こんにちは、フリーライターの山田志桜里です。イギリス好きが高じて昨年渡英し、現在ロンドンを拠点に活動しています。連載 #ロンドン女子の英国日記 では、私の大好きなイギリスの魅力やロンドンで見つけたときめきスポットをご紹介していきます。
イギリスといえば、紅茶の国。私がイギリスに来たのは、大学時代の語学留学がきっかけでしたが、現地のティースクールで紅茶を学ぶほど、イギリスの紅茶文化の奥深さにすっかり魅了されてしまいました。
本日のコラムのテーマは「アフタヌーンティー」。美味しいスコーンやスイーツを囲みながら、紅茶を片手に団欒を楽しむ優雅なひと時。日本でもアフタヌーンティーメニューを提供しているホテルやカフェは数多く、今や世界中で楽しまれているイギリスを代表する食文化の一つです。
目次
アフタヌーンティーの歴史

アフタヌーンティーが始まったのは、19世紀の半ば。舞台は、ロンドンから北に80キロほど離れたベッドフォード州にあるベッドフォード公爵の邸宅「ウォーバン・アビー(Woburn Abbey)」です。
当時の食事は、卵やトマト、ソーセージ、トーストなど、ボリューム満点のイングリッシュブレックファストを朝食に食べ、ランチはフルーツや小さなパンなどを軽く。観劇やコンサートに出かけることも多く、ディナーは21時頃に食べるのが一般的でした。

当時ウォーバン・アビーで暮らしていた、7代目ベッドフォード公爵夫人であるアンナ・マリアさんは、ディナーまでの空腹に耐えかね、17時頃に紅茶とともにサンドイッチやカップケーキをいただくようになったそう。
初めは一人で楽しんでいたささやかなティータイムでしたが、お客さんを招いて会話を楽しむようになり、徐々に婦人達の社交の場として定着していきました。これが現在に伝わる「アフタヌーンティー」の誕生です。
三段のティースタンドの秘密

アフタヌーンティーのシンボルといえば、やっぱり三段のティースタンドですよね。スコーンやスイーツが置かれたスタンドは、思わず写真に納めたくなるほどとてもフォトジェニック。ですが、ティースタンドが使われ始めるようになったのは、見栄えを良くするためだけではありません。
当時の貴族の邸宅には、ダイニングルーム(食堂)と応接間が別々にあるのが基本で、アンナ・マリアさんがお客さんを招いていたのは「ブルードローイングルーム(The Blue Drawing Room)」という応接間でした。
ハイテーブルが置かれているダイニングルームとは異なり、応接間にあるのは背が低く小さなテーブル。ティーポットやティーカップなどの茶器を置くと、全てのフードを並べる十分なスペースがありませんでした。小さなスペースでも全てのフードメニューを盛り合わせられるよう、ティースタンドが考案されたのです。
アフタヌーンティーのフードメニュー
ティースタンドに並べられるアフタヌーンティーのメニューは、サンドイッチ、スコーン、スイーツ(カップケーキやショートブレッドなど)が基本。現在は、スープやアミューズなどが提供されることもあったりと、提供されるホテルやカフェによってメニューは様々です。
サンドイッチ
サンドイッチは、別名フィンガーサンドと呼ばれることも。女性達が上品に口に運ぶことができるよう、小さく薄く作られたものが好まれていたそうです。

当時人気だったフィンガーサンドの具材は、なんと「キュウリ」!イギリスの気候はキュウリの栽培に適しておらず、当時新鮮なキュウリを食べることができたのは、高価な輸入野菜を購入できる貴族のみ。キュウリのサンドイッチを振る舞うことは、一種のステータスでもあったんですね。
現在のアフタヌーンティーでは、3〜5種類のサンドイッチが盛り合わせで提供されることが多いですが、キュウリのサンドイッチを提供しているお店もよく見かけます。
スコーン
イギリスのティータイムのお供として定番のスコーン。イギリスに古くから伝わる「クロテッドクリーム」とフルーツジャムが添えられていることがほとんどです。

「オオカミの口」と呼ばれるスコーンの割れ目から、手でパカっと半分に割り、クリームとジャムをたっぷりつけていただきます。
スコーンは、しっかり固めのビスケットタイプのものや、ふわふわ感が残るパンのような食感のものなど、お店によって特徴が大きく違います。
紅茶とスコーンのセットは「クリームティー」と呼ばれ、イギリスのティールームの定番メニューでもあります。アフタヌーンティーより、もう少しカジュアルにティータイムを楽しみたいときにおすすめですよ。
スイーツ
アフタヌーンティーが始まった当時は、カップケーキ(イギリスではフェアリーケーキとも呼ばれます)などの焼き菓子が楽しまれていたと考えられています。

現在は、旬のフルーツを使ったスイーツや、ハロウィンやイースター、クリスマスなどのイベントに合わせてデザインされたスイーツ、キャラクターやアパレルブランドなどの企業とコラボレーションしたスイーツなど、アフタヌーンティーのテーマに合わせて様々なスイーツが提供されます。
アフタヌーンティーのテーブルマナー
いざアフタヌーンティーを楽しもうと思うと、どうしても気になってしまうのがテーブルマナー。アフタヌーンティーをいただく際には、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?
アフタヌーンティーが英国貴族の間で楽しまれていた当時は、食べる順番やティータイム中の振る舞いに関していくつかのルールがあったとされていますが、現在は特に厳格なルールはありません。塩気のあるものから甘いもの、サンドイッチ、スコーン、スイーツの順でいただくのが基本ですが、好きな順番で楽しむのももちろんOKです。
イギリスでいただくアフタヌーンティーは想像以上にボリューミーで、全部食べきれないケースも多々あります。ですが、お持ち帰り用の箱をいただけるお店がほとんどなので、食べきれなかった場合は店員さんに「ドギーバッグ(Doggy Bag)」(お持ち帰り用の箱や袋)をいただきましょう。
また、現在は気軽にアフタヌーンティーを楽しむことができるお店も増えていますが、高級ホテルなどでアフタヌーンティーをいただく場合は、ドレスコードの指定がある場合もあります。予約の際に、ドレスコードの有無を確認しておくようにするとベストです。
アフタヌーンティーで優雅なひと時を楽しんで

かつては貴婦人たちの社交の場として嗜まれていたアフタヌーンティー。お友達とのお出かけは、いつもランチやディナーなどのお食事ばかりという方も、たまにはスコーンやスイーツを囲みながら、英国淑女気分でティータイムを楽しんでみてはいかがでしょうか?
ティータイムの際にはぜひ、今日ご紹介したアンナ・マリアさんや三段のティースタンドのエピソードで話に花を咲かせてくださいね。