「新潟の食」といえば、何を思い浮かべますか?
日本一の米どころであること、そして柿の種なんかが続くかな。柿の種だけでなく、有名な米菓(せんべい、あられ、おかき等)が多いんですよ、新潟は。ロングセラーの『ソフトサラダ』『味しらべ』『雪の宿』『ハッピーターン』『ばかうけ』など、すべて新潟の会社のもの。日々のつまみとして常備してる方も多いんじゃないでしょうか。
そんなことを考えつつ、新潟駅から市街地へ向かえば、信濃川が見えてきます。日本一の長さを誇る大河にかかるのが、萬代橋(ばんだいばし)。石造りの橋でね、横から見ると風情があるんですよ。いかにも堅牢という感じながら壮麗な雰囲気が漂って。
かけられたのは1929年、激震として今も伝えられる新潟地震にも耐えたんだなあ……。国の重要文化財でもあります。
今回は、新潟市民にはおなじみの人気料理を紹介させてください。その名も半身揚げ、『せきとり』というお店が有名なんです。
国産若鶏の半身をじっくりと揚げた、シンプルな一品。だから半身揚げ。
まず香りからたまらんのですよ、食欲を誘うカレー風味。
お店の数メートル前からもうスパイス香が漂ってきて、驚きました! 空腹時に嗅いだらたまらないだろうな。鰻屋さんの煙に誘われるような感覚で、半身揚げに吸い寄せられるような感じ。
鶏に塩してカレー粉をまぶし、片栗粉をつけて、鶏の皮などでとった鶏油(チーユ)で約15分ほど丹念に揚げればできあがり。
『せきとり』さんの半身揚げ、特筆すべきはその「さっぱり感」ではないかと。いや、揚げものとしての満足度はしっかりあるんです。皮はパリッと香ばしく、身は柔らかくうま味しっかり。半身ですからボリューム感もすごい。40代も後半に入ってきた私、最初に半身揚げを前にして正直「全部食べられるかな…」と不安でした。
それが。
ペロッと軽くたいらげてしまえて、自分でもビックリ。なんだろう、このくどさ重たさと無縁な感じは。カレー粉の食欲刺激パワーもあるでしょうが、「夢中で肉塊にかぶりつく」という懐かしい若い食欲をかきたてられて……嬉しかったんです。またビールがうまかったのは言うまでもなく。
「半身だから、これひとつでモモ、ムネ、手羽、ササミにナンコツなんかを一度に味わえるのもいいんだよね」とはお客さんの談。なるほど、確かに!
『せきとり』さんでは半身揚げのほか、蒸し焼きにしたものも売られています。テイクアウトにしたら……これまたよかった! ホロホロと実に柔らかく蒸しあげられて、たっぷりと付いてくる鶏のスープが濃厚で。しゃぶり尽くすように食べました。パウチ状にして包んでくれるので、持ち帰りやすいのもうれしい。
残ったスープを翌朝、雑炊にしたらおいしかったのなんの。
ああ、また食べたい。
新潟駅から車で10分ぐらい。焼き鳥やナス漬け、煮込みもおいしいと聞きます。今度訪ねられたら、そのへんを肴にじっくりやって、シメに半身揚げにまたかぶりつきたい。
半身揚げ(半身からあげ)&むしやき、時価とありますがそれは大きさが一定でないから。大体1,500円前後です。ちなみに通販もありますよー。
新潟の子どもたちは小さい頃に半身揚げを知って、大好物になる子が多いらしいんです。「クリスマスには絶対欠かせない!」なんて声も。『せきとり』さんが発祥と言われ、半身揚げを出すお店は他にもいくつかあり、新潟市およびその周辺地域の名物のようです。
上の写真は新潟市からのぞむ日本海、向こうにぼんやりと佐渡島が見えるの、分かります?
佐渡島も素敵なところらしいんです、イカがうまくて、素晴らしいソーセージを作る人がいるとも聞くな。ああ、行ってみたい。
このところ北陸の話が続きました。
次回はまた違うエリアのおつまみをご紹介しますね。
せきとり本店(公式サイト兼オンラインショップ):https://sekitori-shop.com/
【当記事につきまして】
ライター白央篤司さんが企画し、掲載許可を得て記事を作成しました。