イタリア生まれの冷たくておいしいアイス、ジェラート。日本では1980年代頃から路面店で販売されるようになり、あっという間に広まりました。今ではイタリアンレストランで、食後のデザートに出されるなどお馴染みの存在に。
ところがアイスクリームとの違いについて聞かれると、パッと答えられない人も多いのでは。知っているようで意外と知らないジェラートについての雑学を、株式会社ドナテロウズ ジャパンの社長であり、日本ジェラート協会で副会長を務める矢部亮一さんに伺いました。
目次
イタリアの凍ったお菓子「ジェラート」とは
日本のアイスは乳成分の量によって、法令でアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに分類されています。さらに、乳成分を含まない果汁を使ったシャーベットなどは氷菓と呼ばれます。
ジェラートは成分上アイスミルクや氷菓に分類されていますが、“ジェラート(gelato)”とはイタリア語で「凍ったお菓子」を意味する言葉。そのためイタリアではアイスクリームもシャーベットもすべて“ジェラート”と、ひとくくりに呼ばれているのだとか。
アイスクリームとジェラートの違いは乳成分の量だけではありません。材料を撹拌する際に混入する空気の量を“オーバーラン”といいますが、このオーバーランが高いとさっぱりとした軽い味になり、低いとねっとり重い味わいに。アイスクリームは一般的にオーバーランが60~100%、ジェラートは20~40%程度とされています。口のなかに入れたときに、アイスクリームは濃厚な味とふわっとした口当たりなのに対して、ジェラートはアイスクリームより軽い味なのにねっとりとした舌触りがします。
「イタリアではピザやパスタなどこってりとした食事のあとに、ジェラートを食べるんです。デザートとしての甘味だけでなく、口の中をさっぱりさせる目的もあるんですよ」と矢部さん。
発祥の地ではそのような目的でも食べられているとは驚きでした。
ジェラートのおいしさをさらに深堀り
東京・新宿タカシマヤタイムズスクエアにイタリアンジェラートの専門店「Donatello’s(ドナテロウズ)」(以下、ドナテロウズ)を出店している矢部さん。より詳しく、ジェラートのおいしさの秘密を伺いました。
矢部さん「このお店はタカシマヤタイムズスクエアのオープン時から営業しています。海外発のジェラート店が多いなかで、ドナテロウズは1986年に創業した日本発信のイタリアンジェラートショップです。当時、外で食べるアイスといえばハーゲンダッツやサーティワンが主流の時代。まだジェラートのお店は少なくて、どうやったら日本人に受け入れてもらえるか味の試行錯誤を重ねました。」
日本人に好まれているのはコクがあって甘いアイスクリームですが、イタリアンジェラートはさっぱりとした味わいが特徴。日本人好みの味を作るため、ジェラートのさっぱりとした味わいとアイスクリームのようなコクの両方を兼ね備えた商品を開発したそうです。いまではこの味に魅了されたファンがお店のリピーターとなって訪れているといいます。
矢部さん「アイスクリーム屋さんって、注文して商品を受け取った後にお会計をする所が多いでしょう?でもジェラート屋ではお会計が先。なぜかというと、柔らかいからケースから出したらすぐに食べて欲しいんです。」
ジェラートの特徴のひとつである口溶けの柔らかさ。冷凍ショーケースは食べごろの-8℃~-10℃に設定。加えて同店では開店時間前にスタッフが時間をかけて丁寧に手作業で練り上げて、すべてのフレーバーに空気をたっぷりと含ませていました。見ているだけで腕が痛くなりそうな重労働ですが、これもおいしく食べるためのひと手間なのだそう。
特に味わって欲しいフレーバーを尋ねると、こんな答えが返ってきました。
矢部さん「日本で人気のアイスのフレーバーといえばバニラとチョコレート、いちご、抹茶ですよね。でも、ジェラートならば味わって欲しいのは断然ミルクフレーバーです。うちではメニュー名をホワイトクリームといいます。バニラアイスは牛乳に卵、バニラビーンズを入れて作りますが、ミルクのジェラートはおいしい牛乳に生クリーム、砂糖というシンプルな材料。新鮮で濃厚な牛乳本来のおいしさをそのまま味わえますよ。旅行で牧場に行くとソフトクリームやジェラートを作って売っている所が多いでしょう?あれは自分の牧場の新鮮な搾りたての牛乳を使って作れるからなんです。」
なるほど、牧場のソフトクリームやジェラートにそんな理由があったとは思いませんでした。
ジェラートをもっと広く普及させたい
取材に伺った「ドナテロウズ タカシマヤタイムズスクエア店」には「ジェラートマエストロ」を名乗る社員が1名在籍し、ジェラートの開発、店舗衛生管理を行っているのだそう。全国で50人ほどしか認定されていない日本ジェラート協会の資格で、“正しい知識をもって、安全で安心な、美味しいジェラートを提供すること”を目的に2011年から始まったとか。
店頭には18種類のフレーバーが並びますが、毎月「ジェラートマエストロ」と矢部さんが二人三脚で新しいフレーバーを開発。何種類も試作を重ねて、最高のものだけを提供しているといいます。
2015年には「ジェラートマエストロコンテスト」に参加。“週末に女性が食べるジェラート”をイメージし、ブルガリア産のローズウォーターを使って開発した商品が審査員特別賞を受賞。今では同店の人気フレーバーになっています。試食させていただきましたが、口に入れた瞬間に香り高い芳香が広がってまるでバラ園にいるかのよう。はちみつのほんのりした甘さも絶妙でした。
「もっと日本の人にジェラートを広く知って欲しい」と語る矢部さん。
前出の協会では8月27日をジェラートの日に登録しました。かの名作映画『ローマの休日』の劇中で王女役のオードリー・ヘップバーンが食べていたのがジェラートだったことから、この映画の公開日を記念日に登録したそうです。
今年の夏休みは、おいしいジェラートを味わってみては。アイスクリームとの味の違いを、みんなで食べ比べするのも楽しそうです。
Donatello’s(ドナテロウズ)の基本情報
<新宿タカシマヤタイムズスクエア店>
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2 タカシマヤタイムズスクエア12F
電話:03-5361-1855
営業時間:11:00 – 23:00
<東急フードショースライス 五反田店>
住所:東京都品川区東五反田2-1-2 +Qスタイル 五反田東急スクエア2階
電話:03-3444-6710
営業時間:10:00 – 21:00
<湘南GATE店>
住所:神奈川県藤沢市南藤沢21-1-202
電話番号:0466-55-1501
営業時間:10:00 – 20:00
公式サイト:http://www.donatellos.co.jp/
オンラインショップ:http://www.donatellos.co.jp/webshop.html
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【当取材記事につきまして】
ドナテロウズ様より取材のご招待を受け、記事を作成しました。