2020年が終わる。
年初にこんな1年になるなんて、一体誰が想像できたであろうか?全くもってイレギュラーな年だったからこそ、年末年始は例年と変わらず大切な人とのんびり過ごしたい。
年越しそば、宴会、おせち料理、初詣…。そんな年の瀬から年明けの恒例行事には、実はヴァイツェンという白ビールがぴったり。
ビアエッセイスト流の年末年始の楽しみ方をご紹介!
目次
そもそもヴァイツェンってどんなビール?
上の文章を読んで、「ヴァイツェン?」「白ビール?」とハテナマークが浮かんでいる方もいらっしゃるかもしれないので、まずはヴァイツェンというビールを説明したい。
ビールには種類(スタイル)が150種類以上あり、大麦が原料で金色をまとって苦みがあるビールは「ラガー」という系統の「ピルスナー」という1つのスタイルでしかない。
ビールは酵母の違いでラガーという“すっきり”系統 と エールという“フルーティー”系統に大別できるのだけど、ヴァイツェンはエール。ヴァイツェンの大きな特徴を3つ挙げるなら、
- 小麦を使用
- バナナのような香り
- 苦くない
で、いわゆるフツーのビールとは全く違う個性がある。
ドイツ南部のバイエルン地方生まれのスタイルで、今や全世界で(もちろん日本でも)造られている。ビールなので大麦を使うのだが、半分以上小麦も併用するヴァイツェンはそれゆえ“白ビール”と呼ばれたりもする。醸造前の小麦を見ると、確かに真っ白だ。
バナナのような香りは酵母由来。エール酵母の1つであるヴァイツェン酵母が、アルコールと炭酸に加えてフルーティーな香りも生んでくれる。苦みの元であるホップのキャラクターは弱いので、ほとんどと言っていいほど苦みを感じない。ビール=ピルスナー=苦い、と思って敬遠している、もったいない方に真っ先に薦めたいスタイル。それが、ヴァイツェンなのである!
醤油と合う。つまり、和食と合う。
で、なんでそのヴァイツェンを年末年始に薦めるのか?と言うと、年越しそばやおせち料理との相性が抜群だから。
何となく和食と言うと、苦みがしっかりある大人向けのラガービールや辛口の日本酒などが横にあるイメージがある。苦みが弱くて、バナナのようなフルーティーな香りのビールなんて合うの?と率直に感じるのが普通だと思う。ところが、これには科学的に説明できる理由がある。
和食で使う醤油の香気成分の中には酢酸イソアミルというものがある。日本酒が好きな人は「吟醸香」を生み出す成分の1つとして記憶しているかもしれない。これがバナナのような香りがするのだ。そう、ヴァイツェンと全く同じ。また、フェノール香というスモーキーな香りも共通しているし、和食の旨みはビールのアミノ酸やタンパク質とも重なる。香りや旨みが通底しているお酒と飲み物が合わないはずはないのである。
そばとヴァイツェンが合うことは体験的に知られていたが、昨年ついに島根のクラフトビールメーカーが「そばいつぇん」なるそば専用ヴァイツェンをリリースしたほど。醤油で味つけた旨みのある一品も多いおせち料理もヴァイツェンで決まり!だ。
困ったときの救世主「ヱビス 華みやび」。
わかった!じゃあ、ヴァイツェンを買ってみよう!
と思った方にはぜひ、地元のクラフトビールメーカーのヴァイツェンを買っていただきたい。
これは、私が暮らしている鳥取県は大山Gビールのヴァイツェン。
ヴァイツェンは人気のスタイルなので、多くのクラフトビールメーカーが造っているはず。そして、もし可能であればヴァイツェングラスで飲み干したい。タンパク質多めのヴァイツェンは泡立ちが命。中央部がすぼんでいることで泡が再生され、先もすぼんでいることで香りも閉じ込める…まさにヴァイツェンを美味しくいただくためだけにあるグラスだ。
いやいや、クラフトビールも専用グラスも揃えるの大変だよ!
という方にはヱビスの「華みやび」という商品がある。これを普通のグラスに注げばOK。
はっきり謳っているわけではないが、エールであり、バナナのような香りのホワイトビールであることからヴァイツェンと言って差し支えない。白を基調にした、正月らしいおめでたいデザインなのも気持ちを盛り上げてくれる。大きめの酒屋には置いてあることが多いので、ぜひゲット!
当然のことながら日本酒よりも低アルコールのヴァイツェン(4.5~5%程度)。酔い過ぎることはないだろう。食事とも合うし、初詣の帰りにゴクゴク飲めたりもする。
年末年始のお供の新定番に導入してみてはいかがだろうか?