1日に1,900kcal摂取する大人の場合は2g未満

厚生労働省の「食事摂取基準」でもWHOの基準に則って「トランス脂肪酸は人体にとって不可欠な栄養素ではなく、健康の保持・増進を図る上で積極的な摂取は勧められないことから、その摂取量は1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましい。」との記載に留まっています。

しかし、日本人の摂取量が低いというのはあくまでも平均値の話、確実に1%を超えている人も多くいるのが実際のところでしょう。
まずは含有量表示を義務化して欲しいところ。消費者のニーズが、トランス脂肪酸規制に繋がると思います。

望まれる情報開示

日本の消費者庁は2011年、食品製造業者に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」を出して自主的な開示への取り組みを要請しました※。しかし、2019年度のトランス脂肪酸の情報開示に関する調査では、トランス脂肪酸を含む食品の製造業者で消費者への情報発信をしている事業者はわずか14.3%。
開示しない理由のトップは「自社製品のトランス脂肪酸含有量を把握していないから」で、実に31.1%に上ります。

※食品 100g 当たりのトランス脂肪酸の含有量が 0.3g 未満の場合は0表示ができます。

バターの風味が立ち上る鮭ひじきおにぎり

ちなみにバターには天然のトランス脂肪酸が10g中0.19g程度含まれます。研究者によれば天然は大丈夫というわけではなく、トランス脂肪酸の種類によって影響が違うそうなので、解明されるまではどちらも過剰摂取は控えておいた方が無難だと思います。

でも、私はバターは嗜好品として大好きで、ときどきこうやって楽しみます。熱でふわっとくるバターの香気がたまりません。鮭やひじきの塩分に応じて、バターの有塩、無塩を選んでください。
今回は、無塩のよつ葉発酵バターを使っています。

材料(3個分)

  • 炊きたてごはん お茶碗3杯分
  • 焼き鮭(甘塩) 2切
  • ひじき煮 適量※
  • バター ひとかけ

※今回は、水で戻したひじきをこめ油少々で炒め、味醂、酒、砂糖、醤油で汁気がなくなるまで煮ています。

作り方

焼き鮭は皮と骨を取り、少し大きめにほぐす。
少し硬めに炊いたごはんをボウルに取る。
ごはんに水気を切ったひじき煮、バター、鮭を混ぜて、3等分して握る。

ポイント

バターが温かいごはん全体に行き渡るように混ぜてください。
鮭は大きめにするとご馳走感が出ますよ。お好みで湯通しした三つ葉など加えてもいいですね。

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