もし手元にチーズがあり、お酒を飲みたい気分だったとしよう。さあ、何を飲もうかな…というとき。
真っ先にワインが浮かんではこなかっただろうか。もちろん、ワインとチーズは人類が生み出した鉄板の組み合わせ。誰がどう合わせたってだいたい美味しい。でも、実はビールもワインに負けず劣らずチーズと合うのだ。
もちろん、「ビール」「チーズ」と一口に言ってもどちらも種類は多様。お互いに色々な味わいがあるからこそ、合わせる楽しさも広がる。
ビアエッセイストおすすめのチーズとビールのペアリング術をご紹介したい。
目次
修道院ではビールとチーズがつくられている。
まずおすすめしたいのが、ベルギーなどに多くある修道院ビールとチーズの組み合わせ。修道院みたいな宗教施設でビール??と驚いてしまうかもしれないが、実は中世ヨーロッパのビールは修道院を中心に造られていた。また、同じ敷地内でチーズが製造されていることもある。そんな土着レベルで一緒だった両者が合わないわけがないのだ。
用意した修道院ビールはシメイ。いくつか種類があるなかで、もっともヘビーなブルーだ。シメイビールで洗って作られるチーズもあるが、今回合わせるのはもちっとした食感の白カビチーズ、ブリー。

香ばしさと同時に柑橘系のフルーティーさも感じられる、アルコール度数9%のフルボディビールと濃厚なチーズが口のなかで見事にマッチ!ブリーチーズは濃厚さで濃いビールにしっかり寄り添いながらも、それほどクセがないためビールの味わいの世界観を尊重してくれる感じがデキるやつという印象だ。
クラッカーとベルジャンホワイトは小麦が通底。
チーズに欠かせないお供と言えば、クラッカー。
単調になりがちなチーズの食感にサクっとしたメリハリを与えてくれるのみならず、香ばしさや小麦の香りをもたらしてくれてペアリングの世界を深めてくれる。
そんなクラッカーを挟みながらのチーズタイムに合わせたいビールが、同じ小麦を使った白ビールのベルジャンホワイト。もしくはドイツの小麦ビール、ヴァイツェンでも間違いなく合う。小麦系のビールは味わいが力強いわけではないので、カマンベールのようなクリーミーでやさしい味わいのチーズと合いやすい。

ベルジャンホワイトのほのかな酸味に加え、副原料で使われているオレンジピールの風味やコリアンダーシードのスパイス感も感じられるはず。そこで一口クラッカーを齧るだけで、味わいがまたグッと重層的になるのが面白い。ぜひご堪能を。
強いビールと強いチーズで新しい扉を開ける。

ホップの香りが特徴でビールとしての個性が強いIPAに合わせるとしたら、イタリアチーズの王様とも称されるパルミジャーノレッジャーノがおすすめ。食感はしっとりしていて、噛めば噛むほどじわっじわっと旨みが出てくるようなこのチーズは、個性が強いので繊細なビールに合わせると味の強さで圧倒してしまいがち。
その点、IPAはパルミジャーノレッジャーノを受け止めるどころか、少しマイルドにしてくれるのがすごい。チーズとレモンが昔からよく一緒に使われるように、ホップの柑橘系の香りとチーズの組み合わせも最強。比較的穏やかなペアリングに飽きてしまった方は、このIPAとパルミジャーノレッジャーノを一緒に口にしてみると、新しい食世界の扉がきっと開くはず。ぜひお試しを。
ビアスタイル別!おすすめチーズ合わせテク。

ビールの数あるスタイルで一番違和感なくチーズと合わせられるのが、ベルギーのフランダースレッドエールかもしれない。というのはこのエールビール、液色が赤いうえに酸味もあって、まるで赤ワインのようだから。チーズを使ったグラタンやベーコン巻き、チーズフォンデュといった料理と合わせるのも最高だ。
変化球ネタで面白いのが、ラオホという燻製ビールとチーズを合わせるテクニック。原料の麦芽を燻すことでスモーキーな香りが特徴のラオホは、燻製したら美味しい食材との相性がいい。
そう、燻製する食材の王様と言えるチーズと抜群に合うのだ。もちろん、スモーク済みのチーズとラオホも鉄板なのだけど、あえて燻製していないチーズとラオホを合わせて、口のなかでスモークを完成させるのが楽しい。
デザートでおすすめなのが、スタウトやポーターという黒ビールとチーズケーキのコンビ。黒ビールの香ばしさとチーズケーキの甘酸っぱさが奏でるハーモニーはまさに至高だ!
多くの人がチーズ&ビールを愉しむ時代へ。

チーズと言えばワイン、とつい考えてしまいがちだけど、チーズとビールのコンビにも豊かなペアリングの世界が広がっている。クラフトビールが市民権を得るのと同時に、少しずつそのペアリングの妙は認知され始めているものの、まだまだこれから。最近はどこのスーパーでも色々なチーズが詰まったアソートが出ているし、コンビニでは各種クラフトビールも並んでいる。
チーズ&ビールの時代はすぐそこまで来ている!と僕は考えている。