アレルギー専門医に聞く!アレルギーがなくても知っておきたい最新常識2020

アレルギー専門医に聞く!食物アレルギーがなくても知っておきたい最新常識2021

入園・入学により、子どもの交友関係は一気に広がります。新しくできるお友達の中に、食物アレルギーを持つお子さんもいるかもしれません。また、大人でも突然アレルギーを発症することがありますので、アレルギーの基礎知識を持っておくことはとても大切なことです。

そこで今回は、アレルギー専門医である「ひばりがおかこどもとアレルギーのクリニック」の平林靖高院長と小児アレルギーエデュケーターの資格を持つアレルギー科師長の若林由花さんにお話を伺ってきました。

アレルギーのない子を育てている編集部スタッフと、アレルギーのある長男の小学校入学を控えているhitotemaライターの野田真実さん(アレルギーフリー食研究家)が一緒に勉強してきた内容をレポートします。

【hitotema編集部注】取材は2020年2月ですが、2021年3月に平林先生に内容を再確認していただきました。

スポンサーリンク

アレルギーの知識は、社会常識のひとつ

アレルギーがあるから〇〇は食べられない。
〇〇ちゃんはアレルギーがあるから給食の牛乳を飲んでない。

そんな話をときどき耳にしますよね。アレルギーは、場合によっては命にかかわることもある疾患。最低限のアレルギー知識は、いまや社会常識であると言えるでしょう。

平林靖高院長

――アレルギーに関する知識は、以前に比べると普及している気はするのですが……?

平林院長
「アレルギーと好き嫌いを混同している、重篤なアレルギー症状があることを知らない、アレルギーの回避は完全除去しかないと思っている、など、知識の程度は人によってさまざまですね」

――祖父母がアレルギーを好き嫌い扱いするという話を聞く一方で、友達の事情を自然に受け入れる子どもの姿に驚くこともあります。

平林院長
「子どもが大人の間違いを指摘することもありますね。そういう意味で、園や学校の先生の存在は、とても大切です。また、『アレルギー疾患対策基本法』という啓蒙活動を支援できる法律ができたので、より広く周知する活動もできるようになっています」

スポンサーリンク

アレルギーのあるお友達との付き合い方

(画像出典)PIXTA

では、実際にアレルギーのあるお子さんと接する際、またはアレルギーの有無がわからない場合、どう配慮すればいいのでしょうか。

平林院長
「悪気のないおやつのやりとりでアレルギー症状が出れば、お互いつらい思いをします。アレルギーの有無を伝え合う、親同士のコミュニケーションがまず大切ですね」

――いまはアレルゲンの完全除去ではなく『どれくらい食べられるか試しながら治す』のが主流だそうで、それはいいことだと思いますが、『ちょっとなら大丈夫!』といった言い方をされると正直困ってしまいます。

平林院長
「そうですよね。何がOKで何がNGかを子どもがうまく説明できない場合は、『なにかあったら困るから今日はやめておくね』でいいと思います。親同士のコミュニケーションで具体的に細かく情報共有できるのがベストですが、関係性にもよりますし、すべて完璧に応えようとしなくてもいいんですよ」

アレルギーのあるお子さんの保護者の方の思いについては、野田さんの記事でも紹介していますので、併せて読んでみてください。

関連記事

愛知県でアレルギーフリー食研究家として活動している野田真実です。この度連載をさせていただくことになり、自己紹介を兼ねて私が日々制作している「アレルギーフリーレシピ」をなぜ作るようになったのか、また現在アレルギーっ子を育てているママ目線でア[…]

アレルギーっ子の生活、こんなことに気を付けています!#アレルギーフリー生活
スポンサーリンク

誰もがアレルギーを発症する可能性がある

7大アレルゲンは、 卵・乳・小麦・えび・かに・落花生・そば
(画像出典)PIXTA

ここまでは「アレルギーのない人がアレルギーのある人をどう理解するか」という前提でお話してきました。しかし、アレルギーはいつ当事者になるかわからないのです。

――そもそも、アレルギーはなぜ発症するのですか?

平林院長
「アレルギーは免疫が過剰反応してしまうことですが、近年は皮膚からアレルギー物質が入ること、難しい言葉で言うと『経皮感作(けいひかんさ)』で発症する可能性が示唆されています」

――皮膚から……。「おそば屋さんの子はそばアレルギーになりやすい」と聞いたことがありますが、それも関係していますか?

平林院長
「おそば屋さんの子はそば粉が舞っている環境にいますから、あり得ると思います。近年ナッツアレルギーが急増しているのも、ナッツを常備するご家庭が増えたせいではないかと考えられています。大人も含め、いつ誰がアレルギーを発症するかはわからないんです」

――誰しも、他人事ではないということですね。経皮感作は防げないんでしょうか?

平林院長
「皮膚が乾燥していたり荒れていたりするとアレルギー物質が体内に入りやすいです。きちんと保湿して肌を守ることが大切です。乾燥肌の方は、ヘパリン類似物質、ワセリン、尿素系保湿剤、セラミドなどで保湿することも大切ですが、乾燥だけでなく肌が荒れている(炎症を起こしている)ことも多いので、医療機関を受診していただき、適切な治療をしていただくことが大切です」

(画像出典)PIXTA

――赤ちゃんだった息子がカサカサだったのに、第一子で知識もなかったので『こんなもんなのかな』と思ってきちんと保湿しなかったんです。あとで知って、悔やみました。(野田さん)

平林院長
「赤ちゃんはしっとりしているのが普通、くらいに思っておいていいんです。足りない時は補えばいい。保湿剤を使うと自然治癒力がなくなるとか、そういう心配はしなくてもいいんですよ」

若林さん
「赤ちゃんにはせっけんは不要、といった意見もありますが、せっけんで洗ってもいいんです。洗浄剤Aでは荒れて洗浄剤Bは荒れない、なんてこともありますが、必ずしも成分の問題ではなく泡立ち方の違いによる刺激が原因ということもあるんです。丁寧に優しく洗い、保湿してあげることが大事なんです」

アレルギーの典型的な症状とは

もしものアレルギーに備えて知っておくべきは「アレルギーでどんな症状が出るか」です。この知識が不足していると、アレルギー症状だと気づかなかったり、逆にアレルギーではない症状をアレルギーだと勘違いしてしまうこともあります。

主なアレルギー症状は、下記の五分類です。

  • 皮膚の症状:湿疹、発赤(赤み)、かゆみなど
  • 呼吸器の症状:鼻水や咳、鼻や喉の粘膜の腫れやかゆみなど
  • 循環器の症状:貧血、頻脈、低血圧など
  • 消化器の症状:嘔吐、下痢など
  • 神経の症状:ぐったりする、不機嫌になるなど

――貧血症状が実はアレルギーだなんて気づかないままのこともありそうです。

平林院長
「嘔吐や下痢は半日や1日後に起きることもありますし、乳幼児の場合は神経症状が出ても気づかないこともあります。逆に、青魚や里芋、メロンなどで赤みやかゆみや出るのはアレルギーではないことも多く、血液検査や再現性などを総合的に判断しなければ診断はできません」

――貧血や不機嫌がアレルギーである可能性や、赤みやかゆみがアレルギーではない可能性について知っているだけで、その症状が出たときに自己判断で思い込まずに済みますね。

平林院長
「そういうことです。そしてアレルギーを疑ったときは、アレルギー専門医を受診することをおすすめします。アレルギー専門医でなくても勉強されている先生はたくさんいますが、専門医のほうがアレルギー検査の要否やアレルギーかどうかの判断基準について正確・丁寧に説明してくれる確率が高いと思いますよ」

日本アレルギー学会専門医・指導医一覧:
https://www.jsaweb.jp/modules/ninteilist_general/

スポンサーリンク

エピペンはAEDのようなもの

エピペン

重度のアレルギーのある人がアナフィラキシーショック(重篤なアレルギー症状)に備えて持っている「エピペン」(アドレナリン自己注射)、聞いたことがある人も多いと思います。しかし、目の前で実際にアナフィラキシーショックを起こしたとき、正しく対処できるでしょうか?

若林さん
「エピペンは注射ですが、医療資格がなくても打つことができます。AED(自動体外式除細動器)のようなものです」

――でも、実際に打てと渡されてもどうすればいいのか……

平林院長
「YouTubeを見れば、エピペンの打ち方の動画がありますよ」

――YouTube!言われてみればそうですよね。でも知らないと思いつかないと思うので、「いざというときはYouTubeを見ればいい」という知識だけでも有益ですね。

刺す場所は太もも。衣類の上からでもOK。

若林さん
「エピペンは太ももに刺す筋肉注射ですが、針の長さが13mmほどなので、Gパンくらいなら衣服の上からでも大丈夫。厚みがあって布地がうねっているようなカーゴパンツだと、脱がせたほうがいいですね」

小児アレルギー学会の指針で、エピペンを使用する目安が以下のように定められています。

<全身の症状>

  • ぐったりしている
  • 意識がもうろうとしている
  • 尿や便を漏らす
  • 脈を触れにくい、または不規則
  • 唇や爪が青白い

<呼吸器の症状>

  • のどや胸が締め付けられる
  • 声がかすれる
  • 犬が吠えるような咳をする
  • 息がしにくい
  • 持続する強い咳込み
  • ゼーゼーする呼吸

<消化器の症状>

  • 持続する強い(我慢できないおなかの痛み)
  • 繰り返し吐き続ける

引用元:「一般向けエピペンの適応」決定のご連絡日本小児アレルギー学会

若林さん
「目安はありますが、『迷ったら打つ』と覚えておいてください。嘔吐も2~3回続いたら打ってください」

――素人からすると数回の嘔吐より、顔全体がぱんぱんに腫れるとか全身にじんましんが出ているとかのほうが重そうに見える気がするのですが……

若林さん
「それが大丈夫だとは言いませんが、外に出ている症状はいずれ治まっていきます。嘔吐、つまり内臓にじんましんが出ているほうが実は危険なんです」

ペットボトルで練習。 グッと押すと針が飛び出し、薬剤が注射される。

――なるほど、そうなんですね。エピペンを打つとどうなるのでしょう?

若林さん
「1~2分で効果が出て、一時的に症状が治まります。でも、これはアナフィラキシーショックの症状の進行を一時的に抑えているだけなので、持続時間は15~20分しかありません

――そんなに短いんですか⁉

若林さん
「そうなんです。なので、エピペンを打ったあとは必ず救急車を呼んでください。数十分で症状が再発するので、治まったからといってそのままにしたり、自家用車やタクシーで病院へ行ったりするのは絶対にダメなんです」

――ほかに気を付ける点はありますか?

若林さん
「打たれる人が動いてしまうことによる裂傷が多いので、特に子どもの場合はしっかり固定してください。また、子どもの場合は周りの騒ぎでとても不安になっているので、そのこと忘れないでいてあげてほしいですね。打った後のエピペンは、救急隊員に渡してください」

いろいろ食べることがいちばんの食育

いろいろ食べることがいちばんの食育
(画像出典)PIXTA

――今日は本当にありがとうございました。アレルギーのある人と付き合うという面でも、いつか当事者になった場合の心構えとしても、とても勉強になりました。

平林院長
「アレルギーの知識がもっと広がって、アレルギーのある人もない人も安心して暮らせる、子育てできる環境を作っていきたいですね。鶏卵やピーナッツなどの強力なアレルゲンも、乳児期から食べはじめることで、アレルギーの発症を低下させるという研究結果が出ています。小さいうちからいろんな食材を食べてみること、それがいちばんの食育であり、有効なアレルギー予防ですよ」

【参考データ】

  • 乳児期からピーナッツ蛋白を摂取していた児の方が、摂取していなかった児に比べ、5歳の時点でのピーナッツアレルギーの発症率が有意に低かった。(英国の研究結果『LEAP study』)
  • 生後4,5ヶ月の時点でアトピー性皮膚炎と診断された乳児において、生後6ヶ月から加熱全卵粉末を摂取した群と除去を継続した群とを比較した結果、1歳の時点での鶏卵アレルギーの発症率は、加熱全卵粉末を摂取していた群の方が有意に低かった。(日本の研究結果『PETIT study』)

※有意に…統計学的に偶然や誤差とは考えられないということ

こちらもぜひお読みください

入園・入学を控えたこの季節。食物アレルギーのお子さんを持つ保護者の方々は、門出を喜ぶ気持ちと同じくらい新しい環境への不安も感じていらっしゃることでしょう。 目の届かない場所で何かあったら?園や学校とはどう付き合っていけばいい?自己判[…]

アレルギー専門医に聞く!食物アレルギー児の保護者が知っておきたい最新常識2020

ひばりがおかこどもとアレルギーのクリニック

住所:愛知県名古屋市瑞穂区弥富町紅葉園6番1
電話番号:052-837-0303
休診日: 木曜午後、日曜、祝日、土曜午後
公式サイト: https://hibarigaoka-kids-allergy-clinic.jp/

【hitotema編集部注】
当記事は広告記事ではありません。
平林院長に取材をお願いしたところ、ご快諾いただきお話していただきました。

関連記事

>hitotema

hitotema

贅沢・丁寧は、難しい。でも、節約・時短ばかりじゃつまらない。日々の生活を彩る、嬉しい情報を届けます。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。
Cookieなどの設定や使用の詳細については詳細をよくお読みいただき、これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになりますので、ご了承願います。

同意する