大阪発クラフトビール!車業界から転身した女性が手掛けるMARCAの美味しさに迫る

大阪発クラフトビール!車業界から転身した女性が手掛けるMARCAの美味しさに迫る

大阪にとびきり美味しいクラフトビールがある。

手掛けるのは、美大出身・元カーデザイナー。
この転身、異色のキャリアに映るがそうではない。
むしろ「同じでしかない」という。

その心とは。

ビール造りとモノづくりが交差する、関西のユニーク醸造所をビアエッセイストが訪ねた。

工場と神谷さん
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新スポットに登場したビールのスタンド。

賑やかで雑多なイメージの強い大阪のなかで、湾に面し運河に囲まれて伸びやかな空気感をもつ大正区は独自の存在感を放っている。

タグボート大正入口

この区の玄関口である大正駅から歩いてすぐの尻無川のウォーターサイドに2020年、「TUGBOAT TAISHO(タグボート大正)」というスポットが誕生した。”つくるが交わる”をテーマに飲食店やホテル、イベントスペースなどを備えた複合施設で、その水辺のロケーションもあって明るく開放的な雰囲気に満ちている。

この施設内のフードコートの一角にある「Beer stand MARCA(ビアスタンドマルカ)」は、常時10種類ほどのクラフトビールが飲める人気急上昇中のお店。どれを飲んでいいか迷ってしまう人向けに4種類の飲み比べセットを用意。その4種の選択すら迷ってしまう場合は、スタッフにおすすめを任せてしまって問題ない。

スタンドで購入したら、すぐに川を臨むウッドデッキに向かいたい。心地よい風を浴びて飲むクラフトビールは「最高」の一言。元々質の高い一杯がさらに美味しく感じるに違いない。

このスタンドでは、“MARCAであること”より“ビールであること”を前面に出しています。お客さんとしては美味しければどこでもいいので、あえて自分達の名前を強調することもないかなと思ったんです 。

そう話すのは、「Beer stand MARCA」のビールを造る醸造家で創業者の神谷みずきさんだ。

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多彩なスタイルで関西のビール好きを魅了。

TUGBOAT TAISHOからのんびり歩いておよそ15分。落ち着いた住宅街の雰囲気が漂う西長堀駅からすぐのところに醸造所「MARCA BREWING」はある。ちなみに、「MARCA」は「MARK(マーク)」のスペイン語だが、ご実家のみかん農園で使っている神谷の頭文字の「か」を丸で囲んだトレードマーク、つまり「丸か」から着想を得たのだそう。

「Beer stand MARCA」のビールをはじめ、全国のビアパブに卸すビールもすべてここで造られている。もちろん、できたてをその場で飲むこともできる。ただし、敷地の大部分が醸造設備のスペースとして割かれているため、細い通路で立ち飲みするしかない。それでも評判を聞きつけて関西のビール好き達がこぞってやって来る。

飲み比べセットはこちらでもオーダー可能。神谷さんは提供するビールのスタイルについて、こう話しながらサービングしてくれた。

ビールの世界には流行りもありますが、まずは“売れるビール”かどうか、自分が美味しいと思えるかどうかが大事ですね。スタンダードなスタイルを押さえながら、目を引くアイテムも揃えたいと考えています。出汁を使ったエールや舞茸を使ったIPA、リンゴを使ったシードルや蜂蜜を使ったミードなども造っています 。

この日のラインナップはアンバーエール、ピーチシェイクIPA、ホッピーヴァイツェン、チョコレートブラウンの4種。確かに定番と意外性のあるスタイルがいいバランスで同居している。

実際に飲んでみてどれもフレッシュで美味しかったが、とりわけアンバーエールのクオリティーの高さには驚いてしまった。一体どんな思いで醸しているのか、そもそもどのような経緯でお店を始めたのか。神谷さんに聞いてみると、”つくるが交わる”をテーマとしたスポットに誘致された理由がわかった。彼女自身、根っからの作り手なのだった。

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美大から車のデザイン、そしてビール造りへ。

神谷さんが醸造所を設立したのは2015年4月のこと。それ以前は車のデザインの仕事をしていたという。美術大学時代は工業デザインを専攻していた。

元々絵を描いたりモノを作ったり、何かを計画したりするのが好きだったので自然な流れで美大に進学しました。工業デザインを学ぶなかで車産業に興味を持ち、車のデザインをするためにトヨタに入社。その後、結婚して夫の職場が大阪になったので退職して愛知から大阪へ。大阪ではダイハツ工業で同じカーデザインの仕事を得ることができました 。

20代から30代にかけてバリバリ働くなかで、息抜きによく飲んでいたのがビール。中でも神谷さんのビール観を変えたのはドイツの白ビール、ヴァイツェンだった。

私はヴァイツェンから入りましたね。こんなビールがあるんだ!って。それからベルギービールを知って、アメリカンクラフトを飲むようになって最後に日本のクラフトビールに行き着きました。私はモノづくりや製造業が好きなんですね。ただ車だとその一部分しか関われません。でも、ビールだったらモノづくりの全てに関われそうだし、社長になれると思ったんです(笑)。デザインの仕事も充実して楽しかったんですけどね 。

車業界からビール業界へ。誰もが全く違う業界に大転身したと思ったが、神谷さん本人だけはそう捉えていなかった。

工場増設と新店舗オープン。激動期を経て。

違いよりも共通点しか感じません。どちらも工場があって官能に訴える品質で製品を作りあげ、営利活動をするという点では全く同じ。違いがあるとすれば、運転と飲酒が両立しないことくらいです。

その言葉の通り、ゼロからビール造りを始めるというよりむしろ、カーデザイナーとして培った知識や経験を武器にビール造りに挑んだ神谷さん。国内のビアコンペティションに出品したダブルコーヒーアンバーが金賞を受賞したのがオープンから3年、という短期間だったのも快挙ではなく必然だったのかもしれない。周囲の高い評価で生産量は限界を迎え、昨年4月には工場の増設に踏み切った。大胆な決断もしている。

以前はカフェ業態で運営していたので座って飲食できるスペースもありましたし、フードメニューもそれなりに充実していたんですが全てやめて醸造設備を置くことにしました。ここは第一に工場なんで。その後、2店舗目を検討しているときにTUGBOAT TAISHOから声がかかって、すごくありがたかったですね。

 「本当にモノづくりしか興味ないんですよね」と微笑む神谷さん。車業界時代には販売の経験はなかったのでモノを売ることにはまだ苦手意識があるようだ。

そこに関しては得意な人に任せるという選択肢もあると思いますが、まだうちは商品ボリュームがないので人を雇うほどではありません。最近、ようやく手が空いてきたので次の展開を考えたいと思っています 。

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今後も掘り下げたい「ビール=モノづくり」という視点。

準備期間、創業、工場増設、新店舗オープンと駆け抜けてきた神谷さん。休みの日はあるのか聞いてみると。

オフはありません。お客さんもいらっしゃるので、丸一日休みの日はないですね。でも、全く苦ではないしストレスもないんです。夫も最初に出資してくれて、後は放っておいてくれています。お店にもよくフラっと寄ってくれますよ 。

家族にも支えられながら、ビール造りをする神谷さんにとって醸造所は「理想のモノづくりを追求できる場所」に他ならない。

私にとって良いビールとは品質の高いビールです。ビールってカルチャー目線で語られがちだと思うのですが、うちはメーカーの目線。そう考えると、ビールって面白いですよね。モノづくり、カルチャー、農産物、嗜好品と様々な切り口がある。企画の余地がまだまだたくさんあります。その中でも私はモノづくりというアプローチで考えることに面白さを感じています。企画から製造、販売と自分の理想を貫けたらいいですよね。でも、やっぱりもうちょっと大きい工場が今は欲しいです(笑) 。

神谷さんはそう笑って先を見据える。日本のお家芸、モノづくりの精神がしっかり息づくビール造り。そんな神谷さん渾身の一杯を求めて、今日もビールを愛する人達がMARCAには集まっている。

Beer stand MARCAの基本情報

住所:大阪府大阪市大正区三軒家西1-1-14 TUGBOAT TAISHO内
電話番号:06-6710-9487
営業時間:[月~金]16:00~23:00[土・日・祝]11:00~23:00
定休日:不定休

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MARCA BREWINGの基本情報

住所:大阪府大阪市西区北堀江3-7-28 1F
電話番号:06-6710-9487
営業時間:15:00~21:00
定休日:月曜、年末年始
※スタッフ少数のため、営業時間中でも電話応対できない場合があります。
公式サイト:https://beermarca.com/

【当取材記事につきまして】
ライター矢野竜広が企画・取材依頼し、記事を作成しました。

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