犬と暮らすと、可愛らしいしぐさや人に向ける優しさに心が癒されます。
今回は、これから初めて室内犬を飼う方に向けて基礎知識を解説します。
なお、賃貸物件の場合は、まず住んでいる物件がペット飼育可能なのかを管理会社に問い合わせる必要があります。
その上で世話やしつけの方法や、快適で安心して犬と過ごすための環境整備など、いくつかの注意点やポイントをしっかりと勉強するようにしましょう。
目次
犬と室内で暮らすメリット、デメリット
犬と暮らすと見た目や振る舞いの可愛らしさや、彼らが人間に向けてくれる無償の愛によって幸せな気持ちになります。
実はこれには科学的な根拠があり、人間と犬はお互い触れ合うことでオキシトシンと呼ばれる愛情や幸せな感情に関係するホルモンが多く分泌されると分かっています。つまり室内で犬と触れ合いながら暮らす最大のメリットは、幸せな毎日を過ごせることだといえるでしょう。
一方、室内犬と暮らすことはメリットばかりではありません。
- 季節の変わり目に抜け毛で汚れる
- 布製品に匂いが付く
- 吠え声や足音などが気になることがある
- 自由に旅行へ行きにくくなってしまう
など、生き物を飼育する上で、どうしてもなくすことができないデメリットも生まれてしまいます。
しかし、抜け毛の少ない犬種を選ぶ、汚れにくい部屋を整備する、正しいしつけをするなどのいくつかの対策をきちんと行うことで、これらのデメリットを軽減できます。
犬種や性別ごとの特徴と、室内飼いの注意点
犬には、非常にたくさんの種類があり、室内飼いにあたって気を付けるポイントが違います。またそもそも、室内飼育にあまり向いていない犬種もいます。
さらにオスやメスの違いによっても注意点が変わります。
大型犬or小型犬
チワワやトイプードルのような小型犬とゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーのような大型犬を比べると、小型犬の方が室内飼育に向いているといえるでしょう。
身体が小さいため、マンションのように室内空間に限りがある環境でも飼育しやすいためです。
オスorメス
オスとメスのどちらが良いかは飼い主の考え方によるため、はっきりした答えはありません。
オスとメスのもっとも大きな違いは、オスには尿で縄張りを示すマーキング行動があること、メスには年1~2回の生理(ヒート)があることです。
いずれも室内を汚したりする可能性がありますが、マーキングはしつけと去勢手術、生理は避妊手術で対策ができます。
但し、オスのマーキングはしつけや去勢で必ずなくなるとは限りません。メスの生理は避妊手術でなくなりますが、手術費用はオスの去勢手術に比べてやや高めです。
性格に関しては、オスのほうが活発、メスのほうが落ち着いていてしつけがしやすいという傾向があるものの、個体差があります。
シングルコートorダブルコート
犬は犬種によって毛の生え方が異なります。
トイプードルなどの犬種でみられるシングルコートは季節による生え変わりがありません。そのため抜け毛で部屋が汚れにくいですが、トリミングに通って毛の長さを管理してあげる必要がある犬種が多いです。
一方、柴犬などの犬種は毛がオーバーコートとアンダーコートの2種類からなるダブルコートで、春と秋の換毛期になるとアンダーコートが生え変わります。この時期は抜け毛も多く、頻回のブラッシングが必要になります。
抜けにくさを重視するか、トリミングの要否を重視するかは、飼い主の判断です。
シングルコートでも抜けやすい犬種や、ダブルコートでもトリミングが必要な犬種もいるので、犬種の候補が絞られたらその特徴を詳しくチェックするようにしてください。
室内犬と生活するために必要なこと
室内犬と暮らすためには備品や毎日の世話が必要になります。さらに危険な感染症から身を守るためのワクチネーションや、トラブルや問題行動を避けるためのしつけなどの知識も覚えておきましょう。
必要な備品
犬を飼うことが決まったら、餌入れや水入れ、首輪やリード、トイレなどの備品の準備が必要です。
インターネット通販でも購入できますが、犬種や成犬になったときの身体の大きさによって選択が変わる場合もあるので、ペットショップで店員さんに確認しながら購入すると安心です。
また、クレート(犬小屋)は犬の精神的な隠れ家にもなるため、室内飼いであっても購入することをおすすめします。
必要な世話
犬を飼う場合の必要な世話は、主に餌やりと散歩です。
餌やり
仔犬の時期のもっとも大事なお世話のひとつは、正しい餌やりと水分補給です。
生後数ヶ月の仔犬では1日に5~6回の食事が必要で、フレーク状の餌に犬用のふりかけをかけたものや、お湯でふやかしたドッグフードなどを与えます。また、水入れは犬が水を飲みやすい場所に設置し、常に清潔な水を絶やさないようにします。
氷はお腹を壊す原因になるので、夏場の暑い時季でもやめましょう。
散歩
感染症予防のため、犬の散歩は混合ワクチンと狂犬病ワクチンが完了してからにしましょう。最初は短い距離から始め、徐々に距離を延ばしていきます。
糞尿の処理などのマナーは非常に大切です。散歩中の糞は持ち帰り、尿は草地などの吸収性のよい場所にさせ、水で流すようにしましょう。
必要なしつけ
室内で犬を飼うためには、人の生活に犬が馴染むためのしつけをする必要があります。
トイレのしつけ
トイレのしつけは決められた場所で排せつできるようにするしつけであり、犬がそわそわとあたりを歩きはじめたタイミングでトイレに誘導し、排せつに成功したら褒めることを繰り返して行います。
排せつが失敗してしまったときにも決して叱らず、排せつ物をきれいにふき取ります。
かみぐせのしつけ
かみぐせのしつけは犬が人を噛んではいけないことを教えるしつけであり、遊ぶときはおもちゃを使い、手や足などにじゃれつかせる遊びをしないことが重要です。
犬が身体を噛んでしまったときは痛いことを伝え、少しの間無視するようにしましょう。
無駄吠えのしつけ
無駄吠えのしつけは、要求吠えや興奮吠えを抑えるしつけです。
人を呼ぶタイミングでの吠えは無視、興奮しているタイミングでの吠えは一度落ち着かせるようにします。ひとりでいることが寂しく吠えている場合には、一緒にいる時間をより長くして安心させ、徐々にひとりでいる時間を伸ばすようにしてください。
また犬をクレートでお留守番させる「クレートトレーニング」は、災害時など部屋で犬を飼えない状態の備えになります。
ワクチネーション
犬には、ワクチンで防げる致命的な感染症がいくつかあります。これらの感染症予防のため、混合ワクチンと狂犬病ワクチンは必ず接種するようにしてください。ノミダニの予防、フィラリアの予防も同様に重要なので行うようにしましょう。
特に狂犬病ワクチン接種は飼い主の義務として法律で定められているため、室内で飼育するからワクチンを打たないという選択肢はありません。
室内犬が快適に暮らせる環境
必要な備品を揃えて必要な世話をし、しつけとワクチンを済ませれば全て問題なし、というわけではありません。
犬と人が共に安心して室内で過ごすためには、部屋づくりなどの環境整備も非常に大事です。
犬にいたずらさせない部屋づくり
室内犬によくある事故として、誤食・誤飲があります。これらの事故は犬の命に関わることがあるため、しっかりと防がなくてはなりません。
これらは犬のいたずらがきっかけになることが多いため、犬にいたずらさせない部屋をつくることはもっとも効果的な対策のひとつです。
犬の足や口が届く場所に洗剤や電気ケーブル、犬用ではないおもちゃなどを置かない、あるいは犬が壊せない容器に収納するようにしましょう。
温度管理
犬が室内で快適に過ごすためには適切な温度管理をする必要があります。犬は発汗による気化熱で体温を下げることができない動物のため、扇風機による温度管理はできません。そのためエアコンが必須です。
春や秋など、人間にとって過ごしやすい気温の時期でも、部屋の中は思いのほか暑い・寒いという状態になることがあるため、1年中エアコンを付けたままにするのが理想です。
まとめ
今回は室内での犬の飼い方を解説しました。最後に記事の内容を簡単にまとめておきます。
- 犬と室内で暮らすことで人間は幸せな気持ちになる。
- 犬には多くの種類があり、室内飼育に適している犬種もいる。
- 犬を室内飼育するためには備品の準備が必要である。
- 室内犬には正しいお世話としつけ、ワクチネーションを行う。
- 犬を安心して飼育できる部屋には、いたずらさせない環境、エアコンでの温度管理が必要である。
犬と共に生活することは、人間に非常に大きな幸福を与えてくれます。
しかし、犬との生活は楽しいことばかりではありません。犬種にもよりますが、彼らは平均13~15年というペットとしては比較的長い寿命を持ち、病気になってお金がかかることもあります。
また、少しばかりの可愛らしいわがままを押し付けてくることだってあるかもしれません。
犬を飼うことには、終生飼養の義務が法律で定められています。犬と暮らすことを決断する前に一度、よく考えておきましょう。
◇参考文献リスト
犬と猫の問題行動の予防と対応(緑書房/水越美奈・著)
犬と猫の行動学_問題行動の理論と実際(学窓社)
環境省 動物愛護法の終生飼養義務について
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2509a/full.pdf